第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P02

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-02-3] 膵癌に対する周術期理学療法の介入効果

歩行獲得時期に着目して

島雅晴, 加藤祐司, 伊藤公美子, 吉川正起, 池田聖児, 橋本伸之 (大阪府立成人病センターリハビリテーション科)

Keywords:膵癌, 周術期, 早期離床

【はじめに,目的】

消化器癌においては周術期の理学療法介入により,入院期間短縮や合併症予防効果の報告が散見されるが,膵癌に対する周術期の理学療法介入の報告は少ない。とくに切除可能局所進行膵癌の場合,標準手術に加え,術前放射線化学療法(CRT)と術後化学療法(ケモ)の侵襲が加わるためPerformance Status(PS)が低下しやすい。そこで当院では,入院中のPS低下防止を目的に2014.8月より膵癌手術症例に対し,周術期からの全例介入を始めた。今回,とくに高侵襲治療を要する切除可能局所進行膵癌に対し,理学療法介入が歩行自立可能時期や術後入院期間に影響を与えるか検討したので報告する。

【方法】

術前CRTと術後ケモを行った切除可能局所進行膵癌手術例を対象に,2013.8月~2014.7月の未介入群(36例)と2014.8月~2015.7月の介入群(38例)を比較検討した。患者背景(年齢,性別,BMI,入院中の体重減少率),歩行自立時期(棟内自立と院内自立),術後入院期間,合併症の有無について検討した。さらに術前の栄養状態により術後の歩行自立時期に差があるのかを検討するため,簡易栄養状態評価表を用いて低栄養・低栄養おそれ群と正常群に分けて比較検討した。統計処理はMann-WhitneyのU検定,Fisherの正確検定を用いた。歩行自立の基準は監視なく歩行可能な時期とした。介入内容は,術前は評価,深呼吸,排痰練習を行い,術後はクリニカルパスに準じて,術後3~4日目から介入を開始し,病棟で初回歩行を行う。その後はドレーンや点滴の数の減少に応じて練習内容や場所を変化させながら歩行練習やエルゴメーターなどを中心に運動能力,持久力向上目的に退院まで実施した。

【結果】

未介入群と介入群では,歩行自立時期は,院内自立時期で介入群のほうが有意に短かったが,棟内歩行自立時期には有意差を認めなかった。患者背景,術後入院期間,合併症発症率は有意差を認めなかった。栄養状態での差は,介入群の方が低栄養・低栄養おそれ群と正常群の両群ともに院内歩行自立時期が有意に短かった。

【結論】

高侵襲な進行膵癌に対する周術期理学療法の介入により,術前の栄養状態に関わらず院内歩行自立までの期間の短縮が可能であった。早期から離床することは深部静脈血栓症などの合併症を予防しPSを維持・向上するために重要であると示唆された。しかし,術直後の体力低下した状態にケモが実施されるため,院内歩行自立したあとでも吐き気や倦怠感などの副作用により,臥床が長くなることもあり,回復に時間を要したことが入院期間の短縮に繋がらなかったことが考えられた。今後は,術前CRT開始時から手術に向けての体力向上目的の介入や,術後ケモの副作用に応じた運動負荷を考慮した理学療法介入を検討していくことが課題である。