[P-DM-05-1] NASH合併糖尿病患者のリハビリテーション
低負荷有酸素運動の有効性
Keywords:低負荷有酸素運動, 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH), 糖尿病
【はじめに,目的】
本邦では,糖尿病(以下DM)患者が増加傾向である。DM患者には,脂肪肝を合併し,進展するとアルコール摂取量が少ないにも関わらず,肝炎を発症することがある。これを非アルコール性脂肪性肝炎(以下NASH)といい,DM患者の約50%が合併するとの報告もある。NASHは,肝細胞の線維化が進み,肝血流量の低下,終末期では肝硬変,肝がんを発症する。肝炎治療は伝統的に,運動は肝血流量の減少を来すため禁忌とし,絶食,安静臥床とすることが多い。DM治療として,NASH合併DM患者へ運動療法を行う際に,この相反する疾患を考慮し,運動を行う必要がある。しかし,NASH診療ガイドラインでも運動療法についての明確な指示されておらず,NASH合併DM症例の報告も散見されない。今回,DM治療としての低負荷有酸素運動が,NASH合併のDM患者に対してもインスリン抵抗性および血糖コントロールを改善させるのかを検討した。
【方法】
対象:当院糖尿病センターより運動処方されたDM患者で,確定診断されたNASH患者2名およびNASH疑い患者2名の合計4名。
血液・生化学検査値:HbA1c(NGSP値):9.3±1.0%,AST:44.8±12.2U/L,ALT:78.0±18.8U/L,AST/ALT比:1.8±0.2,血小板:24.5±4.8×104μL。
体組成:BMI:32.6±1.8kg/m2,内臓脂肪面積:121.0±18.3cm2,骨格筋率:31.8±2.7%。
方法:DM治療ガイドラインに沿って有酸素運動を実施。有酸素運動は自転車エルゴメーターを使用。設定は肝機能悪化を考慮して低負荷量の50W,ペダル回転数50~60rpm,時間20分間として設定。介入期間は3か月間,介入期間前後でのインスリン抵抗性および血糖コントロールを比較した。評価項目は,体組成(BMI,内臓脂肪面積,骨格筋率),HbA1c(NGSP値),肝機能値(AST,ALT,ALT/AST比)とした。体組成は体組成計InBodyS10Ⓡ(インボディ・ジャパン社製)で測定。測定肢位は背臥位とした。
また,NASHでないDM患者に対する有酸素運動と本調査との比較を行い,NASH合併DM患者に対する低負荷有酸素運動の効果を比較した。
【結果】
全症例で理学療法介入による有害事象は認めず,中断者も認めなかった。血液・生化学検査値はALT/AST比:1.3±0.3,HbA1c:6.2±0.6%へ改善。体組成はBMI:30.4±1.9kg/m2,内臓脂肪面積:108.8±15.7cm2,骨格筋率:33.3±2.2%へ改善。介入期間前後で,肝機能悪化は認めなかった。NASHでないDM患者への有酸素運動での変化は,HbA1cは約-3%,BMIは約-2%と,本調査の運動とほぼ同程度であった。
【結論】
NASH合併DM患者に対する低負荷有酸素運動は,NASHでないDM患者とほぼ同等の効果を得られること示唆された。また,低負荷有酸素運動は肝機能を悪化させず,安全に血糖コントロールが可能と思われる。
本邦では,糖尿病(以下DM)患者が増加傾向である。DM患者には,脂肪肝を合併し,進展するとアルコール摂取量が少ないにも関わらず,肝炎を発症することがある。これを非アルコール性脂肪性肝炎(以下NASH)といい,DM患者の約50%が合併するとの報告もある。NASHは,肝細胞の線維化が進み,肝血流量の低下,終末期では肝硬変,肝がんを発症する。肝炎治療は伝統的に,運動は肝血流量の減少を来すため禁忌とし,絶食,安静臥床とすることが多い。DM治療として,NASH合併DM患者へ運動療法を行う際に,この相反する疾患を考慮し,運動を行う必要がある。しかし,NASH診療ガイドラインでも運動療法についての明確な指示されておらず,NASH合併DM症例の報告も散見されない。今回,DM治療としての低負荷有酸素運動が,NASH合併のDM患者に対してもインスリン抵抗性および血糖コントロールを改善させるのかを検討した。
【方法】
対象:当院糖尿病センターより運動処方されたDM患者で,確定診断されたNASH患者2名およびNASH疑い患者2名の合計4名。
血液・生化学検査値:HbA1c(NGSP値):9.3±1.0%,AST:44.8±12.2U/L,ALT:78.0±18.8U/L,AST/ALT比:1.8±0.2,血小板:24.5±4.8×104μL。
体組成:BMI:32.6±1.8kg/m2,内臓脂肪面積:121.0±18.3cm2,骨格筋率:31.8±2.7%。
方法:DM治療ガイドラインに沿って有酸素運動を実施。有酸素運動は自転車エルゴメーターを使用。設定は肝機能悪化を考慮して低負荷量の50W,ペダル回転数50~60rpm,時間20分間として設定。介入期間は3か月間,介入期間前後でのインスリン抵抗性および血糖コントロールを比較した。評価項目は,体組成(BMI,内臓脂肪面積,骨格筋率),HbA1c(NGSP値),肝機能値(AST,ALT,ALT/AST比)とした。体組成は体組成計InBodyS10Ⓡ(インボディ・ジャパン社製)で測定。測定肢位は背臥位とした。
また,NASHでないDM患者に対する有酸素運動と本調査との比較を行い,NASH合併DM患者に対する低負荷有酸素運動の効果を比較した。
【結果】
全症例で理学療法介入による有害事象は認めず,中断者も認めなかった。血液・生化学検査値はALT/AST比:1.3±0.3,HbA1c:6.2±0.6%へ改善。体組成はBMI:30.4±1.9kg/m2,内臓脂肪面積:108.8±15.7cm2,骨格筋率:33.3±2.2%へ改善。介入期間前後で,肝機能悪化は認めなかった。NASHでないDM患者への有酸素運動での変化は,HbA1cは約-3%,BMIは約-2%と,本調査の運動とほぼ同程度であった。
【結論】
NASH合併DM患者に対する低負荷有酸素運動は,NASHでないDM患者とほぼ同等の効果を得られること示唆された。また,低負荷有酸素運動は肝機能を悪化させず,安全に血糖コントロールが可能と思われる。