[P-KS-11-4] knee-inにおける下肢筋活動の表面筋電図による検証
キーワード:筋電図, 筋活動量, 片脚立位
【はじめに,目的】
下肢疾患とマルアライメントの関係に対しては多くの報告があるが,特に膝が外反するknee-inはスポーツ疾患から退行変性まで見られる症状である。そこで我々は,片脚立位と藤井らの考案した動的トレンデレンブルグテスト(以下動的Tテスト)の筋活動を表面筋電図を用いて比較し,knee-inが下肢筋活動に及ぼす影響を検証した。
【方法】
下肢に既往のない健常な成人男性13名26肢(年齢21.0±1.0歳)を対象とし,片脚立位と動的Tテストの表面筋電図計測を行った。動的Tテストは片脚立位の状態から検査側の膝を30°屈曲させ立位が安定した状態で計測した。動的Tテストにて前額面上で上前腸骨棘と第2中足骨頭を結ぶ線を基線とし,基線に対して膝蓋骨中央が内側に位置するものをknee-in,外側に位置するものをknee-outと分類した。表面筋電図の記録はKISSEI COMTEC社製Vital RecorderIIにて大殿筋・中殿筋・前脛骨筋・腓骨筋・ヒラメ筋を計測した。双極誘導で導出しサンプリング周波数は1000Hzにて収集しBimtus videoを用いて解析を行った。計測は10秒間施行し3秒から6秒までの3秒間の積分値を抽出し,片脚立位の値を100%として動的Tテストの割合を算出し,knee-inとknee-outでの各筋の値を比較した。統計処理はPASW Statistics 17.0を用いMann-whitney検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
knee-inは17肢,knee-outは9肢となった。各筋活動量は大殿筋(knee-in92.8±33.3%,knee-out75.0±21.1%),中殿筋(knee-in95.0±33.3%,knee-out76.0±29.5%),前脛骨筋(knee-in238.3±180.9%,knee-out142.8±92.6%),腓骨筋(knee-in116.4±39.7%,knee-out83.1±41.7%),ヒラメ筋(knee-in186.3±56.3%,knee-out128.2±26.3%)となった。大殿筋と中殿筋は有意差はないもののknee-inが大きい傾向にあった。前脛骨筋,腓骨筋,ヒラメ筋においては有意にknee-inが大きい値を示した(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果から,knee-inが下肢筋活動に影響を及ぼす事が示唆された。knee-inでは下肢の運動連鎖により股関節と足関節の構造的変化が起こり,膝関節が下肢荷重線から逸脱し関節での安定性が低下する。そのため制御は関節での安定性ではなく足関節戦略や股関節戦略が中心となるが,本研究では足関節周囲筋の活動が有意に大きかった事から,足関節戦略が強く働いたことが示唆された。今回は健常な成人男性を対象としたため足関節戦略が中心となったと考えられるが,今後は高齢者や上半身重心などを考慮した研究を進めていきたい。
下肢疾患とマルアライメントの関係に対しては多くの報告があるが,特に膝が外反するknee-inはスポーツ疾患から退行変性まで見られる症状である。そこで我々は,片脚立位と藤井らの考案した動的トレンデレンブルグテスト(以下動的Tテスト)の筋活動を表面筋電図を用いて比較し,knee-inが下肢筋活動に及ぼす影響を検証した。
【方法】
下肢に既往のない健常な成人男性13名26肢(年齢21.0±1.0歳)を対象とし,片脚立位と動的Tテストの表面筋電図計測を行った。動的Tテストは片脚立位の状態から検査側の膝を30°屈曲させ立位が安定した状態で計測した。動的Tテストにて前額面上で上前腸骨棘と第2中足骨頭を結ぶ線を基線とし,基線に対して膝蓋骨中央が内側に位置するものをknee-in,外側に位置するものをknee-outと分類した。表面筋電図の記録はKISSEI COMTEC社製Vital RecorderIIにて大殿筋・中殿筋・前脛骨筋・腓骨筋・ヒラメ筋を計測した。双極誘導で導出しサンプリング周波数は1000Hzにて収集しBimtus videoを用いて解析を行った。計測は10秒間施行し3秒から6秒までの3秒間の積分値を抽出し,片脚立位の値を100%として動的Tテストの割合を算出し,knee-inとknee-outでの各筋の値を比較した。統計処理はPASW Statistics 17.0を用いMann-whitney検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
knee-inは17肢,knee-outは9肢となった。各筋活動量は大殿筋(knee-in92.8±33.3%,knee-out75.0±21.1%),中殿筋(knee-in95.0±33.3%,knee-out76.0±29.5%),前脛骨筋(knee-in238.3±180.9%,knee-out142.8±92.6%),腓骨筋(knee-in116.4±39.7%,knee-out83.1±41.7%),ヒラメ筋(knee-in186.3±56.3%,knee-out128.2±26.3%)となった。大殿筋と中殿筋は有意差はないもののknee-inが大きい傾向にあった。前脛骨筋,腓骨筋,ヒラメ筋においては有意にknee-inが大きい値を示した(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果から,knee-inが下肢筋活動に影響を及ぼす事が示唆された。knee-inでは下肢の運動連鎖により股関節と足関節の構造的変化が起こり,膝関節が下肢荷重線から逸脱し関節での安定性が低下する。そのため制御は関節での安定性ではなく足関節戦略や股関節戦略が中心となるが,本研究では足関節周囲筋の活動が有意に大きかった事から,足関節戦略が強く働いたことが示唆された。今回は健常な成人男性を対象としたため足関節戦略が中心となったと考えられるが,今後は高齢者や上半身重心などを考慮した研究を進めていきたい。