第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P03

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-03-4] 重症心不全患者に携帯型活動量計を用いて自宅での活動や運動を管理し,安全に運動耐容能を改善することができた症例についての報告

猪熊正美1, 設楽達則1, 福司光成1, 下田絵里花1, 松村亮太1, 熊谷秀美1, 桑原拓哉1, 中野晴恵1, 風間寛子1, 村田誠2, 安達仁2, 大島茂2 (1.群馬県立心臓血管センターリハビリテーション課, 2.群馬県立心臓血管センター循環器内科)

キーワード:慢性心不全, 携帯型活動量計, 運動耐容能

【はじめに,目的】

心大血管疾患理学療法診療ガイドラインには,病後生活の質を高めることと生命予後の改善を医学的治療の終局の目的と示されている。また,運動耐容能は心大血管疾患患者の予後に影響を与えることから心臓リハビリテーション(心リハ)の有用性がいわれている。一方で入院期間の短縮化進む中,心リハは入院期に加え,外来期での継続実施が重要である。外来通院患者においては医療機関で実施される心リハと共に,医療機関外での自己管理による運動が実施されるが,自宅での運動や活動の質と量を把握し,至適運動強度や至適運動量を確保することは困難である。今回,過負荷による心不全急性増悪の入退院を繰り返していた患者に対して携帯型活動量計(活動量計)を利用し,運動耐容能が改善した症例を経験したので報告する。

【方法】

症例は64歳男性。虚血性心筋症が基礎疾患の慢性心不全患者。1997年に急性心筋梗塞を発症し,経皮的冠動脈形成術が施行された。同時に心不全を合併し強心薬,利尿薬での治療も行なわれた。以後,2006年に冠動脈バイパス術が施行され,2011年より慢性心不全の急性増悪により入退院を繰り返していた。2015年より心リハに2回/週で定期的に通われている。(算定期間に注意)心臓超音波検査:EF 32%,LVDd/Ds 69/55mm,壁運動dyskinesis,MR moderate。血液生化学データ:BNP 238pg/ml,eGFR 37ml/min/1.73m2

外来心リハ初回に活動量計と自己記載による活動表を渡した。活動量計と活動表を確認し,自宅での活動量や自己管理による運動方法や運動量が事前に実施した心肺運動負荷試験(CPX)の結果に適合しているか定期的に確認,指導を行った。初回時と3ヵ月時に身体機能(握力,膝伸展,FRT,片脚立位時間,総軌跡長距離),CPX結果(AT,peak VO,VE-VCO2 slope),呼吸機能,体組成(骨格筋量,体脂肪率),心臓超音波,血圧・血液生化学データ,活動量(歩/週)について検討した。

【結果】

心リハ実施期間内での心不全増悪による入院はなかった。各指標の変化(初回→3ヵ月)で,身体機能,呼吸機能,体組成,心臓超音波,血液生化学データの変化は見られなかった。AT 7.7→10.7ml/min/kg,peak VO 7.8→11.4 ml/min/kg,VE-VCO2 slope 46.1→30.1,活動量2461→5872歩/週となり3ヵ月時で初回時と比較して改善した。BNP 238→220pg/ml,eGFR 37→40ml/min/1.73と心機能,腎機能とも悪化することなく経過した。

【結論】重症心不全患者においても活動量計を利用し自宅での活動内容や活動量,運動量や運動内容を管理することで,心不全をコントロールしながら運動耐容能を改善することができる。