[P-DM-05-3] 糖尿病患者の筋肉量の調査
キーワード:糖尿病教育入院, 筋肉量, 運動療法
【はじめに,目的】
近年,高齢者のサルコペニアやフレイルが問題となっているが,高齢糖尿病患者においても同様のことが言われている。荒木らは高齢糖尿病患者84人中,約51%に筋肉量低下がみられたと報告している。そこで当院の糖尿病教育入院中に運動療法を実施した患者の筋肉量を調査した。
【方法】
2014年4月から2015年10月までに当院にて糖尿病教育目的に入院し,運動療法が可能な患者64名(男性36名,女性28名)を対象とした。入院中にバイオインピーダンス法(BIA法)にて,全身の筋肉量を谷本らの性,年齢ごとの身長,体重および筋肉量の値と比較した。使用機器はタニタ社製マルチ周波数体組成計(MC-190)で同時刻に測定した。また,糖尿病関連指標としてHbA1c,罹病期間,BMI,体脂肪率,筋肉量,インスリン抵抗性改善薬使用の有無,運動療法関連指標として運動習慣の有無,活動量としての一日平均歩数,Timed Up And Go Test(以下TUG)を調べた。さらに,筋肉量低下群と筋肉量非低下群をt検定,Mann-Whitney検定,カイ二乗検定を用い比較検討した(有意水準5%)。
【結果】
同世代の健常者と比較して64名中10名(男性7名,女性3名)に筋肉量の低下が認められた。また,65歳以上の高齢者でAWGSのサルコペニア診断基準に該当するSMI値(BIA法)を下回るものは28名中3名であった。筋肉量低下群は年齢57±10歳,性別(男性)70.0%,HbA1c10.4±2.2%,罹病期間の中央値2年,BMI20.8±3.5%,体脂肪率20.1±6.8%,筋肉量38.9±7.0kg,インスリン抵抗性改善薬使用(有)10.0%,運動習慣(有)20.0%,活動量(歩数)6955歩,TUG6.6±1.3秒。筋肉量非低下群は年齢62±12歳,性別(男性)53.7%,HbA1c9.6±2.1%,罹病期間の中央値5年,BMI25.8±3.8%,体脂肪率29.7±10.0%,筋肉量44.8±7.7kg,インスリン抵抗性改善薬使用(有)9.6%,運動習慣(有)50.0%,活動量(歩数)7494歩,TUG7.0±1.6秒。両群間ではBMI,体脂肪率,筋肉量に有意差があった。両群間のHbA1cに有意差はなかったが,筋肉量低下群は血糖コントロール不良の傾向がある。糖尿病はインスリン分泌能低下とインスリン抵抗性を起因とする疾患であり,このインスリン作用不足はサルコペニアを引き起こす因子でもある。サルコペニアへの対策は有酸素運動やレジスタンストレーニングなどの運動療法と栄養サポートであり,糖尿病治療の基本である運動療法と食事療法と共通している。また,インスリン抵抗性改善薬使用の有無でも有意差はなかったが,インスリン抵抗性改善薬の使用は四肢の除脂肪量が減りにくいともいわれており,今後注目していきたい。
【結論】
筋肉量の低下を防ぐことで血糖コントロールが期待でき,その対策として運動療法,食事療法,薬物療法を組み合わせた糖尿病治療は,サルコペニア予防の対策にも当てはまる。今後はサルコペニア予防も視野に入れた糖尿病患者に対する運動療法が必要であると考える。
近年,高齢者のサルコペニアやフレイルが問題となっているが,高齢糖尿病患者においても同様のことが言われている。荒木らは高齢糖尿病患者84人中,約51%に筋肉量低下がみられたと報告している。そこで当院の糖尿病教育入院中に運動療法を実施した患者の筋肉量を調査した。
【方法】
2014年4月から2015年10月までに当院にて糖尿病教育目的に入院し,運動療法が可能な患者64名(男性36名,女性28名)を対象とした。入院中にバイオインピーダンス法(BIA法)にて,全身の筋肉量を谷本らの性,年齢ごとの身長,体重および筋肉量の値と比較した。使用機器はタニタ社製マルチ周波数体組成計(MC-190)で同時刻に測定した。また,糖尿病関連指標としてHbA1c,罹病期間,BMI,体脂肪率,筋肉量,インスリン抵抗性改善薬使用の有無,運動療法関連指標として運動習慣の有無,活動量としての一日平均歩数,Timed Up And Go Test(以下TUG)を調べた。さらに,筋肉量低下群と筋肉量非低下群をt検定,Mann-Whitney検定,カイ二乗検定を用い比較検討した(有意水準5%)。
【結果】
同世代の健常者と比較して64名中10名(男性7名,女性3名)に筋肉量の低下が認められた。また,65歳以上の高齢者でAWGSのサルコペニア診断基準に該当するSMI値(BIA法)を下回るものは28名中3名であった。筋肉量低下群は年齢57±10歳,性別(男性)70.0%,HbA1c10.4±2.2%,罹病期間の中央値2年,BMI20.8±3.5%,体脂肪率20.1±6.8%,筋肉量38.9±7.0kg,インスリン抵抗性改善薬使用(有)10.0%,運動習慣(有)20.0%,活動量(歩数)6955歩,TUG6.6±1.3秒。筋肉量非低下群は年齢62±12歳,性別(男性)53.7%,HbA1c9.6±2.1%,罹病期間の中央値5年,BMI25.8±3.8%,体脂肪率29.7±10.0%,筋肉量44.8±7.7kg,インスリン抵抗性改善薬使用(有)9.6%,運動習慣(有)50.0%,活動量(歩数)7494歩,TUG7.0±1.6秒。両群間ではBMI,体脂肪率,筋肉量に有意差があった。両群間のHbA1cに有意差はなかったが,筋肉量低下群は血糖コントロール不良の傾向がある。糖尿病はインスリン分泌能低下とインスリン抵抗性を起因とする疾患であり,このインスリン作用不足はサルコペニアを引き起こす因子でもある。サルコペニアへの対策は有酸素運動やレジスタンストレーニングなどの運動療法と栄養サポートであり,糖尿病治療の基本である運動療法と食事療法と共通している。また,インスリン抵抗性改善薬使用の有無でも有意差はなかったが,インスリン抵抗性改善薬の使用は四肢の除脂肪量が減りにくいともいわれており,今後注目していきたい。
【結論】
筋肉量の低下を防ぐことで血糖コントロールが期待でき,その対策として運動療法,食事療法,薬物療法を組み合わせた糖尿病治療は,サルコペニア予防の対策にも当てはまる。今後はサルコペニア予防も視野に入れた糖尿病患者に対する運動療法が必要であると考える。