[P-KS-03-2] ラット膝関節不動モデルに対する機械的刺激が膝蓋下脂肪体に及ぼす影響
Keywords:拘縮, 膝蓋下脂肪体, 振動刺激
【はじめに,目的】
関節拘縮は臨床で頻繁に遭遇し,日常生活活動の阻害因子となり,また生活の質の低下につながる。関節拘縮の予防,治療は理学療法士の責務であるといっても過言ではない。関節拘縮における病理組織学的観察を行った先行研究では,脂肪体の萎縮,線維増生,うっ血を認めている。関節における脂肪体の役割として関節周辺組織の保護,また脂肪体の柔軟性により関節運動を担保しているとされている。関節拘縮予防や治療の目的で,脂肪体に対しマッサージやストレッチといったように機械的刺激を加える手技が散見されるが,その変化について組織学的検討を行ったものはない。そこで今回,外固定中の膝蓋下脂肪体に機械的刺激として振動刺激を加え,関節拘縮の予防効果を組織学的に観察,検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は9週齢のWistar系雄ラット14匹(225~247g)を用い,それらを無作為に正常コントロール群(以下,正常群)(n=5),拘縮作成のみ行う群(以下,C群)(n=5),拘縮期間中に振動刺激を行う振動刺激群(以下,V群)(n=4),に分けた。正常群はケージ内で1匹ずつ個別に飼育し,2週間通常飼育を行った。C群は右後肢をギプスによる擦傷予防するため,予め膝関節中心に後肢全体をガーゼで覆い,股関節最大伸展位,膝関節最大屈曲位,足関節最大底屈位の状態で骨盤帯から足関節遠位部までギプスで固定した。固定肢の足関節遠位部から足趾までは浮腫の有無を確認するために露出させた。V群はC群と同様に2週間のギプス固定を行い,振動刺激を加える膝蓋腱部分を露出させた。固定期間中に1日1回(7回/週)振動刺激を加えた。振動刺激は電動歯ブラシを用いた自家製装置を作成し,ギプス固定中の右後肢膝蓋腱へ刺激を加えた。振動刺激時間は1回につき15分間で施行した。実験期間終了後,実験動物を吸入麻酔の過剰投与により安楽死させ,右後肢膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節を通常手技にてHE染色標本を作製した。標本は光学顕微鏡下で観察し,病理組織学的検討を行った。観察部位は膝関節を正中断にし,関節前方の膝蓋下脂肪体を観察した。
【結果】
正常群では関節前方の膝蓋靭帯下で膝蓋下脂肪体が観察された。C群では膝蓋下脂肪体における脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められた。V群では脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められたが,C群に比してそれらの変化は軽微であった。
【結論】
ギプス固定による2週間の関節不動によって膝蓋下脂肪体には脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められ,先行研究と同様の変化が観察された。関節固定中に振動刺激を加えることによって膝蓋下脂肪体の変化を軽減させることが示唆された。
関節拘縮は臨床で頻繁に遭遇し,日常生活活動の阻害因子となり,また生活の質の低下につながる。関節拘縮の予防,治療は理学療法士の責務であるといっても過言ではない。関節拘縮における病理組織学的観察を行った先行研究では,脂肪体の萎縮,線維増生,うっ血を認めている。関節における脂肪体の役割として関節周辺組織の保護,また脂肪体の柔軟性により関節運動を担保しているとされている。関節拘縮予防や治療の目的で,脂肪体に対しマッサージやストレッチといったように機械的刺激を加える手技が散見されるが,その変化について組織学的検討を行ったものはない。そこで今回,外固定中の膝蓋下脂肪体に機械的刺激として振動刺激を加え,関節拘縮の予防効果を組織学的に観察,検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は9週齢のWistar系雄ラット14匹(225~247g)を用い,それらを無作為に正常コントロール群(以下,正常群)(n=5),拘縮作成のみ行う群(以下,C群)(n=5),拘縮期間中に振動刺激を行う振動刺激群(以下,V群)(n=4),に分けた。正常群はケージ内で1匹ずつ個別に飼育し,2週間通常飼育を行った。C群は右後肢をギプスによる擦傷予防するため,予め膝関節中心に後肢全体をガーゼで覆い,股関節最大伸展位,膝関節最大屈曲位,足関節最大底屈位の状態で骨盤帯から足関節遠位部までギプスで固定した。固定肢の足関節遠位部から足趾までは浮腫の有無を確認するために露出させた。V群はC群と同様に2週間のギプス固定を行い,振動刺激を加える膝蓋腱部分を露出させた。固定期間中に1日1回(7回/週)振動刺激を加えた。振動刺激は電動歯ブラシを用いた自家製装置を作成し,ギプス固定中の右後肢膝蓋腱へ刺激を加えた。振動刺激時間は1回につき15分間で施行した。実験期間終了後,実験動物を吸入麻酔の過剰投与により安楽死させ,右後肢膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節を通常手技にてHE染色標本を作製した。標本は光学顕微鏡下で観察し,病理組織学的検討を行った。観察部位は膝関節を正中断にし,関節前方の膝蓋下脂肪体を観察した。
【結果】
正常群では関節前方の膝蓋靭帯下で膝蓋下脂肪体が観察された。C群では膝蓋下脂肪体における脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められた。V群では脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められたが,C群に比してそれらの変化は軽微であった。
【結論】
ギプス固定による2週間の関節不動によって膝蓋下脂肪体には脂肪細胞の大小不同,線維増生が認められ,先行研究と同様の変化が観察された。関節固定中に振動刺激を加えることによって膝蓋下脂肪体の変化を軽減させることが示唆された。