第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-KS-01-2] 一段階運動負荷試験における酸素摂取量の時定数測定の類似性について

測定の信頼性向上を目的としたケーススタディ

藤田大輔 (健康科学大学理学療法学科)

Keywords:一段階運動負荷試験, 酸素摂取量の字定数, 類似性

【はじめに,目的】

一段階運動負荷試験によって得られる酸素摂取動態は3相に分けられている。特に,第2相における酸素摂取量の立ち上がりの速さは時定数によって表され,酸素摂取量の時定数と呼ばれている。酸素摂取量の時定数は,一定の負荷に対するエネルギー産生機構の応答速度を示し,運動負荷にどのぐらい耐えられるのかという運動耐容能とは異なる指標として理学療法評価に応用できる可能性がある。しかし,酸素摂取量の時定数は1回の測定では信頼性は低く,先行研究では2-4回の測定を要することが多いが,信頼性を低下させる要因については明らかではない。そこで,本研究の目的は測定の信頼性を向上させるために,2回の一段階運動負荷試験で時定数が類似した値を示した被験者と大きく解離した被験者の一段階運動負荷試験中の呼気ガスパラメータの類似性を比較し,酸素摂取量の時定数が解離する要因を明らかにすることとした。

【方法】

対象は健常成人男性2名とし,酸素摂取量の時定数が2回の測定で類似した秒数が算出されている被験者A(1回目:42.3秒,2回目:44.0秒)と大きく異なる被験者B(1回目:35.6秒,2回目:88.4秒)に分けた。測定は安静座位5分後に,一段階運動負荷試験として時速4.5km/hに設定したトレッドミル歩行を6分間実施し,15分以上の間隔を置いて2回測定した。それぞれの被験者の1回目と2回目の呼気ガスパラメータ(酸素摂取量,呼吸数,分時換気量,1回換気量,呼吸商)に対してPearsonの積率相関分析を用いて,類似性を検討した。解析に用いたデータは5秒平均値とし,解析区間は運動開始から3分間とした。加えて,1回目と2回目のそれぞれの運動開始から3分までの二酸化炭素換気当量に対してもPearsonの積率相関分析を行った。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。

【結果】

呼吸数と1回換気量は被験者A・B共に1回目と2回目の測定において有意な相関関係は認めらなかった。酸素摂取量と分時換気量は,1回目と2回目が類似した被験者Aにおいて有意な相関(それぞれr=0.81,0.61)が認められたが,1回目と2回目が大きく解離した被験者Bにおいて相関関係(それぞれr=0.33,0.23)が認められなかった。二酸化炭素換気当量は,被験者Aの1回目と2回目の二酸化炭素換気当量は運動開始から有意な負の相関を示した(それぞれr=0.59,r=0.64)が,被験者Bでは相関関係が認められなかった(それぞれr=0.33,0.05)。

【結論】

本研究の結果,酸素摂取量の時定数測定が大きく解離する要因は,分時換気量と酸素摂取量の変化が1回目と2回目の測定で類似しないことであることが示唆された。さらに,被験者Bでは二酸化炭素換気当量が運動開始から減少せず,運動開始時に換気血流不均衡が生じている可能性がある。そのため,肺への血液還流の増加が不十分であることが分時換気量と酸素摂取量の変化が類似しない要因であることが示唆された。