[P-DM-01-2] 保存療法が適応となるがん患者の身体活動量向上がQOLにおよぼす影響とそれに関連する要因の検討
Keywords:がん, 身体活動量, QOL
【はじめに,目的】
保存療法が適応となるがん患者は,倦怠感などの身体症状や不安・抑うつなどの精神症状が高頻度に認められる。そのような症状によって日常生活動作(以下,ADL)や身体活動量が低下し,廃用症候群の進行に伴い身体・精神症状が増悪するといった悪循環に陥ることがある。我々はこれまでに保存療法目的にて入院中のがん患者に対する低強度運動が身体・精神症状の改善およびQOLの向上に効果をおよぼす可能性を報告した。その効果には,身体活動量の増加が影響していると推測しているが,明らかにできていなかった。そこで今回,保存療法が適応となるがん患者の入院期間中の身体活動量向上がQOLにおよぼす影響および身体活動量向上に関連する要因を検討した。
【方法】
対象は,2012年8月から2015年9月までに放射線化学療法および症状コントロールを目的に当院に入院し,リハビリテーションを実施したがん患者のうち身体活動量の測定が可能であった44例とした(平均年齢66.4±15.1歳,男性20名,女性24名)。リハビリテーションには歩行や階段昇降などの日常生活動作を取り入れ,その際には運動負荷強度が40%以下となるようにカルボーネン法により上限心拍数を算出して実施した。そして,リハビリテーション開始時と退院時に,身体活動量として1日平均歩数(ライフコーダGS,スズケン社製)を測定し,QOL(EORTC QLQ-C30)の変化との関連性を検討した。また,身体活動量に関連する要因として,膝伸展筋力,10m歩行時間,ADLの運動項目(mFIM),痛み(NRS),倦怠感(CFS),不安・抑うつ(HADS)を挙げた。解析としては,介入時から退院時に生じた各評価項目の変化量を算出し,Spearmanの順位相関を用いて各項目間の相関関係を調査した。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
身体活動量の変化量とQOLのそれの間には有意な正の相関が認められた。また,身体活動量の変化量と10m歩行時間のそれとの間には有意な負の相関を認め,膝伸展筋力,ADL,痛み,倦怠感,不安・抑うつの変化量とは相関関係は認められなかった。
【結論】
今回の結果より,がん患者の入院期間中の身体活動量向上はQOLの向上に寄与することが示唆され,さらに身体活動量向上には歩行能力改善が影響していると推察された。また,身体活動量の変化には,下肢筋力の増強や身体・精神症状の改善は関与していなかった。すなわち,薬物療法による身体・精神症状の改善を伴わなくとも,歩行練習を中心とした低強度運動を行い,歩行能力の改善および身体活動量の向上を図ることによってQOLが向上すると推察される。
保存療法が適応となるがん患者は,倦怠感などの身体症状や不安・抑うつなどの精神症状が高頻度に認められる。そのような症状によって日常生活動作(以下,ADL)や身体活動量が低下し,廃用症候群の進行に伴い身体・精神症状が増悪するといった悪循環に陥ることがある。我々はこれまでに保存療法目的にて入院中のがん患者に対する低強度運動が身体・精神症状の改善およびQOLの向上に効果をおよぼす可能性を報告した。その効果には,身体活動量の増加が影響していると推測しているが,明らかにできていなかった。そこで今回,保存療法が適応となるがん患者の入院期間中の身体活動量向上がQOLにおよぼす影響および身体活動量向上に関連する要因を検討した。
【方法】
対象は,2012年8月から2015年9月までに放射線化学療法および症状コントロールを目的に当院に入院し,リハビリテーションを実施したがん患者のうち身体活動量の測定が可能であった44例とした(平均年齢66.4±15.1歳,男性20名,女性24名)。リハビリテーションには歩行や階段昇降などの日常生活動作を取り入れ,その際には運動負荷強度が40%以下となるようにカルボーネン法により上限心拍数を算出して実施した。そして,リハビリテーション開始時と退院時に,身体活動量として1日平均歩数(ライフコーダGS,スズケン社製)を測定し,QOL(EORTC QLQ-C30)の変化との関連性を検討した。また,身体活動量に関連する要因として,膝伸展筋力,10m歩行時間,ADLの運動項目(mFIM),痛み(NRS),倦怠感(CFS),不安・抑うつ(HADS)を挙げた。解析としては,介入時から退院時に生じた各評価項目の変化量を算出し,Spearmanの順位相関を用いて各項目間の相関関係を調査した。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
身体活動量の変化量とQOLのそれの間には有意な正の相関が認められた。また,身体活動量の変化量と10m歩行時間のそれとの間には有意な負の相関を認め,膝伸展筋力,ADL,痛み,倦怠感,不安・抑うつの変化量とは相関関係は認められなかった。
【結論】
今回の結果より,がん患者の入院期間中の身体活動量向上はQOLの向上に寄与することが示唆され,さらに身体活動量向上には歩行能力改善が影響していると推察された。また,身体活動量の変化には,下肢筋力の増強や身体・精神症状の改善は関与していなかった。すなわち,薬物療法による身体・精神症状の改善を伴わなくとも,歩行練習を中心とした低強度運動を行い,歩行能力の改善および身体活動量の向上を図ることによってQOLが向上すると推察される。