[P-KS-03-1] ラットの開放創に対する機械的伸張刺激による表皮被覆率とVEGFおよびα-SMAの変化
Keywords:機械的伸張刺激, 創傷治癒, mRNA
【はじめに,目的】機械的刺激は,組織のリモデリングを目的とした理学療法の実施において,運動による荷重刺激や徒手的な伸張刺激などに応用されている。一方,皮膚組織に対する機械的刺激は,シグナル伝達に影響を与え血管新生・細胞増殖を促すと考えられている。しかし,開放創の機械的伸張刺激による影響は,培養細胞やラットの生体外組織における検討が多く,生体内における影響は十分に検討されていない。本研究の目的は,ラットの開放創に機械的伸張刺激を与え,開放創の表皮被覆率の推移の観察とともに,血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor;VEGF)mRNAおよび平滑筋αアクチン(alpha-smooth muscle actin;α-SMA)の発現について比較検討することである。
【方法】18匹のWistar系雄性ラットの背部に2か所の開放創を作成し,左側を伸張側,右側を非伸長側とした。開放創の吻側を固定し,尾側方向に滑車と重錘を用いて50g重で伸張した。伸長刺激は創傷作成3日目より毎日行い,伸張時間は2分伸張・1分休止×5セットとした。表皮被覆率は開放創の画像を用いImage Jにて計測した。mRNAの発現量は,創傷作成3日後(Day 3),5日後(Day 5),9日後(Day 9)に開放創を含む皮膚組織を採取しリアルタイムPCR法による分析を行った。Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenaseを内部標準とし,⊿⊿Ct法を用いてVEGFaとα-SMAの遺伝子型であるActa2の相対値を算出した。統計処理はSPSSを用い,伸張側・非伸張側の表皮被覆率に対し対応のあるT検定を行い,リアルタイムPCRの結果に対し二元配置分散分析と多重比較検定を行った。
【結果】表皮被覆率はすべての期間の非伸張側・伸張側において有意差を認めなかった。VEGFaの発現量は,非伸張側との比較において伸張側Day 3は約4.0倍,伸張側Day 5は約13.2倍,伸張側Day 9は約0.6倍の値を示したがいずれも有意差を認めなかった。伸張期間の比較では,Day 3と比しDay 9は有意に低い値であった。Acta2の発現量は,非伸張側との比較において伸張側Day 3は約1.0倍,伸張側Day 5は約0.9倍,伸張側Day 9は約0.8倍の値を示したがいずれも有意差を認めなかった。
【結論】伸張による開放創の肉眼的な明らかな変化はなかった。またVEGFaはDay 3からDay 5までは増加傾向,Acta2はDay 5からDay 9までわずかに減少傾向であることが示された。皮膚組織に対する伸張刺激は,細胞増殖因子を増加させ,血管新生・神経成長・表皮細胞増殖・真皮細胞増殖といった皮膚成長に加え再生を促進する反応が示されている。本研究の結果から,強度や頻度を考慮した適切な伸張刺激は,創治癒を阻害することなく,創傷治癒を促進するVEGFを増加させ,肥厚性瘢痕の原因となるα-SMAの増加を抑制する治療的戦略の一助となることが示唆される。
【方法】18匹のWistar系雄性ラットの背部に2か所の開放創を作成し,左側を伸張側,右側を非伸長側とした。開放創の吻側を固定し,尾側方向に滑車と重錘を用いて50g重で伸張した。伸長刺激は創傷作成3日目より毎日行い,伸張時間は2分伸張・1分休止×5セットとした。表皮被覆率は開放創の画像を用いImage Jにて計測した。mRNAの発現量は,創傷作成3日後(Day 3),5日後(Day 5),9日後(Day 9)に開放創を含む皮膚組織を採取しリアルタイムPCR法による分析を行った。Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenaseを内部標準とし,⊿⊿Ct法を用いてVEGFaとα-SMAの遺伝子型であるActa2の相対値を算出した。統計処理はSPSSを用い,伸張側・非伸張側の表皮被覆率に対し対応のあるT検定を行い,リアルタイムPCRの結果に対し二元配置分散分析と多重比較検定を行った。
【結果】表皮被覆率はすべての期間の非伸張側・伸張側において有意差を認めなかった。VEGFaの発現量は,非伸張側との比較において伸張側Day 3は約4.0倍,伸張側Day 5は約13.2倍,伸張側Day 9は約0.6倍の値を示したがいずれも有意差を認めなかった。伸張期間の比較では,Day 3と比しDay 9は有意に低い値であった。Acta2の発現量は,非伸張側との比較において伸張側Day 3は約1.0倍,伸張側Day 5は約0.9倍,伸張側Day 9は約0.8倍の値を示したがいずれも有意差を認めなかった。
【結論】伸張による開放創の肉眼的な明らかな変化はなかった。またVEGFaはDay 3からDay 5までは増加傾向,Acta2はDay 5からDay 9までわずかに減少傾向であることが示された。皮膚組織に対する伸張刺激は,細胞増殖因子を増加させ,血管新生・神経成長・表皮細胞増殖・真皮細胞増殖といった皮膚成長に加え再生を促進する反応が示されている。本研究の結果から,強度や頻度を考慮した適切な伸張刺激は,創治癒を阻害することなく,創傷治癒を促進するVEGFを増加させ,肥厚性瘢痕の原因となるα-SMAの増加を抑制する治療的戦略の一助となることが示唆される。