第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-KS-01-4] 明所における健常者の視覚的垂直認知と指標背景の関係について

松本紗耶, 西村由香 (北海道文教大学人間科学部理学療法学科)

Keywords:自覚的視性垂直位, 視覚情報, 重心動揺

【はじめに,目的】

垂直認知に関する指標にSVV(Subjective Visual Vertical:自覚的視性垂直位)とSPV(Subjective Postural Vertical:自覚的身体垂直認知)がある。Karnathらは,Pusher症候群の患者のSVV偏位は小さいがSPV偏位は大きいことから,治療アプローチとして視覚的垂直指標を提示する方法を提案した。SVV検査は通常暗所で実施するが理学療法場面は明所である。また,SVVは指標を囲むフレームの影響を受けることが知られており,傾斜したフレームは被験者の身体が傾いている様な錯覚を生むという報告もある。よって本研究では,明所において指標背景を傾斜させた際の垂直認知と重心動揺を測定することで視覚的垂直認知と姿勢が指標背景から受ける影響について調査することを目的とした。

【方法】

対象は健常成人20名(男性8名,女性12名,平均年齢21.5歳)とした。視覚的垂直認知の検査は,立位で,スクリーンに投影した指標(100×0.2cmの直線)が垂直であるか否かを「はい」「いいえ」で回答することとした。指標は時計回りを(+)とし,±0~5度の10角度に垂直の0度を2回加え計12回をランダムに提示した。指標の背景は白無地,室内風景(0度),同室内風景を時計回りへ5度および30度傾斜したもの(右5度,右30度)の4条件とした。各12回の施行結果から,視覚的垂直認知の①正答数(正確に垂直か否か判断した回数),②平均値(垂直と判断した角度の平均値),③絶対値(垂直と判断した角度の絶対値の平均),④偏位幅(垂直と判断した最大角度と最小角度の差)を算出した。重心動揺の測定は軌跡面積と総軌跡長の2項目とし,4条件の検査中に加え,景観察中の安静立位の計8回の測定を行った。視覚的垂直認知の各背景による違いはフリードマン検定,Wilcoxon符号順位和検定(Bonferroniの補正)を用いて,検査中の重心動揺と,背景観察中の重心動揺はそれぞれ繰り返しのない二元配置分散分析,Tukey-Kramer法を用いて比較した。有意水準は5%とした。

【結果】

視覚的垂直認知の正答数は,右5度(9.4),右30度(9.2)は無地(10.9)と0度(10.7)とそれぞれ有意差があった。平均値(度)は,右5度(0.56),右30度(0.63)は0度(-0.17),0度は無地(0.23)と有意差があった。絶対値(度)では右5度(0.85)は無地(0.34)と,右30度(1.08)は無地および0度(0.34)と,偏位幅(度)では右5度(2.05)と30度(3.05)は無地(0.85),0度(0.95)とそれぞれ有意差があった。4条件検査中の重心動揺結果に差はなく,右5度背景観察時の軌跡面積(69.5mm2)は無地(40.8)より大きく有意差があった。

【結論】

視覚視標の背景の傾斜は,重心動揺には影響せず,視覚的垂直認知を低下させた。よって,明所における健常者の視覚的垂直認知は,立位での固有感覚情報よりも視覚情報の影響を受けたことが示唆された。