第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P04

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-04-3] 当院における心不全入院患者のサルコペニア有症率と身体機能の関連性について

岡馬隆晶, 大塚翔太, 大畑拓也, 垣内梨恵子, 湯口聡 (社会医療法人社団十全会心臓病センター榊原病院リハビリテーション室)

Keywords:心不全, サルコペニア, 高齢者

【はじめに】

現在わが国は高齢化率25%を超える超高齢社会であり,循環器疾患患者は高齢化の一途を辿っている。それに伴い,サルコペニアなどの老年症候群が近年注目されている。サルコペニアは加齢に伴う筋肉量減少きたす原発性サルコペニア,活動,疾患,栄養に関係する二次性サルコペニアが挙げられる。二次性サルコペニアには慢性疾患である心不全も含まれており,高齢心不全患者では原発性,二次性のサルコペニアが混在している。しかし,心不全とサルコペニアについての報告はまだ少ないのが現状である。また,近年では2014年にAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア人の為のサルコペニア基準が提唱され,歩行速度(m/sec),握力(kg),Bioelectrical Impedance Analysis(BIA)又はDual-energy X-ray Absorptiometry(DXA)によるSkeletal Muscle mass Index(SMI)の測定が提唱された。そこで今回,AWGSを用いて当院における心不全入院患者のサルコペニア有症率と身体機能の特徴について検討した。


【方法】

平成25年6月から平成27年6月までに当院へ心不全により入院加療され,心臓リハビリテーションを施行し,最大歩行距離が100m以上可能であった65歳以上の43名(男性20名,女性23名,平均年齢78.0±7.9)を対象とし,退院前に歩行速度,握力,SMIを測定した。歩行速度は5mの距離を快適に歩行可能である速度で測定した。握力は左右各2回測定し,左右の最高値から平均値を求めた。SMIは体組成測定計Inbody430(BIA)を用い,測定の前2時間は運動,食事を避け実施した。サルコぺニアはAWGSのアルゴリズムにより判定し,歩行速度0.8m/sec以下または握力は男性26kg,女性18kg未満とSMI(BIA)は男性7.0kg/m2女性5.7kg/m2未満の両者を満たした場合とした。以上から,歩行速度,握力が基準値を満たした割合,およびその中でSMIの基準値にてサルコペニア有症者の割合を求めた。また,サルコペニア有症者の歩行速度,握力をReceiver Operating Characteristic Curve(ROC曲線)を用いてcut off値を算出した。


【結果】

歩行速度または握力が基準値を満たしたのは全体の31名(72.1%)であり,サルコペニア有症者の割合は全体の19名(44.2%)であった。また,歩行速度または握力が基準値を満たした31名のうち,SMIが基準値以上でありサルコペニアに該当しなかった者の割合は12名(38.7%)であった。サルコペニア有症者でROC曲線より求めたcut off値は,歩行速度0.9m/sec(ACU:0.81,感度0.895,特異度0.75,p<0.001)握力は男性で18.75kg(AUC:0.81,感度0.857,特異度0.77,p<0.01)女性で16.75kg(ACU:0.83,感度0.83,特異度0.64,p<0.001)であった。


【結語】

今回,当院心不全患者のサルコペニア有症率は全体の44.2%であった。わが国におけるにおけるサルコペニア有症率は約20%前後の報告が多く,当院における心不全患者で高値を示した。また,ROC曲線によるcut off値はAWGSが定める基準と比較して歩行速度は速く,握力は低値であった。