第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P02

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 4:20 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-02-6] 重度の狭心症と高度肥満を合併した低身体機能の慢性透析患者に対する心臓リハビリテーションの経験

赤羽弘泰1,3, 宮下貴史1,3, 永富丈博1,3, 馬渡栄一郎2,3, 東方壮男2,3, 富田威2,3 (1.JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院リハビリテーション科, 2.JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院循環器内科, 3.JA長野厚生連北アルプス医療センターあづみ病院循環器病センター)

Keywords:狭心症, 肥満, 透析

【はじめに,目的】

心臓リハビリテーション(以下,心リハ)においては,通常,エルゴメーターを使用した有酸素運動やレジスタンストレーニングが運動療法として実施されている。しかし,この双方が困難な症例に対する運動療法は確立されていない。また,透析患者に対する運動療法の普及はいまだ十分とはいえず,診療報酬にも反映されていないのが現状である。今回,通常の心リハが困難な重度の狭心症と高度肥満を合併した透析患者の心リハを経験し,運動療法の方法・効果を検証したので報告する。

【方法】

[症例]

60代男性,合併症として糖尿病,慢性腎不全,ネフローゼ症候群,高血圧,高脂血症,高尿酸血症がある。身体機能は車椅子での移動が主体で,独歩は10m程度可能な状態であり,FIMは90/126点であった。

[現病歴]

2009年より血液透析を導入している。2010年にA病院で心臓カテーテル検査を施行され,#6 90%,#13 75%,#4PD 75%の狭窄あり。同年に同病院で左前下行枝に左内胸動脈を使用してバイパス術を施行された。2011年に下肢閉塞性動脈硬化症の疑いで,S病院でCT・エコーを施行され,右浅大腿動脈に75%狭窄があるが,圧較差は少なく経過観察となった。2014年に透析の際,前胸部痛が出現し15分程度持続した。2015年に当院循環器内科を受診し,同年に心臓カテーテル検査を施行され,#7 100%,#13 90%,#15 99%,#12 90%,#2 90%,#4AV 90%,LITA-LAD:patent,#8遠位部75% 近位部90%の狭窄あり。同年にS病院紹介となり,#2,#15に対してPCI施行された。

[経過]

2015年より当院で外来心リハ開始となった。心リハ開始時のデータとして身長171.2cm,体重139.8kg,BMI 47.5,心胸郭比65%,BNP 833.2pg/ml,HbA1c 9.1%,TG 242mg/dl,LDLコレステロール101 mg/dlであった。今回の症例はエルゴメーター・レジスタンストレーニングの実施が困難であったため,車椅子座位にてペダル式トレーナーによる運動を1分間×3セットから開始した。現在,透析後週3回の外来心リハを7カ月間継続できている。

【結果】

外来心リハ開始後7ヶ月の時点で,体重129.0kg,BMI 44.1,心胸郭比64%,BNP 268.5 pg/ml,HbA1c 6.9%,TG 211mg/dl,LDLコレステロール97 mg/dlであった。また,外来心リハ開始時と比較して,速効型インスリンが22単位から18単位に4単位,持効型インスリンが36単位から22単位に14単位使用量が減少した。運動耐容能としてはペダル式トレーナーによる運動が2分間×4セットまで可能になり,独歩の距離も40m程度まで延長した。FIMは94/126点であった。

【結論】

今回,通常の心リハで実施する運動療法が困難な低身体機能の症例に対して,ペダル式トレーナーによる運動を実施した。その効果として,低負荷の運動であっても継続的に実施することによって,体重減少とBNPを指標とした心不全の改善,またHbA1c・インスリン使用量の減少による糖代謝の改善をもたらす可能性も示唆された。