第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P03

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-03-2] 若手セラピストにおけるコーピング行動が精神的健康に与える緩衝効果

安田雅美1, 岩月宏泰2, 越後あゆみ3, 由留木裕子3 (1.名古屋市立西部医療センター, 2.青森県立保健大学, 3.青森県立保健大学大学院)

Keywords:セラピスト, 精神的健康, コーピング

【はじめに,目的】地域社会を軸とした医療福祉のシステム化が進められた結果,理学療法士,作業療法士及び言語聴覚士(以下,セラピスト)は専門知識や技術の提供が病院及び施設内に留まらず,他職種との連携や調整,事務作業などの様々な仕事に追われ心身共に疲れ果てている。先行研究ではセラピストのストレス要因のうち,上司や医師,他職種,患者などの人間関係が最も大きいと指摘されている。コーピングはストレスに対処するための方策であるが,バーンアウトに対するコーピングは個人の努力だけでなく,職場や社会の単位で制度的介入を行うことが重要である。今回,経験10年未満のセラピストを対象に精神的健康を評価し,コーピングの機能との関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】対象は経験10年未満のセラピスト133名(男性64名,女性69名)であった。質問紙調査(留め置き法)の時期は2015年6~9月であり,調査票は基本属性,バーンアウト尺度(久保ら1992,17項目),コーピング尺度(島津1997,25項目),などで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,各測定尺度間の関係についてAmos16.0Jを使用して共分散構造分析を行った。

【結果】バーンアウト尺度について探索的因子分析(主因子法,Promax回転)を実施したところ,先行研究と同様に脱人格化・情緒的消耗感・個人的達成感の後退の3つの下位尺度が抽出され,3因子の累積寄与率は51.3%であった。また,コーピング尺度について探索的因子分析(主因子法,Promax回転)を実施したところ,先行研究と同様に積極的な問題解決,逃避,他者からの援助期待,諦め,行動・感情の抑制の5つの下位尺度が抽出され,5因子の累積寄与率は54.5%であった。

次にコーピング尺度の5つの下位尺度がバーンアウトに及ぼす因果モデルを構成し分析(推定法には最尤法を採用)した結果,χ2値=273.19,p=.09,GFI=.87,AGFI=.84,RMSEA=.05であり,良好な適合度を示した。コーピング尺度の積極的な問題解決からバーンアウト尺度の情緒的消耗感・個人的達成感からの後退へのパス係数は各々-.54,-.62であった。セラピストがストレスについて同僚や友人に相談するなど,ストレスへの能動的な対応が情緒的消耗感・個人的達成感からの後退という状況に陥らないことが示唆された。一方,コーピング尺度の諦め,行動・感情の抑制からバーンアウト尺度の情緒的消耗感へのパス係数は各々.43,.45であった。ストレスへの受動的な対応はその問題との関わりを減らす消極的態度へと発展する可能性がある。

【結論】セラピストの職場では部下の対人関係能力の開発と上司の管理者の役割教育を並行して実施することが,若手セラピストの職場への帰属意識を高めると考えられた。