第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P06

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-06-1] メタ認知自己評価および社会人基礎力自己評価が学内成績に与える影響について

高島恵, 加藤研太郎, 白石和也 (上尾中央医療専門学校)

キーワード:メタ認知, 社会人基礎力, 学内成績

【はじめに,目的】DeSeCoプロジェクトによって提唱された「コンピテンシー」は,「技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求に対応することができる力」とされ,3つのキーコンピテンシーからなる。この3つの中核には「個人が思慮(内省性)をもって行動すること」が掲げられており,メタ認知もこの中に内包されている。一方,社会人基礎力は「基礎知識や専門技術を有効に活用するために必要な基本的能力」であるとされている。いずれの概念も知識技術を有効に活用するためだけではなく,学内成績にも影響を与えていることが予測されることから,メタ認知ならびに社会人基礎力の自己評価が学内成績(Grade Point Average:以下GPA)に影響を与える因子と影響度について検討し,結果を教育に活用することを目的とする。


【方法】本校理学療法学科第2学年41名(留年生含む)を対象とし,「メタ認知」については阿部らによる「成人用メタ認知尺度」を用い,28項目の質問に対する6段階評価(1:全くあてはまらない,から6:とてもよくあてはまる,まで)を自己評価にて実施した。また「社会人基礎力」に関しては経済産業省による12項目の質問に対する5段階評価(1:まったく当てはまらない,から5:とてもよくあてはまる,まで)を自己評価にて実施し,結果を「アクション合計(3項目15点満点)」「シンキング合計(3項目15点満点)」「チームワーク合計(6項目30点満点)」の3群とした。両者とも実施時期は第2学年前期とした。さらにGPAは第1学年分を対象とした。GPAを従属変数とし,メタ認知自己評価28項目ならびに社会人基礎力自己評価12項目ならびに3群を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行い,有意水準をp<0.05とした。統計処理はSPSSver16.0を用いた。


【結果】各項目間での多重共線性は認められなかった(ダービン・ワトソン比1.927)。GPAに影響を与える因子として「社会人基礎力のアクション合計(以下アクション合計)」,「メタ認知自己評価の“課題が終わった時点で,できる限り学んだかどうか振り返っている”(以下:メタ認知11)」「メタ認知自己評価の“新しい知識や情報について,その意味や重要性に注意を向けている”(以下:メタ認知12)」が採択された(GPA=0.782+0.167×アクション合計+-0.232×メタ認知11+0.196×メタ認知12)。分散分析表の結果は有意で,R2は0.408であった。


【結論】アクション合計(主体性,働きかけ力,実行力)およびメタ認知11,メタ認知12の自己評価がGPAに影響を与えた。メタ認知尺度は「モニタリング力」「コントロール力」「メタ認知的知識」の3群に分かれており,メタ認知11は「モニタリング力」の一部・メタ認知12は「コントロール力」の一部であることから,自らの行動の振り返りと調整および目標に対して前へ進む力が成績に影響を与えていることが示唆された。