[O-TK-06-4] 精神疾患合併者に対する身体的リハビリテーションの効果(第2報)
~精神疾患別でFIMの改善に違いがあるか?~
Keywords:精神疾患, 機能的自立度評価法, 実施期間
【はじめに,目的】
厚生労働省は我が国の認知症患者数を2012年時点で462万人,2025年には700万人を超えると推計している。また,医療計画に盛り込むべき疾病として精神疾患が追加され認知症を含む精神疾患に対しての支援が重点的に取り組まれている。身体的な疾病に対してのリハビリテーション(以下,身体リハ)を提供される患者も何らかの精神疾患を合併している場合があり,その数は今後も増加すると予測される。我々は前年の日本理学療法学術大会で精神疾患の有無で機能的自立度評価法(以下,FIM)の改善や実施期間に違いがあるかについて調査し報告した。今回は精神疾患別にFIMの改善や実施期間について検討をしたので報告する。
【方法】
平成22年6月~27年9月の期間に当院にて精神疾患を合併し身体リハを行った121名を対象とした。方法は身体疾患名,精神疾患名,年齢,性別,実施期間,転帰先を調査。転帰先は自宅群と非自宅群に分類した。FIMにて身体リハ開始時と終了時に評価を実施。総得点を運動項目,認知項目に分けそれぞれ終了時から開始時の点数を差し引いた点を利得点(以下,FIM利得点)として算出した。身体疾患名を元に脳血管疾患群,廃用症候群,運動器疾患群,呼吸器疾患群に分類。また精神疾患名を元に気分障害(うつ病,双極性障害等),統合失調症,認知症,その他に再分類した。各群内での開始,終了時のFIM得点はWilcoxonの符号付順位和検定を実施。群間の年齢,実施期間,FIM利得点はKruskal-Wallis検定を実施,多重比較としてScheffe法を実施した。5%未満の危険率を有意とした。
【結果】
男性51名,女性70名,年齢70.3歳±20.1であった。身体疾患の内訳としては,脳血管疾患群が14名,廃用症候群76名,運動器疾患群29名,呼吸器疾患群2名。精神疾患の内訳は気分障害25名,統合失調症22名,認知症64名,その他10名であった。転帰先は自宅群が37名,非自宅群が84名であった。各群内の検定では脳血管疾患群を除いた群で終了時の運動項目および総得点が有意に高い結果であった。(p<0.01)精神疾患群において年齢は認知症が有意に高く,(p<0.01)また,FIM利得点は運動項目,総得点ともに認知症が有意に低い結果であった。(p<0.05)認知項目については群内,群間とも有意差はみられず,実施期間についても有意差はみられなかった。
【結論】
精神疾患群すべてにおいて開始時に比べ終了時の運動項目と総得点が高い結果であった。前回の報告と同様に精神疾患を合併していてもADLに改善が得られることが示唆された。一方,身体疾患別では脳血管疾患群で有意な改善が得られなかった。精神疾患別の利得点は認知症が有意に低い結果であり,脳血管疾患群ではすべて認知症を合併していることが一つの要因と推察された。認知症を合併している患者においては介入方法を検討する必要性が示された。今後は,更にデータを蓄積し詳細な検討が必要と考える。
厚生労働省は我が国の認知症患者数を2012年時点で462万人,2025年には700万人を超えると推計している。また,医療計画に盛り込むべき疾病として精神疾患が追加され認知症を含む精神疾患に対しての支援が重点的に取り組まれている。身体的な疾病に対してのリハビリテーション(以下,身体リハ)を提供される患者も何らかの精神疾患を合併している場合があり,その数は今後も増加すると予測される。我々は前年の日本理学療法学術大会で精神疾患の有無で機能的自立度評価法(以下,FIM)の改善や実施期間に違いがあるかについて調査し報告した。今回は精神疾患別にFIMの改善や実施期間について検討をしたので報告する。
【方法】
平成22年6月~27年9月の期間に当院にて精神疾患を合併し身体リハを行った121名を対象とした。方法は身体疾患名,精神疾患名,年齢,性別,実施期間,転帰先を調査。転帰先は自宅群と非自宅群に分類した。FIMにて身体リハ開始時と終了時に評価を実施。総得点を運動項目,認知項目に分けそれぞれ終了時から開始時の点数を差し引いた点を利得点(以下,FIM利得点)として算出した。身体疾患名を元に脳血管疾患群,廃用症候群,運動器疾患群,呼吸器疾患群に分類。また精神疾患名を元に気分障害(うつ病,双極性障害等),統合失調症,認知症,その他に再分類した。各群内での開始,終了時のFIM得点はWilcoxonの符号付順位和検定を実施。群間の年齢,実施期間,FIM利得点はKruskal-Wallis検定を実施,多重比較としてScheffe法を実施した。5%未満の危険率を有意とした。
【結果】
男性51名,女性70名,年齢70.3歳±20.1であった。身体疾患の内訳としては,脳血管疾患群が14名,廃用症候群76名,運動器疾患群29名,呼吸器疾患群2名。精神疾患の内訳は気分障害25名,統合失調症22名,認知症64名,その他10名であった。転帰先は自宅群が37名,非自宅群が84名であった。各群内の検定では脳血管疾患群を除いた群で終了時の運動項目および総得点が有意に高い結果であった。(p<0.01)精神疾患群において年齢は認知症が有意に高く,(p<0.01)また,FIM利得点は運動項目,総得点ともに認知症が有意に低い結果であった。(p<0.05)認知項目については群内,群間とも有意差はみられず,実施期間についても有意差はみられなかった。
【結論】
精神疾患群すべてにおいて開始時に比べ終了時の運動項目と総得点が高い結果であった。前回の報告と同様に精神疾患を合併していてもADLに改善が得られることが示唆された。一方,身体疾患別では脳血管疾患群で有意な改善が得られなかった。精神疾患別の利得点は認知症が有意に低い結果であり,脳血管疾患群ではすべて認知症を合併していることが一つの要因と推察された。認知症を合併している患者においては介入方法を検討する必要性が示された。今後は,更にデータを蓄積し詳細な検討が必要と考える。