第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P02

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-02-4] 同種造血幹細胞移植前後の性差による身体機能・筋肉量変化の違い

武清孝弘1, 宇都宮與2, 村山芳博1, 永山真希子1, 茶園昂子1, 園田拓史1, 高塚祥芝2, 竹内昇吾2, 徳永雅仁2, 窪田歩2, 中野伸亮2, 奈良聡一郎3, 吉田一成3, 三石敬之3, 堂園浩一朗3 (1.公益財団法人慈愛会今村病院分院リハビリテーションセンター, 2.公益財団法人慈愛会今村病院分院血液内科, 3.公益財団法人慈愛会今村病院分院リハビリテーション科)

Keywords:造血幹細胞移植, 運動療法, 性差

【はじめに,目的】

同種造血幹細胞移植(移植)患者は,移植前処置による嘔気・嘔吐や感染症,移植片対宿主病(GVHD)などにより移植後,身体機能・筋肉量は低下する。移植前後の身体機能変化に関する報告は散見されるが,性差による変化の違いについての報告はほとんどない。今回,移植患者の性差による身体機能・筋肉量変化の違いについて検討した。

【方法】

対象は,平成22年2月から平成27年5月までに当院血液内科で初回移植を受け,移植前後に理学療法評価が行えた患者62例(男性39例,女性23例)である。

運動療法は,移植約2週間前から開始し,1回20-40分,週5-6日,ストレッチ,筋力トレーニング,歩行練習などを行った。身体機能評価は,6分間歩行距離(6MD)と握力を,筋肉量は,生体電気インピーダンス体組成測定機器Physion MDを用いて測定した。臨床的パラメータとして,アルブミン(Alb),総蛋白(TP),ヘモグロビン(Hb),ステロイド投与量を用いた。評価時期は,移植約2週間前と退院時とした。統計解析として,性差による身体機能・筋肉量・臨床パラメータ変化は対応のある二元配置分散分析を用い,有意水準5%未満として検定した。

【結果】

患者背景は,男性/女性の順に,年齢中央値:54/54歳,疾患名は成人T細胞性白血病:15/11例,急性骨髄性白血病:10/8例,骨髄異形成症候群:8/1例,急性リンパ性白血病:5/2例,その他:2/1例,移植前処置強度は,骨髄破壊的前処置:23/14例,骨髄非破壊的前処置:16/9例であった。入院期間中の平均ステロイド投与量は,男性:17.3mg/kg,女性:13.6mg/kgであった。Grade 3以上の重度GVHDは,5/1例,移植日から退院時評価までの平均日数は63.3/60.5日,運動療法実施率は85.2/86.6%であった。身体機能変化は,移植前/移植後の順に,男性は握力:32.9/28.6kg(p<0.001,-12.2%),6MD:474.4/449.5m(p=0.002,-4.6%),筋肉量:24.9/22.1kg(p<0.001,-10.8%),女性は,握力:20.3/18.1kg(p<0.001,-9.5%),6MD:456.9/431.5m(p=0.002,-5.5%),筋肉量:18.0/16.8kg(p=0.005,-6.1%)であり,男女ともに移植後有意に低下した。臨床的パラメータは,男女ともAlb(p<0.001),TP(p<0.001)は移植後有意に低下したが,Hbは有意差を認めなかった。握力(p=0.042),筋肉量(p=0.045),Alb(p=0.021)において有意な交互作用を認め,男性が女性より有意に低下した。

【結論】

森下らは,移植6週後,移植前と比べ男女ともに身体機能・QOLは低下を認めたが,性差による変化の違いはなかったと報告した。本研究では,男女ともに退院時,身体機能・筋肉量は有意に低下し,男性の握力・筋肉量・Alb変化は女性と比べて有意に低下した。移植患者において,筋の変化(筋力・筋肉量)は,男性が女性より低下する可能性が示唆され,特に男性においては,筋力トレーニングに重点をおいたアプローチが必要であると考えられた。