第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P07

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-07-3] 循環器病棟におけるADL維持向上等体制加算の取り組みと効果

河野裕治1, 粥川知子1, 曽我武史2, 青柳陽一郎3, 才藤栄一3, 井澤英夫4 (1.藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部, 2.藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院看護部, 3.藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学I講座, 4.藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院循環器内科)

Keywords:ADL維持向上等体制加算, 循環器疾患, 入院日数短縮

【はじめに,目的】

本邦の人口動態の高齢化と急性期治療の進歩に伴い,高齢患者が急増している。また急性期は病態安定の為に身体活動を制限することから,高齢患者は容易にADLが低下し,急性期治療後は他院や介護施設へ転院する者も多い。一方,厚生労働省による全国医療費適正化計画では,急性期医療での入院日数短縮を課題に挙げており,入院日数短縮に対する取り組みが重要となる。平成26年度の診療報酬改定でADL維持向上等体制加算(ADL加算)が新設され,早期退院や廃用予防が重要となる急性期病棟で入院直後からの予防的な理学療法介入が可能となった。従来の病棟専従でもリハビリテーション(リハ)が必要な患者の早期発見は可能であったが,理学療法介入が可能になるのはリハ依頼後となる。ADL加算では,理学療法士による入院後早期からの評価と介入が可能となることから,入院日数の短縮に有効と考えられる。したがって本検討では,入院日数やADLに対するADL加算実施の効果を検証し,さらに入院日数短縮に向けた課題を明らかにすることを目的とした。


【方法】

研究デザインは後ろ向き調査研究とした。対象は2014年8月から2015年7月までに循環器内科病棟に入院しリハ依頼があったものとし(ADL加算群),院内死亡例,他疾患治療目的での転科例は本検討から除外した。比較対象には2013年4月から2014年3月までに循環器内科よりリハ依頼があったものとした(対照群)。評価項目は年齢,性別,入院日数,リハ開始までの日数,リハ実施日数,退院時Functional Independence Measure(FIM)とし,ADL加算群ではさらに入院時Barthel index(BI),ADL加算終了時BI,入院前生活環境,転帰先を診療記録より調査した。


【結果】

該当期間に入院した750例中43例(死亡8例,転科35例)を除外した707例を検討対象とした。対象のうち,検査目的の予定入院は425例(60.1%),緊急入院でリハ依頼があったものは(ADL加算群)147例(20.7%),リハ依頼がなく早期退院したものは135例(19.3%,入院日数6.3日)であった。ADL加算群の特性は女性101例,平均82.4歳であった。また対照群として102例を解析対象とした。両群の比較では,ADL加算群で入院日数(26.1日vs 41.8日),リハ開始までの日数(4.7日vs 11.7日),リハ実施日数(23.4日vs 30.1日)に有意な減少を認めが,退院時FIMには差を認めなかった。ADL加算群を自宅退院群116例,非自宅退院群31例に分けて比較した結果では,年齢(81.5歳vs 86.0歳),入院時BI(84.4 vs 63.2),入院日数(22.7日vs 42.3日)に有意差を認めたが,リハ開始日数には差を認めなかった。


【結論】

ADL加算導入は,リハの早期開始や入院日数の減少に有効であった。さらに高齢で入院時ADLが低い患者に対しては,リハの早期開始やADL維持のみでなく,入院後早期から退院支援の導入などの環境整備により,さらなる入院日数の短縮が可能になると考えられた。