第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)07

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:備酒伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)

[O-TK-07-6] 主介護者の認知症理解,被介護者の認知機能と介護負担感の関係

佐藤斎1, 講内源太2, 日高貞明3, 高島恵4 (1.合同会社リハビリコンパス地域リハビリケアセンターこんぱす春日部, 2.医療法人社団愛友会訪問看護ステーションゆーらっぷ, 3.医療法人社団愛友会上尾甦生病院リハビリテーション科, 4.学校法人康学舎上尾中央医療専門学校教育部理学療法学科)

Keywords:介護負担感, 認知症理解, 認知機能

【はじめに,目的】我が国では,認知症高齢者の日常生活自立度II以上の高齢者数は2020年には410万人となり,軽度認知症者は380万人になると推測され,認知症高齢者の介護を行う家族の負担は大きな問題である。先の研究では,主介護者の介護負担感と被介護者の関係性に着目し,介護負担要因を検討した所,認知症高齢者の日常生活自立度が低いと介護負担感が高くなることが示唆された。今回は前回の内容を踏まえ,主介護者の介護負担感と認知症の理解度,被介護者の認知機能に焦点を当て,関係性を調査し,現場に活かすことを目的とした。


【方法】訪問系や通所系サービスを利用している被介護者と主介護者のうち,本研究に同意の得られた68名を対象とした。主介護者には2種類の自記式調査を行った。一つは,介護負担感評価として8項目の質問からなるZarit介護負担尺度短縮版(以下:J-ZBI_8)を用い,総得点(8項目32点満点)および,下位尺度である「介護を必要とする状況に対する否定的な感情」Personal strain(5項目20点満点,以下:PS)と「介護によって社会生活に支障を来している程度」(Role strain3項目12点満点,以下:RS)の2群の値も算出した。もう一つは,認知症の理解度調査として5項目の質問からなる二者択一の独自アンケートを行った。被介護者に対しては,長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を実施した。本研究における主介護者は,コミュニケーションに問題がなく,被介護者と同居している者とした。調査期間は平成27年8月下旬から開始し,1週間放置法を用いた。それぞれの調査値とJ-ZBI_8との関係性を検討した。統計処理はSPSS ver.16.0を使用し,Spearmanの相関係数による各項目の関係性を導いた。統計学的有意水準は5%未満とした。


【結果】アンケート回答は「はい,いいえ」を2値型のダミー変数にした。PSとHDS-Rの間には負の相関を認めた(r=-0.269)。PSと認知症の理解度アンケート「認知症に関する知識をお持ちですか」にも負の相関を認めた(r=-0.253)。


【結論】認知機能低下を有する者を介護することと認知症の知識を持たないことが,PS高値を示すという結果であった。訪問系や通所系サービスを通して認知症高齢者の家族に関わる理学療法士は,心身機能や活動面の評価に加え,認知機能の評価を含めた家族への情報提供が必要である。そして,認知症の理解を深められるよう努めることが介護負担を軽減するに繋がると考えられる。