第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P03

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-03-2] 糖尿病サポートチーム活動,有効性と今後の課題

糖尿病療養指導における,理学療法士の役割

伊藤隆弘, 山田礼子, 千葉ゆか, 三浦礼子, 戸田いく子, 加納伸介 (登米市立登米市民病院)

Keywords:糖尿病, チームアプローチ, サポート体制

【はじめに,目的】

糖尿病療養指導において,評価・治療は専門性を増してきており,各職種が専門性を生かしつつ密接な連携を保つチームアプローチが必要となっている。A病院では平成24年度より多職種による糖尿病サポートチーム活動を開始,平成27年度にはチーム内に日本糖尿病療養指導士6名,糖尿病認定看護師1名となったが,常勤の糖尿病専門医は不在である。その中で今回,2型糖尿病(ペットボトル症候群)・緩徐進行型1型糖尿病疑いにより16日間の教育入院となったA氏にチームアプローチを行い,その有効性と今後の課題について検討したので報告する。

【方法】

30代男性,身長172.4cm,体重119.3kg,BMI 40.1,仕事は軽作業。口渇・多飲を認め近医受診,A病院紹介入院。入院時,随時血糖値350mg/dl,HbA1c15.2%。主治医より病状と治療方針の説明後,糖尿病認定看護師より全般的な療養指導と心理的ケアを中心とした面談を実施。管理栄養士より,A氏・家族に栄養指導を実施。薬剤師より,インスリン・内服薬について説明。病棟看護師より,インスリン自己注射・自己血糖測定(以下SMBG,mg/dl)技術を指導。理学療法士より,運動療法とともに,入院前生活を考慮した自主練習指導を実施。運動療法実施に際して,実施内容を他職種に伝達,運動後にSMBGを行い低血糖の予防と運動効果の自己認識を促した。情報共有方法は,カルテ・口頭での伝達とともに,必要時チームカンファレンスを実施。

【結果】

入院15日目,SMBGは100~152。入院期間中,食事・運動・薬物各療法について一定の理解がなされ,自主的に食事を撮影する,散歩をする等,療養意欲の向上が認められた。退院97日後,SMBGは90~120,随時血糖値125mg/dl・HbA1c6.0%,体重123kg。食事・運動・薬物各療法のコンプライアンスは低下したが自己認識しており,飲料は無糖の物を選択,仕事は立ち仕事を率先して行っている等,ある程度の療養意欲は認められた。

【結論】

チーム活動前に比べ,各職種が担当する療養指導内容の相互理解が深まり,療養指導項目が細分化されるとともに補完が図られた。また,カルテ・口頭での伝達,チームカンファレンスによる情報共有により,治療・療養指導方針の統一が図られ,的確な療養指導が可能となった。入院時は経過に伴い血糖値は低下,運動療法効果も認識し,また退院後の各値も良好であり,一定の治療・療養指導は図られたと考えられる。しかし,入院時に比しコンプライアンスは低下,体重も増加しており,自己認識・療養意欲は確認されたが,退院後の実情に合わせた療養指導が必要と考えられた。A病院は常勤の糖尿病専門医が不在であり,退院後の療養指導体制も確立されておらず,環境変化に合わせた十分な療養指導は行えていない。今回のチームアプローチの効果を基に,今後は各職種の役割と連携を確立するとともに,外来受診等に合わせた継続的な療養指導体制の構築が必要と考える。