第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)09

Sat. May 28, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:山田実(筑波大学大学院人間総合科学研究科)

[O-YB-09-4] ひたちなか市における介護予防・日常生活支援総合事業に向けた取り組み

市・通所事業者との連携,通所型/訪問型サービスへの移行に向けて

森井将弘 ((株)日立製作所ひたちなか総合病院)

Keywords:介護予防, 多職種連携, 運動指導

【はじめに,目的】

当院は平成14年より「茨城県指定地域リハステーション」として位置付けられ,地域住民を支援するひたちなか市の中核病院である。その一環として,当院では市の委託事業として社会福祉協議会の運営する通所型予防事業(以下,事業)へ理学療法士(以下,PT)を派遣し,社会福祉士,看護師,介護福祉士と連携し事業に取り組んでいる。同市では平成27年10月より要支援認定者を対象とした通所型/訪問型サービスへ移行することとなっている。今回,事業の効果判定から,通所型/訪問型サービスへの移行に向けた運動プログラムの見直しを行った。

【方法】

平成26年6月から平成27年9月までの事業利用者178名(平均年齢77.0±5.6歳)を対象とした。内訳として男性46名,女性132名,1次予防対象者34名,2次予防対象者109名,要支援1認定者13名,要支援2認定者22名である。内容は週1回,2時間の運動プログラムを3ヶ月間(全12回)実施した。PTの関わりとして,事業開始前に市・通所事業者との協議を通して,運動プログラムの立案を行った。事業開始後は介護福祉士とともに集団での運動指導を行い,各利用者の理学療法評価,必要に応じて個別での運動指導を行った。効果判定として握力,開眼片脚立ち,Timed Up & Go Test(以下,TUG),5m通常歩行,5m最大歩行,椅子柔軟性テストの6項目の体力測定を行い,運動実施前後を比較した。更に今後移行する事業に向けて,要支援認定者への効果を明らかにするために要支援認定者のみを対象に運動実施前後の比較も行った。解析方法は各項目に対して,対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

全対象者では,運動実施前後で開眼片脚立ち,TUG,5m通常歩行,5m最大歩行に有意に向上が認められ(p<0.05),握力,椅子柔軟性テストに有意差は認められなかったが全体的に向上した傾向がみられた。要支援認定者では,5m通常歩行以外の項目に有意な向上は認められなかった。

【結論】

事業の効果判定より,要支援認定者への効果が得られなかった。特に要支援認定者のニーズは転倒予防であり,バランス能力の指標となる開眼片脚立位,TUGの効果が得られなかったことが今後の課題と考えられた。そのためバランス能力向上に特化した集団運動プログラムへの再考案を行った。また要支援認定者は病態や身体機能が多様であり,集団での運動指導を中心とした関わり方では多様性への対応が不十分であったと考えられた。市・通所事業者との協議を行い,集団での運動指導は介護福祉士が関わることとし,PTは個別での運動指導を中心に関わる事で多様性に対応できるよう見直しを行った。更に訪問型サービスを導入することとなっており,生活の場を通した活動・参加への支援も可能となることで,より多様性に対応できると考えられる。今後,要支援対象者への効果を検証し,更なる事業の充実化を図っていきたい。