[O-TK-07-4] 当施設通所リハビリテーション利用者における生活空間との関連要因の検討
―環境因子も含めた検討―
Keywords:通所リハビリ, 生活空間, 重回帰分析
【はじめに,目的】
高齢者が閉じこもりになることなく,活動的な生活を送るためには生活空間の拡大が重要である。生活空間の測定尺度としては,Life-Space Assessment(LSA)が用いられており,これまでに運動機能やIADL等との関連が報告されているが,環境因子も含めた関連要因を調べた報告は少ない。そこで,本研究では,通所リハビリテーション(通所リハ)利用者を対象に生活空間に関連する要因を,環境因子も含めて多角的に検討することを目的とした。
【方法】
対象は当施設通所リハ利用者の要支援者と要介護者とした。対象者数は63名(男性32名,女性31名,平均年齢77.0±9.7歳)であった。介護度の内訳は要支援1が10名,要支援2が21名,要介護1が15名,要介護2が11名,要介護3が4名,要介護4が2名であった。除外基準はTimed Up & Go Test(TUG)の測定ができない者,認知症を有する者とした。評価項目はE-SASよりLSA,転倒恐怖感,連続歩行距離,人とのつながり,また老研式活動能力指標(老研式),膝伸展筋力(アニマ社製μTasF-1使用し体重比を算出),TUGであった。環境因子として家族構成,自動車運転状況も調査した。生活空間に関わる因子の検討として,LSAの合計点を従属変数,それ以外の項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。なお有意水準は5%とした。
【結果】
各評価の平均値はLSAが41.2±11.3点,転倒恐怖感が25.5±6.5点,人とのつながりが12.5±7.5点,老研式が7.6±3.2点(手段的ADL2.5±1.8点,知的ADL3.1±0.9点,社会的ADL2.0±1.4点),膝伸展筋力が40.2±14.1%,TUGが15.4±9.6秒であった。連続歩行距離は10~50m未満が9名,50~100m未満が14名,100~500m未満が21名,500m~1km未満が13名,1km以上が6名,家族構成は「独居」が8名,「夫婦のみ」が25名,「それ以外」が30名であった。自動車運転の有無は「本人が運転」が15名,「家族が運転」が33名,「運転者なし」が15名であった。重回帰分析の結果,LSAを説明する因子は,連続歩行距離と手段的ADLが抽出され,このモデルの自由度調整済み決定係数はR2=0.336(p<0.001)であった。予測式はy=21.932+3.514×連続歩行距離+2.233×手段的ADLとなった。また,標準化偏回帰係数は連続歩行距離がβ=0.366,手段的ADLがβ=0.352であった。
【結論】
通所リハ利用者におけるLSAには,連続歩行距離と手段的ADLが関連していることが示され,生活空間の拡大には外出を想定した長距離歩行や,買い物や食事の準備といった生活場面を想定した介入の必要性が示唆された。一方,人とのつながり,家族構成,運転といった環境因子については関連が認められなかった。本研究は通所リハ利用者のみを対象とした検討であり,通院・通所以外の外出の有無の確認や,他の環境因子を含んだ検討が今後の課題である。
高齢者が閉じこもりになることなく,活動的な生活を送るためには生活空間の拡大が重要である。生活空間の測定尺度としては,Life-Space Assessment(LSA)が用いられており,これまでに運動機能やIADL等との関連が報告されているが,環境因子も含めた関連要因を調べた報告は少ない。そこで,本研究では,通所リハビリテーション(通所リハ)利用者を対象に生活空間に関連する要因を,環境因子も含めて多角的に検討することを目的とした。
【方法】
対象は当施設通所リハ利用者の要支援者と要介護者とした。対象者数は63名(男性32名,女性31名,平均年齢77.0±9.7歳)であった。介護度の内訳は要支援1が10名,要支援2が21名,要介護1が15名,要介護2が11名,要介護3が4名,要介護4が2名であった。除外基準はTimed Up & Go Test(TUG)の測定ができない者,認知症を有する者とした。評価項目はE-SASよりLSA,転倒恐怖感,連続歩行距離,人とのつながり,また老研式活動能力指標(老研式),膝伸展筋力(アニマ社製μTasF-1使用し体重比を算出),TUGであった。環境因子として家族構成,自動車運転状況も調査した。生活空間に関わる因子の検討として,LSAの合計点を従属変数,それ以外の項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。なお有意水準は5%とした。
【結果】
各評価の平均値はLSAが41.2±11.3点,転倒恐怖感が25.5±6.5点,人とのつながりが12.5±7.5点,老研式が7.6±3.2点(手段的ADL2.5±1.8点,知的ADL3.1±0.9点,社会的ADL2.0±1.4点),膝伸展筋力が40.2±14.1%,TUGが15.4±9.6秒であった。連続歩行距離は10~50m未満が9名,50~100m未満が14名,100~500m未満が21名,500m~1km未満が13名,1km以上が6名,家族構成は「独居」が8名,「夫婦のみ」が25名,「それ以外」が30名であった。自動車運転の有無は「本人が運転」が15名,「家族が運転」が33名,「運転者なし」が15名であった。重回帰分析の結果,LSAを説明する因子は,連続歩行距離と手段的ADLが抽出され,このモデルの自由度調整済み決定係数はR2=0.336(p<0.001)であった。予測式はy=21.932+3.514×連続歩行距離+2.233×手段的ADLとなった。また,標準化偏回帰係数は連続歩行距離がβ=0.366,手段的ADLがβ=0.352であった。
【結論】
通所リハ利用者におけるLSAには,連続歩行距離と手段的ADLが関連していることが示され,生活空間の拡大には外出を想定した長距離歩行や,買い物や食事の準備といった生活場面を想定した介入の必要性が示唆された。一方,人とのつながり,家族構成,運転といった環境因子については関連が認められなかった。本研究は通所リハ利用者のみを対象とした検討であり,通院・通所以外の外出の有無の確認や,他の環境因子を含んだ検討が今後の課題である。