第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P02

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-02-4] 急性期病院内科系病棟におけるADL維持向上等体制加算と疾患別リハビリテーション料の診療報酬点数比較

手塚純一 (社会医療法人財団石心会川崎幸病院リハビリテーション科)

Keywords:病棟配置, 診療報酬, 管理運営

【はじめに,目的】

2014年度診療報酬改定にてADL維持向上等体制加算が新設された。療法士病棟配置の効果が種々報告される一方で,診療報酬点数(以下:点数)の低さや療法士不足を理由に実施施設はあまり増えていない。また,疾患別リハビリテーション料(以下:疾患別リハ料)のうち脳血管疾患等リハ料(廃用症候群)の点数は大幅に引き下げられ,査定も増えている傾向にある。今回,脳血管疾患等リハ料(廃用症候群)の算定の多い急性期病院内科系病棟の実績をもとに,ADL維持向上等体制加算と査定を除く疾患別リハ料の算定点数を比較し,ADL維持向上等体制加算導入の妥当性を診療報酬面から検討した。

【方法】

2014年4月1日から9月30日の間に当院消化器内科病棟に入院した1,139名を対象に,性別,年齢,在院日数,診断名,疾患別リハ料の算定有無および種別,実施単位数,算定点数,査定点数を後方視的に調査した。次にADL維持向上等体制加算算定可能点数(算定可能6単位を含む)を算出し,同病棟における疾患別リハ料算定点数および標準的算定単位数(18単位)算定点数と比較した。

【結果】

男性682例,女性457例,年齢69.1±16.3歳,在院日数9.8±11.6日,診断名は消化器疾患が1064例(93.4%)と最も多かった。疾患別リハ料は234例(20.5%)で算定されており,脳血管疾患等リハ料II(廃用症候群)が155例(13.6%)と最も多く,在院日数は21.8±18.5日と有意に長かった。疾患別リハの実施単位数は病棟全体で1日平均9.2単位,算定点数は1月平均48,222点,査定点数は1月平均751点(査定率1.6%),中でも脳血管疾患等リハ料II(廃用症候群)の査定が最も多く1月平均663点(査定率2.4%)であった。ADL維持向上等体制加算の対象は1月平均延べ1,308日,1月平均32,704点,病棟専従療法士が算定可能な疾患別リハ6単位を脳血管疾患等リハ料II(廃用症候群/早期加算含む)での算定と仮定すると1月平均23,232点,合計は1月平均55,936点であった。これは対象病棟の査定を除く疾患別リハ料算定点数1月平均47,471点よりも多かった。一方,脳血管疾患等リハ料II(廃用症候群/早期加算含む)で標準的算定単位数(18単位)を算定した場合(査定率を2.4%と仮定)の算定可能点数1月平均68,023点よりも12,087点少なかった。これは対象病棟におけるADL維持向上等体制加算9.2点分,脳血管疾患等リハ料II(廃用症候群)31.3点分,脳血管疾患等リハ料II(廃用症候群)3.2単位分に相当した。

【結論】

ADL維持向上等体制加算の算定可能点数は疾患別リハ料より少ない結果であったが,脳血管疾患等リハ料(廃用症候群)の点数引き下げと査定増加によりその差は僅差であった。今後,廃用症候群に対するリハビリテーションの評価の適正化が更に進むと想定される中,疾患別リハ料のうち脳血管疾患等リハ料(廃用症候群)の算定率が高い病棟においては,療法士病棟配置による予防的取り組みに運営方針をシフトしていく必要があると考える。