第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P02

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-02-2] 目標管理を補足する360度フィードバック導入の効果と留意点について

松山太士1,2, 斎藤良太1 (1.社会医療法人財団新和会八千代病院総合リハビリセンター, 2.グロービス経営大学院経営研究科)

キーワード:360度フィードバック, 目標管理, 人事評価

【はじめに,目的】

目標管理(以下,MBO)とは,評価者である上司と被評価者との間で目標を合意し,それに対する達成度で評価する制度である。また,MBOは目標合意のプロセスにおいて気付きを促すツールとして活用できるため,能力開発としての側面も併せ持っている。能力開発の側面でMBOを考えると,上司に加えて同僚や部下からの多面的なフィードバックを受ける360度フィードバック(以下,360度)を導入することで,その効果を促進させる可能性がある。360度は自分の行動が周囲にどう伝わっているのかを知ることができ,気付きを促し自身の行動計画を見直す契機となる反面,不安やネガティブな感情を引き起こすリスクも併せ持つ可能性がある。

本研究の目的は,MBOを補足する目的で導入した360度の効果を検証すること,導入にあたって留意すべき点を明らかにすることとした。


【方法】

対象は,7~8名を管理する立場の職員18名(経験年数5.8±1.5)とした。360度は,対象者一人につき上司・同僚・部下それぞれ3名~4名に回答を求めた。内容は,1.意欲 2.管理能力 3.専門職としての課題遂行 の3項目について,それぞれ「対象者の良い所」「今後の課題」に分けて自由に回答されたものを事務局が匿名化し書面にてフィードバックした。

360度を実施後,被評価者18名を対象に360度についてのアンケート調査を実施し無記名で回答を得た。


【結果】

360度により気付きがあったと回答した者は17名/18名であった。ネガティブな気分になった程度は5段階評価で2.7±1.1に対してポジティブな気分になった程度は3.1±1.0であり,その背景として自分の課題を指摘されることに対してポジティブに捉える者とネガティブに捉える者とが存在していた。

立場によって評価が異なると感じた程度は,上司と部下との違いが最も強く(4.3±0.7),次いで上司と同僚(3.7±0.9),同僚と部下(3.1±0.8)の順であった。360度を受ける不安の程度は,2014年度(3.2±1.8)と比較して2015年度(2.8±1.3)は軽減していた。友人や後輩に360度を薦めたいと思う程度は3.2±1.2であった。


【結論】

ほとんどの者が360度によって新たな気付きがあったこと,上司とそれ以外との評価に違いを感じていることから,上司との面談のみであるMBOに加えて360度を実施することで多面的な解釈を促す意義があると考えられる。しかし,360度を強く薦めたいと思う者は少数であったことからネガティブな側面を無視はできず,導入に際して留意すべき点があることが判った。留意点として,360度は自分の成長につなげるものという趣旨説明や受け止め方の指導が必要である。また,一方的な指摘や欠点の指摘なども散見されたため,フィードバック回答者に対する不適切な回答への注意喚起が一層必要である。

また,360度に対する不安は,初回と比較し2回目の方が軽減する傾向があることから,継続して実施することにより不安が軽減する可能性がある。