[P-KS-03-3] ラット膝関節拘縮モデルにおける坐骨神経周囲組織の病理組織学的変化
抗IV型コラーゲン抗体を用いた免疫組織化学的検討
Keywords:拘縮, 神経周膜, 免疫組織化学
【はじめに,目的】
関節可動域制限の原因の一つとして神経系の可動性や柔軟性の低下が関与していることが考えられており,我々は先行研究(吉田ら,2009)においてラット膝関節拘縮モデルの坐骨神経における神経周膜の肥厚および神経束と神経周膜の密着(神経周囲腔の消失)を報告し,これが神経の滑走を妨げている可能性を示した。さらに前回大会で同部位に対し抗ラミニン抗体を用いた免疫染色を行い,関節の不動や関節可動域運動(ROM-ex)により神経周膜に分子レベルで変化が生じていることを報告した。しかし細胞接着にはラミニン以外の因子の関与も考えられるがまだ明らかにはなっていない。本研究の目的は抗IV型コラーゲン抗体を用いて拘縮時の坐骨神経周囲組織の変化およびROM-exがそれに与える影響について免疫組織化学的に検討することである。
【方法】
対象には9週齢のWistar系雄ラットを用い,それを無作為にコントロール群,拘縮群,運動群の3群に分けた。拘縮群および運動群は麻酔後,右膝関節をキルシュナー鋼線と長ねじを使用した創外固定を用いて膝関節屈曲120°にて不動化した。この際,股関節,足関節に影響が及ばないように留意し,ラットはケージ内を自由に移動,水,餌は自由に摂取可能とした。拘縮群は不動化を2週間継続した。運動群は不動化処置の翌日よりイソフルランを用いた吸入麻酔による麻酔下で膝関節に対し2週間ROM-exを行い,ROM-ex時以外の期間は不動化を維持した。ROM-exは膝関節屈曲位を5秒間保持し,次にバネばかりを使用して右後肢を坐骨神経に伸張ストレスが加わるように体幹より120°腹頭側方向へ約1Nで牽引し5秒間保持する運動を3分間繰り返した。ROM-exは1日1回,週6回,2週間施行した。コントロール群は2週間の自由飼育とした。全群ともに実験期間終了後にジエチルエーテルにて安楽死させ,右後肢を股関節より離断した。採取した下肢を組織固定,脱灰を行った後に大腿骨の長軸方向に平行な面で切断し,中和後にパラフィン包埋して組織標本を作製した。作製したパラフィンブロックを約3μmにて薄切し,一般染色としてヘマトキシリン・エオジン染色を行い,それに加えて免疫染色も行った。免疫染色では一次抗体には抗IV型コラーゲン抗体を用い,観察部位は坐骨神経周囲組織の長軸方向に平行な断面とし,光学顕微鏡下に病理組織学的に観察した。
【結果】
免疫組織化学的所見では,全群全例で神経周膜と神経束の接着部位においてIV型コラーゲン陽性であり,その染色態度は群間で明らかな差はなかった。
【結論】
IV型コラーゲンはラミニンと同様に基底膜構成成分の一つであるが,その染色態度は以前に報告したラミニンのものとは異なっていた。関節の不動やROM-exは神経周膜のIV型コラーゲンには影響を及ぼさない可能性が示唆された。
関節可動域制限の原因の一つとして神経系の可動性や柔軟性の低下が関与していることが考えられており,我々は先行研究(吉田ら,2009)においてラット膝関節拘縮モデルの坐骨神経における神経周膜の肥厚および神経束と神経周膜の密着(神経周囲腔の消失)を報告し,これが神経の滑走を妨げている可能性を示した。さらに前回大会で同部位に対し抗ラミニン抗体を用いた免疫染色を行い,関節の不動や関節可動域運動(ROM-ex)により神経周膜に分子レベルで変化が生じていることを報告した。しかし細胞接着にはラミニン以外の因子の関与も考えられるがまだ明らかにはなっていない。本研究の目的は抗IV型コラーゲン抗体を用いて拘縮時の坐骨神経周囲組織の変化およびROM-exがそれに与える影響について免疫組織化学的に検討することである。
【方法】
対象には9週齢のWistar系雄ラットを用い,それを無作為にコントロール群,拘縮群,運動群の3群に分けた。拘縮群および運動群は麻酔後,右膝関節をキルシュナー鋼線と長ねじを使用した創外固定を用いて膝関節屈曲120°にて不動化した。この際,股関節,足関節に影響が及ばないように留意し,ラットはケージ内を自由に移動,水,餌は自由に摂取可能とした。拘縮群は不動化を2週間継続した。運動群は不動化処置の翌日よりイソフルランを用いた吸入麻酔による麻酔下で膝関節に対し2週間ROM-exを行い,ROM-ex時以外の期間は不動化を維持した。ROM-exは膝関節屈曲位を5秒間保持し,次にバネばかりを使用して右後肢を坐骨神経に伸張ストレスが加わるように体幹より120°腹頭側方向へ約1Nで牽引し5秒間保持する運動を3分間繰り返した。ROM-exは1日1回,週6回,2週間施行した。コントロール群は2週間の自由飼育とした。全群ともに実験期間終了後にジエチルエーテルにて安楽死させ,右後肢を股関節より離断した。採取した下肢を組織固定,脱灰を行った後に大腿骨の長軸方向に平行な面で切断し,中和後にパラフィン包埋して組織標本を作製した。作製したパラフィンブロックを約3μmにて薄切し,一般染色としてヘマトキシリン・エオジン染色を行い,それに加えて免疫染色も行った。免疫染色では一次抗体には抗IV型コラーゲン抗体を用い,観察部位は坐骨神経周囲組織の長軸方向に平行な断面とし,光学顕微鏡下に病理組織学的に観察した。
【結果】
免疫組織化学的所見では,全群全例で神経周膜と神経束の接着部位においてIV型コラーゲン陽性であり,その染色態度は群間で明らかな差はなかった。
【結論】
IV型コラーゲンはラミニンと同様に基底膜構成成分の一つであるが,その染色態度は以前に報告したラミニンのものとは異なっていた。関節の不動やROM-exは神経周膜のIV型コラーゲンには影響を及ぼさない可能性が示唆された。