第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P09

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-09-5] 学習動機づけを向上させる理学療法臨床実習の方策

―実習成績や学業成績との関係より―

成田亜希 (白鳳短期大学)

Keywords:理学療法臨床実習, 学習動機づけ, 成績

【目的】臨床実習の目的は,机上の学習を統合し具体化することを学ぶ,臨床を体験し学習動機づけ(学習意欲)を高めることである。そこで,実習前後で学習動機づけがどのように変化するのか,学習動機づけに変化を起こさせる要因が何であるのかを探索するため,本研究では,実習成績との関係や学業成績との関係をみる。そして,臨床実習指導者(SV)や教員の関わりも合わせて,よき臨床実習指導の方策を検討する。



【方法】理学療法士学生28名を対象に,3年間の各期実習前後で学習動機づけに関する質問紙調査を実施した。自己決定理論から外的調整,取り入れ的調整,同一化的調整,内発的動機づけにタイプ分けを行い,実習前後での変化を捉えた。実習成績に関しては,各期実習の評価表点数を用いた。学業成績に関しては,各期実習に一番近い模試成績を用いた。



【結果】実習後に学習動機づけが上がっていた者と,実習前後ともに内発的動機づけであった者を「自律化群」,実習後に学習動機づけが下がっていた者を「他律化群」,実習前後で学習動機づけに変化がなかった者を「変化なし群」とした。実習後に学習動機づけが他律化する学生は,自律化群や変化なし群より少ない。自律化が一番多くなるのは,最終実習である総合実習第II期である。そして,学習動機づけ変化と実習成績との間には,関連性は見られなかった。しかし,学習動機づけ変化と学業成績との間には関連性が見られた。総合実習第II期においては,自律化群の学業成績が変化なし群や他律化群の学業成績よりも有意に低かった。学業成績の低い学生ほど学習動機づけが自律化した。



【結論】実習成績が学習動機づけには影響しないが,最初の見学実習と,最後の総合実習第II期においては,実習成績の悪い学生の方が学習動機づけは上がる傾向にあった。SVは実習で苦戦している学生の能力や資質に応じた実習ができているのではないだろうか。そして,学習動機づけ変化と学業成績との関係では,普段の成績が悪い学生ほど,実習後に学習動機づけは向上する傾向にある。これは普段の学業成績が悪くとも,実習では十分な成果を感じることができる実習指導をSVが行っているといえる。本学の実習は,実習開始前に教員が実習地へ行き,実習の目的や内容についての説明と学生紹介を行っている。学生の能力や資質などを伝え,学生個々に合わせた実習を依頼している。また実習中に必ず実習地を訪問し,学生が患者の評価または治療をしている場面を見て,直接指導するということを行っている。そして実習最終週にSVと一緒に実習成績表をつけることにしている。SVと教員とで一緒に学生を指導し,実習を進めるようなスタイルをとっている。効果的な臨床実習を展開するためには,SV,学生,教員の三者が深く交流し合うことである。学生の学習動機づけ向上に影響するのは,SVの指導力であるが,実習中の教員の教育力にもかかっていると考える。