第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-KS-01-1] 呼吸困難感と呼吸数および呼吸休止時間の関連性について

―健常若年者の息止め課題に伴う換気応答からの検討―

久保洋平1, 辻内名央1, 光吉俊之1, 菊地萌1, 堀竜次2 (1.星ヶ丘医療センターリハビリテーション部, 2.大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)

Keywords:呼吸困難感, 休止時間, 呼吸数

【はじめに,目的】

慢性呼吸不全患者における呼吸困難感は日常生活動作を制限するとされているが,洗顔や食事動作などの異なる呼吸パターンをとる場合にも呼吸困難感が起こりやすいと言われている(Schenkel,1996)。成人における正常呼吸パターンは吸息時間,ポーズ時間,呼息時間,休止時間の4相に分けられている(尾崎,2014)が,そのうちの休止時間と呼吸困難感との関連についてはまだ明らかにされていない。

今回,健常若年者に対し息止め課題を行わせ,課題終了直後の分時呼吸数(Respiratory Rate;以下RR)と休止時間を測定し,呼吸困難感との関係性について検討することを目的とした。

【方法】

対象は健常成人11名(男性5名,女性6名,平均年齢25.4±2.8歳)とした。息止め課題は,背臥位にて息止めと安静呼吸の順に行うことを1サイクルとし,これを連続して3サイクル行わせた。息止めの時間は40秒間と30秒間の2条件に分け,課題中の安静呼吸の時間は全て40秒間とした。この課題における最後の安静呼吸40秒間を含む60秒間を課題後の呼吸状態として,RRと平均休止時間を測定した。同時に修正Borg Scaleを用いて呼吸困難感を評価した。

呼吸周期は,鼻カニューレからの流速圧信号をポリグラフシステムRMT-1000(日本光電社製)を用いパーソナルコンピュータに記録,解析した。波形解析はLab Chart 8 Readerを用い,休止時間は0.1秒毎の流速圧の変化の値から分析し,時間を抽出した。

統計処理は,Spearmanの順位相関係数を用い,息止め課題後の修正Borg ScaleとRR,平均休止時間との関連をそれぞれ2条件に分けて検討した。統計ソフトはEZRを用い,有意水準を5%とした。

【結果】

修正Borg Scale(40秒:4±2,30秒:3±1.3)とRR(40秒:14.2±2.8回,30秒:13.7±2.2回)には2条件ともに統計学的に相関(40秒:p=0.14,30秒:p=0.87)を認めなかった。修正Borg scaleと平均休止時間(40秒:0.61±0.32秒,30秒:0.87±0.46秒)においては,40秒条件で統計学的に相関(ρ=-0.58,p=0.06)を認めなかったが,30秒条件で負の相関(ρ=-0.65,p=0.03)を認めた。

【結論】

今回,2条件の息止め課題後の修正Borg ScaleとRR,平均休止時間の関連を検討した結果,修正Borg Scaleと30秒条件の平均休止時間において負の相関を認めた。また40秒条件の平均休止時間の結果も統計学的な相関は認められなかったものの,課題後の平均休止時間の減少は呼吸困難感の増加と一致する傾向にあった。休止時間はRRの変化よりも呼吸困難感を評価するための指標になる可能性がある。

本研究は呼吸困難感を評価する際に,休止時間などの呼吸パターンに着目することの重要性を示唆している。慢性呼吸不全患者の呼吸困難感の原因は,現在特定されておらず,今後は休止時間との関連について解明していく必要があると考える。呼吸困難感の解明により慢性呼吸不全患者の活動制限およびQOLの改善の糸口となることが期待される。