第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本糖尿病理学療法学会 一般演題ポスター
糖尿P04

2016年5月28日(土) 11:40 〜 12:40 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-DM-04-2] 血液透析患者の栄養指標と行動変容からみた運動プログラムの提案

柿原稔永1, 片岡弘明2, 南田義孝1, 大林弘明3 (1.医療法人財団博仁会キナシ大林病院リハビリテーションセンター, 2.KKR高松病院リハビリテーションセンター, 3.医療法人財団博仁会キナシ大林病院透析センター)

キーワード:血液透析, 栄養状態, 運動プログラム

【はじめに】

一般的に理学療法を展開する際には,患者の栄養状態を評価し身体機能の改善を図ることが重要となる。特に血液透析患者(HD患者)は,透析液中への栄養素の喪失や食事制限により,栄養不良のリスクが高いことが知られており,運動負荷の決定にも栄養状態の評価が推奨されている。さらに通院を余儀なくされるHD患者では,歩行が自立していても移動動作に困難を感じている者が多い。そのため適切な理学療法を提供する際には,栄養状態の評価と移動動作の自覚的困難感,現状の運動状況を評価することが重要であると考えるが,これらの指標をもとにした運動処方例は報告されていない。そこで本研究では,栄養状態と自覚的困難感の関係性を明らかにし,HD患者の運動実施状況から理学療法に必要なプログラムについて検討することを目的とした。


【方法】

対象は当院外来HD患者31名(男性18名,女性13名)で,年齢68±6.6歳,HD期間203.1±144.1ヶ月,身長158.2±8.6cm,体重51±9.1kg,BMI20.3±2.6kg/m2であった。栄養指標には総合的栄養評価Controling Nutritional Status法(CONUT法),およびGeriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用い,移動動作の自覚的困難感の評価にはHD患者移動動作表のスコアを使用した。測定日はHD実施日とし,生化学データは過去1ヶ月間の平均値を算出した。さらに問診にて運動の行動変容ステージを聴取し,具体的な運動の実施状況についても調査した。統計学的解析は,HD患者移動動作スコアと栄養指標との関係についてPearsonの相関係数を用いた。データ解析には,JMP 12.0.1を使用し有意水準は5%とした。


【結果】

HD患者移動動作スコアと栄養指標では,CONUT法(r=-0.255,p=0.167),GNRI(r=0.158,p=0.397)ともに有意な関連は認められなかった。またCONUT法の結果から23名が軽度栄養不良,6名が中等度栄養不良であった。行動変容ステージでは,無関心期(3名),関心期(5名),準備期(8名),実行期(0名),維持期(15名)で,運動内容に関しては維持期にて13名が歩行運動,ラジオ体操1名,立ち仕事1名であった。




【結論】

本研究から,HD患者の移動動作自覚的困難感と栄養状態は関連していなかった。しかしCONUT法の評価では29名の患者で軽度以上の栄養不良状態であった。つまりHD患者では極めて高い割合で栄養不良を合併するが,それが直接的に移動動作に反映しないことが示唆された。先行研究では,HD患者移動動作表は運動機能と高い相関があり,さらに膝伸展筋力とHD患者移動動作には正相関があると報告されていることから,HD患者に対する理学療法評価では栄養状態に着目するだけでなく,筋力評価も標準化する必要性が示唆された。そして行動変容ステージで聴取した運動内容から,有酸素運動を多くの患者が実施していたため,運動指導時には移動動作と関連している筋力の維持・改善を目的としたレジスタンス運動の重要性も加えて指導する必要があると考えられた。