[P-KS-03-4] 終末糖化産物(AGEs)は固定に誘導される関節拘縮を悪化させる
Keywords:終末糖化産物, 関節拘縮, 固定
【目的】終末糖化産物(AGEs)は,糖尿病や加齢により増加し,種々の病態発生に関与するほか,コラーゲン架橋を形成して物理的性質を変化させる。コラーゲン架橋は関節拘縮形成に重要な役割を果たすと考えられ,ラット関節固定後の関節包で,AGEsの一つであるペントシジンが増加する(Lee, et al., 2010)。しかし,関節組織でのAGEs蓄積が,拘縮の発症・進行に関与するかを実際に検証した報告は無い。本研究は,糖化が生じたラット膝関節を固定することで,AGEsが関節拘縮の発症・進行に果たす役割について検討することを目的とした。
【方法】8週齢雄性ラットを合計16匹使用した。ラットの膝関節に糖化を誘導する目的で,100 μlの2.0 M D-(-)-Ribose(リボース群:8匹)を,対照として同量の生理食塩水(生食群:8匹)を両膝関節内に2回/週投与した。8週間(16回投与)後,6匹(各群3匹)のラットの両膝から後方関節包を採取し,高速液体クロマトグラフによるペントシジン量の測定を行った。10匹(各群5匹)のラットには,右膝関節を140°屈曲位で3週間創外固定した。その後,膝関節伸展方向に14.6 N/mmのモーメントを加えた状態で,膝関節可動域(ROM)を測定した。筋性拘縮と関節性拘縮を区別するため,測定は膝屈筋群切断前後で行った。その後,関節組織を4%パラフォルムアルデヒドで固定,脱灰し,矢状断パラフィン切片を作製した。HE染色及びアルデヒドフクシンマッソンゴールドナー染色を行い,後方関節包を組織学的・形態定量学的に解析した。さらに,切片から後方関節包を採取し,total RNAを抽出,逆転写反応によりcDNAを作製し,線維化関連遺伝子であるトランスフォーミング増殖因子(TGF-β1),I型コラーゲン(COL1A1),III型コラーゲン(COL3A1)のmRNAをリアルタイムPCRにて測定した。
【結果】ペントシジンは,リボース群で生食群の9.2倍に増加した(P<0.05)。筋切断前ROM(筋性要因と関節性要因を含む)は,非固定側及び固定側ともにリボース群と生食群の間に差がみられなかった。一方,筋切断後ROM(関節性要因)は,非固定側では両群間に差がみられなかったのに対し,固定側ではリボース群で生食群よりもROMが有意に減少した。二元配置分散分析では,関節固定とリボース投与に交互作用(相乗効果)が認められた。後方関節包は,固定側で非固定側よりも滑膜長の短縮および関節包の肥厚が認められたが,リボース群と生食群の間に差はみられなかった。TGF-β1 mRNA発現は,リボース投与や固定により変化しなかった。COL1A1 mRNAおよびCOL3A1 mRNAは,リボース群の固定側で非固定側よりも有意に増加(それぞれ1.9倍,1.7倍)した。固定側同士の比較では,COL3A1 mRNAで生食群よりリボース群で有意に増加(1.5倍)した。
【結論】関節組織のAGEs蓄積は,関節拘縮を発症させなかったが,関節不動により,コラーゲン遺伝子発現促進を介して拘縮を増悪させる可能性が示された。
【方法】8週齢雄性ラットを合計16匹使用した。ラットの膝関節に糖化を誘導する目的で,100 μlの2.0 M D-(-)-Ribose(リボース群:8匹)を,対照として同量の生理食塩水(生食群:8匹)を両膝関節内に2回/週投与した。8週間(16回投与)後,6匹(各群3匹)のラットの両膝から後方関節包を採取し,高速液体クロマトグラフによるペントシジン量の測定を行った。10匹(各群5匹)のラットには,右膝関節を140°屈曲位で3週間創外固定した。その後,膝関節伸展方向に14.6 N/mmのモーメントを加えた状態で,膝関節可動域(ROM)を測定した。筋性拘縮と関節性拘縮を区別するため,測定は膝屈筋群切断前後で行った。その後,関節組織を4%パラフォルムアルデヒドで固定,脱灰し,矢状断パラフィン切片を作製した。HE染色及びアルデヒドフクシンマッソンゴールドナー染色を行い,後方関節包を組織学的・形態定量学的に解析した。さらに,切片から後方関節包を採取し,total RNAを抽出,逆転写反応によりcDNAを作製し,線維化関連遺伝子であるトランスフォーミング増殖因子(TGF-β1),I型コラーゲン(COL1A1),III型コラーゲン(COL3A1)のmRNAをリアルタイムPCRにて測定した。
【結果】ペントシジンは,リボース群で生食群の9.2倍に増加した(P<0.05)。筋切断前ROM(筋性要因と関節性要因を含む)は,非固定側及び固定側ともにリボース群と生食群の間に差がみられなかった。一方,筋切断後ROM(関節性要因)は,非固定側では両群間に差がみられなかったのに対し,固定側ではリボース群で生食群よりもROMが有意に減少した。二元配置分散分析では,関節固定とリボース投与に交互作用(相乗効果)が認められた。後方関節包は,固定側で非固定側よりも滑膜長の短縮および関節包の肥厚が認められたが,リボース群と生食群の間に差はみられなかった。TGF-β1 mRNA発現は,リボース投与や固定により変化しなかった。COL1A1 mRNAおよびCOL3A1 mRNAは,リボース群の固定側で非固定側よりも有意に増加(それぞれ1.9倍,1.7倍)した。固定側同士の比較では,COL3A1 mRNAで生食群よりリボース群で有意に増加(1.5倍)した。
【結論】関節組織のAGEs蓄積は,関節拘縮を発症させなかったが,関節不動により,コラーゲン遺伝子発現促進を介して拘縮を増悪させる可能性が示された。