[P-DM-02-4] 同種造血幹細胞移植前後の性差による身体機能・筋肉量変化の違い
Keywords:造血幹細胞移植, 運動療法, 性差
【はじめに,目的】
同種造血幹細胞移植(移植)患者は,移植前処置による嘔気・嘔吐や感染症,移植片対宿主病(GVHD)などにより移植後,身体機能・筋肉量は低下する。移植前後の身体機能変化に関する報告は散見されるが,性差による変化の違いについての報告はほとんどない。今回,移植患者の性差による身体機能・筋肉量変化の違いについて検討した。
【方法】
対象は,平成22年2月から平成27年5月までに当院血液内科で初回移植を受け,移植前後に理学療法評価が行えた患者62例(男性39例,女性23例)である。
運動療法は,移植約2週間前から開始し,1回20-40分,週5-6日,ストレッチ,筋力トレーニング,歩行練習などを行った。身体機能評価は,6分間歩行距離(6MD)と握力を,筋肉量は,生体電気インピーダンス体組成測定機器Physion MDを用いて測定した。臨床的パラメータとして,アルブミン(Alb),総蛋白(TP),ヘモグロビン(Hb),ステロイド投与量を用いた。評価時期は,移植約2週間前と退院時とした。統計解析として,性差による身体機能・筋肉量・臨床パラメータ変化は対応のある二元配置分散分析を用い,有意水準5%未満として検定した。
【結果】
患者背景は,男性/女性の順に,年齢中央値:54/54歳,疾患名は成人T細胞性白血病:15/11例,急性骨髄性白血病:10/8例,骨髄異形成症候群:8/1例,急性リンパ性白血病:5/2例,その他:2/1例,移植前処置強度は,骨髄破壊的前処置:23/14例,骨髄非破壊的前処置:16/9例であった。入院期間中の平均ステロイド投与量は,男性:17.3mg/kg,女性:13.6mg/kgであった。Grade 3以上の重度GVHDは,5/1例,移植日から退院時評価までの平均日数は63.3/60.5日,運動療法実施率は85.2/86.6%であった。身体機能変化は,移植前/移植後の順に,男性は握力:32.9/28.6kg(p<0.001,-12.2%),6MD:474.4/449.5m(p=0.002,-4.6%),筋肉量:24.9/22.1kg(p<0.001,-10.8%),女性は,握力:20.3/18.1kg(p<0.001,-9.5%),6MD:456.9/431.5m(p=0.002,-5.5%),筋肉量:18.0/16.8kg(p=0.005,-6.1%)であり,男女ともに移植後有意に低下した。臨床的パラメータは,男女ともAlb(p<0.001),TP(p<0.001)は移植後有意に低下したが,Hbは有意差を認めなかった。握力(p=0.042),筋肉量(p=0.045),Alb(p=0.021)において有意な交互作用を認め,男性が女性より有意に低下した。
【結論】
森下らは,移植6週後,移植前と比べ男女ともに身体機能・QOLは低下を認めたが,性差による変化の違いはなかったと報告した。本研究では,男女ともに退院時,身体機能・筋肉量は有意に低下し,男性の握力・筋肉量・Alb変化は女性と比べて有意に低下した。移植患者において,筋の変化(筋力・筋肉量)は,男性が女性より低下する可能性が示唆され,特に男性においては,筋力トレーニングに重点をおいたアプローチが必要であると考えられた。
同種造血幹細胞移植(移植)患者は,移植前処置による嘔気・嘔吐や感染症,移植片対宿主病(GVHD)などにより移植後,身体機能・筋肉量は低下する。移植前後の身体機能変化に関する報告は散見されるが,性差による変化の違いについての報告はほとんどない。今回,移植患者の性差による身体機能・筋肉量変化の違いについて検討した。
【方法】
対象は,平成22年2月から平成27年5月までに当院血液内科で初回移植を受け,移植前後に理学療法評価が行えた患者62例(男性39例,女性23例)である。
運動療法は,移植約2週間前から開始し,1回20-40分,週5-6日,ストレッチ,筋力トレーニング,歩行練習などを行った。身体機能評価は,6分間歩行距離(6MD)と握力を,筋肉量は,生体電気インピーダンス体組成測定機器Physion MDを用いて測定した。臨床的パラメータとして,アルブミン(Alb),総蛋白(TP),ヘモグロビン(Hb),ステロイド投与量を用いた。評価時期は,移植約2週間前と退院時とした。統計解析として,性差による身体機能・筋肉量・臨床パラメータ変化は対応のある二元配置分散分析を用い,有意水準5%未満として検定した。
【結果】
患者背景は,男性/女性の順に,年齢中央値:54/54歳,疾患名は成人T細胞性白血病:15/11例,急性骨髄性白血病:10/8例,骨髄異形成症候群:8/1例,急性リンパ性白血病:5/2例,その他:2/1例,移植前処置強度は,骨髄破壊的前処置:23/14例,骨髄非破壊的前処置:16/9例であった。入院期間中の平均ステロイド投与量は,男性:17.3mg/kg,女性:13.6mg/kgであった。Grade 3以上の重度GVHDは,5/1例,移植日から退院時評価までの平均日数は63.3/60.5日,運動療法実施率は85.2/86.6%であった。身体機能変化は,移植前/移植後の順に,男性は握力:32.9/28.6kg(p<0.001,-12.2%),6MD:474.4/449.5m(p=0.002,-4.6%),筋肉量:24.9/22.1kg(p<0.001,-10.8%),女性は,握力:20.3/18.1kg(p<0.001,-9.5%),6MD:456.9/431.5m(p=0.002,-5.5%),筋肉量:18.0/16.8kg(p=0.005,-6.1%)であり,男女ともに移植後有意に低下した。臨床的パラメータは,男女ともAlb(p<0.001),TP(p<0.001)は移植後有意に低下したが,Hbは有意差を認めなかった。握力(p=0.042),筋肉量(p=0.045),Alb(p=0.021)において有意な交互作用を認め,男性が女性より有意に低下した。
【結論】
森下らは,移植6週後,移植前と比べ男女ともに身体機能・QOLは低下を認めたが,性差による変化の違いはなかったと報告した。本研究では,男女ともに退院時,身体機能・筋肉量は有意に低下し,男性の握力・筋肉量・Alb変化は女性と比べて有意に低下した。移植患者において,筋の変化(筋力・筋肉量)は,男性が女性より低下する可能性が示唆され,特に男性においては,筋力トレーニングに重点をおいたアプローチが必要であると考えられた。