第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P05

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-05-1] 高強度パルス照射型直線偏光近赤外線が局所循環動態に与える影響

健常者の無作為化比較対象試験による基礎的研究

竹内伸行1,2, 臼田滋3 (1.高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.本庄総合病院リハビリテーション科, 3.群馬大学大学院保健学研究科)

Keywords:直線偏光近赤外線, 循環動態, 健常者

【はじめに,目的】直線偏光近赤外線(Linear polarized near-infrared rays;LPNR)治療器は広く使われており,より深達性を高めた高強度パルス照射型LPNR(High intensity pulse irradiation with LPNR;Hi-LPNR)治療器も臨床応用されている。LPNRは創傷治療にも用いられており,その機序に循環動態の変化がある。Hi-LPNRも同様の効果が期待できるが報告は見当たらない。本研究はHi-LPNR照射が局所循環動態に与える影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】対象は健常成人20人(23.8±4.7歳,男13人,女7人)の一側下肢で,照射群と対照群(各10人)に無作為に割り付けた。照射群は腓腹筋筋腱移行部起始側にHi-LPNRを照射(Superlizer PX t1[東京医研],8W,5分間,3m秒on-7m秒offのパルス照射,口径20mm)した。介入前後に酸化Hb量(O-Hb),還元Hb量(D-Hb),全Hb量(T-Hb),組織酸素飽和度(StO2)を近赤外分光法により測定した(BOM-L1TRW,OMEGAWAVE社を使用)。送光用プローブと受光用ディテクター間を1.5cm,3.0cmとし,皮膚表層から深部1.5cmまで(浅層)と3.0cmまで(全層)の循環動態を測定した。浅層は実測値で解析し,全層値から浅層値を引いた値を深層として解析した。全て介入前後の変化量を求めて群間比較を行った(独立2群t検定,有意水準5%)。

【結果】各指標の変化量を照射群/対照群で示した。浅層O-Hbは0.02±0.64/0.33±0.91[ml/min/100g],浅層D-Hbは-0.25±0.27/-0.12±0.25[ml/min/100g],浅層T-Hbは-0.16±0.90/0.06±0.75[ml/min/100g],浅層StO2は0.49±0.93/0.68±0.47[%]であった。深層O-Hbは-0.13±1.44/-0.01±0.55[ml/min/100g],深層D-Hbは-0.47±0.70/0.27±0.35[ml/min/100g],深層T-Hbは-0.59±2.09/0.26±0.83[ml/min/100g],深層StO2は1.71±1.72/-0.91±0.83で,照射群の深層D-Hbが有意な低値(p=0.008),照射群の深層StO2が有意な高値(p=0.0004)を示した。

【結論】LPNRの先行研究では組織温や血流上昇,血管拡張等が示唆され(木下ら2004,高城ら2004),Hi-LPNRも同様の作用が期待できる。全Hb量は血流量の変化を反映し,先行研究でも血流量増加が報告されている。しかし本研究では浅層,深層共にT-Hbは変化せず,血流量に変化はなかった。また局所加温による代謝亢進でD-Hb増加を認めた報告(北澤ら1999)があるが,本研究では照射群の深層D-Hbは減少し,浅層は変化しなかった。継続加温は防御反応として皮膚温や血流量の低下を生じる(北澤1999)。今回の照射時間は5分だが,Hi-LPNRの高い温熱作用で局所の防御反応が生じ代謝が低下,D-Hbが減少した可能性が考えられ,さらにHi-LPNRの高深達性が深層の循環動態に影響を与えたと示唆された。しかし対象者属性,使用機器,照射条件などが先行研究と本研究とは相違しており一概に結果を比較することは難しい。これらは先行研究と異なる結果を示した一因と示唆された。条件を統一した効果判定は今後の課題である。