第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P04

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-04-1] 踵腓靭帯の走行角度のバリエーションに関する肉眼解剖学的研究

吉塚久記1,2, 柴田健太郎3, 岩城彰4, 浅見豊子5, 倉岡晃夫3 (1.専門学校柳川リハビリテーション学院, 2.佐賀大学大学院医学系研究科, 3.佐賀大学医学部解剖学・人類学分野, 4.けいめい記念病院整形外科, 5.佐賀大学医学部附属病院リハビリテーション科)

Keywords:肉眼解剖学, 踵腓靭帯, 足部

【はじめに,目的】

足関節内反捻挫に伴う外側靭帯損傷は最も一般的なスポーツ損傷であり,再発率は73%(Yeung, et al., 1994),受傷後の慢性的な不安定性残存は72.6%(Braun, 1999)とされる。足部外側靭帯の中で,踵腓靭帯(CFL)は一般的に背屈で緊張し,底屈で弛緩するとされるが,この逆のパターンや緊張状態の変化がみられないケースも存在する(Sarrafian, et al., 2011)。このように,CFLの緊張をもたらす肢位に違いがあることは,形態的な個体差が存在する可能性を示唆する。しかし,CFLの長さや幅・角度の平均値に関しては複数の報告があるものの,走行角度のバリエーション分類は1961年にRuthが報告して以降みられず,その報告も75肢中45肢が術中所見である。また,左右差や性差に関する検討はほとんど成されていない。

そこで,本研究では解剖体を対象としてCFLの走行角度を分析し,その解剖学的バリエーション及び性差と左右差を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は,解剖実習体26体52肢の足部とした。下腿筋膜・アキレス腱・上伸筋支帯・下伸筋支帯・上腓骨筋支帯・下腓骨筋支帯を順次切離した後,外果後方に位置する長腓骨筋腱と短腓骨筋腱を切離し,注意深くCFLを同定した。CFLの全体を剖出した後,距腿関節0度かつ距骨下関節0度の肢位で,Goniometerを用いて腓骨長軸とCFLの成す角度を計測した。結果はRuthの報告を参考に,0°,5°,10~45°,50~70°,80~90°のクラスに分類した。左右差と性差の検討は,Shapiro-Wilk検定とLevene検定にて各群の正規性と等分散性を確認後,左右差には2標本t検定,性差にはMann-Whitneyの検定を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】

全52サンプルの平均角度は26.7±13.5°であった。クラス別の結果は,0°:1例(1.9%),5°:2例(3.8%),10~45°:46例(88.5%),50~70°:3例(5.8%)80~90°:0例(0%)となった。また,左右差・性差に関しては,右側:25.6±13.6°,左側:27.9±13.6°,男性:27.5±14.0°,女性:26.0±13.3°であり,いずれも有意差を認めなかった。さらに同一個体における左右のCFLの走行角度の一致率(左右の角度差が±10%の範囲内)は38.5%であった。


【結論】

本研究では,CFLの走行角度に関する解剖学的なバリエーションを検証した。Ruthの報告と同様に,10~45°の走行角度を有するCFLが多数を占めたが,この範囲から外れたケースも少なからず存在することが明らかとなった。統計学的に有意な左右差や性差は認めなかったが,左右一致率は38.5%であり,同一個体内の左右差についての新たな知見も得られた。これらの結果は,足部外側靭帯損傷の更なる理解に有用と考えられる。