第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P03

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-DM-03-5] アクティブガイド2013の身体活動シェーマによる分類は身体能力に影響を及ぼすか

―健常者と糖尿病患者を対象とした検討―

鈴木康裕1,2,3, 加藤秀典1,2, 久保匡史1,2, 松原真由1, 石川公久1,2, 羽田康司1,2,4 (1.筑波大学附属病院リハビリテーション部, 2.つくば糖尿病予防研究会, 3.筑波大学大学院人間総合科学研究科, 4.筑波大学医学医療系)

Keywords:身体活動量, 筋力, バランス能力

【はじめに,目的】

運動や日常生活活動等の身体活動量は食事や睡眠,休養,喫煙等と並んで健康への影響が大きいことが知られている。しかし,身体活動量と身体能力との関連性については見解が統一されていない。これは対象の属性が原因と考えられ,実態把握には多様な対象への定量的な調査が必要となる。そこで今回,予防的観点からADLと歩行の自立している健常者および糖尿病患者を対象とし,アクティブガイド2013による身体活動量シェーマを用いた分類を行い身体能力の比較を行うことにした。

【方法】

対象である健常者および糖尿病患者を,それぞれを非活動群と活動群に分類した。厚生労働省により策定された「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)で示されているシェーマに基づき対象への聴取を行い,A:毎日60分以上の活動もしくは歩行を行っていること,B:1回30分以上の運動を2回/週以上・1年以上継続していること,これらAとBを満たす場合を活動群とし,それ以外を非活動群として定義した。身体能力の評価は,体組成(骨格筋指数),バランス能力(重心動揺検査),下肢筋力(膝伸展筋力および膝伸展筋持久力),上肢筋力(握力)について行われた。統計解析は,非活動群と活動群の比較をχ2検定およびMann-WhitneyのU検定を用いて行った。統計ソフトはSPSS(IBM社製ver.21)を用い,全ての統計学的有意水準は5%未満とし,5%以上~10%未満を傾向ありと定義した。

【結果】

対象は,健常者91名(男性26名),糖尿病患者85名(男性44名,HbA1c 9.8±2.1%)であった。健常者は,非活動群39名(男性12名,63.7±9.2歳)と活動群52名(男性14名,62.7±14.5歳)に分類された。糖尿病患者は,非活動群57名(男性29名,60.6±7.2歳)と活動群28名(男性15名,61.4±10.8歳)に分類された。両群の比較(非活動群vs活動群)において,健常者では一切の差は生じておらず,糖尿病患者ではBMI(27.9±6.4 vs 24.5±3.9:p<0.05),罹患歴(11.0±8.2 vs 16.5±13.1:p<0.1),骨格筋指数(7.50±1.17 vs 6.99±0.89:p<0.1)で差が生じていた。

【結論】

本研究の結果から,歩行および日常生活動作の自立している健常者および糖尿病患者は,骨格筋量・筋力・バランス能力に身体活動量が影響を及ぼさないことが示唆された。このように一定以上の体力を有する対象であれば身体活動量は身体能力への影響が少ない可能性がある。またこれら対象のサルコペニアやロコモティブシンドロームの予防のために,骨格筋量・筋力・バランス能力を向上させるには,概念的に身体活動量を単に追求するだけでは効果が少ない可能性があり,身体活動を推奨するだけでなくレジスタンストレーニングにも着目する必要があると思われる。