[P-DM-05-2] 糖尿病神経障害の有無がロコモティブシンドロームに与える影響
Keywords:糖尿病, ロコモティブシンドローム, 糖尿病神経障害
【はじめに,目的】
2型糖尿病患者では糖尿病神経障害(DN:diabetic neuropathy)に起因する筋力低下や関節可動域障害などの運動機能障害を生じることが明らかとなっている。一方,日本整形外科学会では運動器の障害による移動機能の低下した状態を表す言葉として「ロコモティブシンドローム」(ロコモ)を提唱している。ロコモ状態の把握にはロコモ25と呼ばれる評価用紙を用いた方法が提唱されており,25項目の質問により簡便に運動機能障害のスクリーニングが可能である。
DNを有する糖尿病患者では,DNを有さない糖尿病患者よりも下肢筋力やバランス機能が低下するとされており,よりロコモを伴いやすい状態であると考えられる。
本研究では糖尿病患者を対象とし,DNの有無がロコモに与える影響をロコモ25を用いて検討した。
【方法】
当院内分泌・糖尿病内科に入院した運動療法可能な2型糖尿病患者26名(男/女:19/7名,年齢:66.7±12.3歳,BMI:24.4±5.0kg/m2,HbA1c:9.8±2.2%)を対象とした。
DNの有無に関して,「糖尿病性神経障害を考える会」の簡易診断基準を参考に,脛骨内果振動感知時間が10秒未満,アキレス腱反射の低下・消失,自覚症状の有無の3項目のうち,あてはまるものが2項目以上をDN(+)群,1項目以下をDN(-)群と判断した。
ロコモ25を用いて25個の評価項目に対して,それぞれ5段階で評価し各回答には0から4点での点数が付与され総得点0点から100点として計算した。ロコモ25の点数が16点以上の者をロコモとした。
統計学的解析として2群間の比較にはt検定,Mann-Whitney検定,カイ二乗検定を使用し有意水準は5%未満とした。
【結果】
簡易診断基準の結果DN(+)群12名,DN(-)群14名であり,そのうちロコモ25の得点が16点以上の者はDN(+)群で6名,DN(-)群で3名(p=0.13)であった。HbA1cでは2群間に有意な差を認めず(9.4±1.3VS10.2±2.9[p=0.39]),またロコモ25の総得点でも2群間に有意な差を認めなかった。(9.9±10.4VS20.3±19.8:p=[0.10])。しかし,項目ごとの比較では25項目中4項目で2群間に有意な差を認めた。有意な差を認めたのは「急ぎ足で歩くのはどの程度困難ですか」「家のやや重い仕事は,どの程度困難ですか」「地域での活動やイベント,行事への参加を控えていますか」「先行き歩けなくなるのではないかと不安ですか」の4項目であった。
【結論】
神経障害の有無ではロコモ25の総得点に有意な差は認められなかったが項目別には4項目でDN(+)群が高値を示した。先行研究においてロコモ25の得点が16点以上であれば要介護のリスクが高いとされている。以上より,糖尿病神経障害の有無はロコモに影響を及ぼさず,要介護状態を惹起するような運動器障害の要因でないことが推察された。しかしながら糖尿病神経障害は移動能力や社会参加に影響を与えている可能性があるため神経障害を合併した糖尿病患者においては詳細なADL評価を実施し理学療法介入を行う必要がある。
2型糖尿病患者では糖尿病神経障害(DN:diabetic neuropathy)に起因する筋力低下や関節可動域障害などの運動機能障害を生じることが明らかとなっている。一方,日本整形外科学会では運動器の障害による移動機能の低下した状態を表す言葉として「ロコモティブシンドローム」(ロコモ)を提唱している。ロコモ状態の把握にはロコモ25と呼ばれる評価用紙を用いた方法が提唱されており,25項目の質問により簡便に運動機能障害のスクリーニングが可能である。
DNを有する糖尿病患者では,DNを有さない糖尿病患者よりも下肢筋力やバランス機能が低下するとされており,よりロコモを伴いやすい状態であると考えられる。
本研究では糖尿病患者を対象とし,DNの有無がロコモに与える影響をロコモ25を用いて検討した。
【方法】
当院内分泌・糖尿病内科に入院した運動療法可能な2型糖尿病患者26名(男/女:19/7名,年齢:66.7±12.3歳,BMI:24.4±5.0kg/m2,HbA1c:9.8±2.2%)を対象とした。
DNの有無に関して,「糖尿病性神経障害を考える会」の簡易診断基準を参考に,脛骨内果振動感知時間が10秒未満,アキレス腱反射の低下・消失,自覚症状の有無の3項目のうち,あてはまるものが2項目以上をDN(+)群,1項目以下をDN(-)群と判断した。
ロコモ25を用いて25個の評価項目に対して,それぞれ5段階で評価し各回答には0から4点での点数が付与され総得点0点から100点として計算した。ロコモ25の点数が16点以上の者をロコモとした。
統計学的解析として2群間の比較にはt検定,Mann-Whitney検定,カイ二乗検定を使用し有意水準は5%未満とした。
【結果】
簡易診断基準の結果DN(+)群12名,DN(-)群14名であり,そのうちロコモ25の得点が16点以上の者はDN(+)群で6名,DN(-)群で3名(p=0.13)であった。HbA1cでは2群間に有意な差を認めず(9.4±1.3VS10.2±2.9[p=0.39]),またロコモ25の総得点でも2群間に有意な差を認めなかった。(9.9±10.4VS20.3±19.8:p=[0.10])。しかし,項目ごとの比較では25項目中4項目で2群間に有意な差を認めた。有意な差を認めたのは「急ぎ足で歩くのはどの程度困難ですか」「家のやや重い仕事は,どの程度困難ですか」「地域での活動やイベント,行事への参加を控えていますか」「先行き歩けなくなるのではないかと不安ですか」の4項目であった。
【結論】
神経障害の有無ではロコモ25の総得点に有意な差は認められなかったが項目別には4項目でDN(+)群が高値を示した。先行研究においてロコモ25の得点が16点以上であれば要介護のリスクが高いとされている。以上より,糖尿病神経障害の有無はロコモに影響を及ぼさず,要介護状態を惹起するような運動器障害の要因でないことが推察された。しかしながら糖尿病神経障害は移動能力や社会参加に影響を与えている可能性があるため神経障害を合併した糖尿病患者においては詳細なADL評価を実施し理学療法介入を行う必要がある。