[P-KS-13-1] Sit-to-Walk taskへの二次的課題付加による影響の検討
キーワード:sit-to-walk task, fluidity, 二重課題
【はじめに,目的】
椅子座位姿勢からの歩行開始動作であるSit-to-Walk task(STW)は,動作の流動性(fluidity)に着目した基礎的な研究や脳卒中患者等を対象とした研究が報告されている。しかしながら,日常生活で頻繁にあるSTW時に物を持つなどmanual taskが付加される状況を想定した分析はない。そこで本研究では,STW実施時に水の入ったコップを持つというmanual taskを二次的課題として付加したときの影響を,身体重心(center of gravity;COG)と圧中心(center of pressure;COP)の関係,fluidityの観点から明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は健常若年男性12人(23.8±2.2歳)とした。課題動作は通常のSTW(STW-S)と,水の入ったコップを持ちながらSTWを行う(STW-D)の2条件とした。共通条件として,椅子の座面高は下腿長,動作は最大速度,目標地点は正面前方2mとした。STW-Sでは両手は胸の前で組んでおくこととした。STW-Dでは右手に上端1cmまで水の入ったコップを把持し,左手は胸に当てておくこととした。測定には三次元動作解析装置(ローカス3D MA-3000;アニマ社製),シート式下肢加重計(ウォークway MW-1000;アニマ社製)を同期させ,100Hzにて記録した。測定項目は動作開始時に逆応答現象として観察されるCOPの最大後方移動距離,動作中に乖離したCOPとCOGの最大前後距離,体幹前傾角度,体幹前傾相で生じる前方への運動量のpeak値,離殿のタイミングと同時期で,前方への運動量が下がりきったbottom値,peak値に対するbottom値の割合で,値が大きいほど高いfluidityを示すFluidity Index(FI)とした。これらについてSTW-SとSTW-D間で対応のあるt検定を行った。統計処理にはSPSS Statistics 22を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
COPの最大後方移動距離はそれぞれ13.6±5.2 cm,13.0±5.0 cm(STW-S,STW-D,以下同じ)で有意差は認められなかった。COPとCOGの最大前後距離は21.6±7.8 cm,17.3±5.8 cmで有意差を認めた(p<0.001)。体幹前傾角度は45.8±8.2度,34.9±4.2度で有意差を認めた(p<0.001)。peak値は42.7±8.0 kg・m/s,33.9±9.7 kg・m/sで有意差を認めた(p<0.001)。bottom値は40.4±7.6 kg・m/s,30.7±9.3 kg・m/sで有意差を認めた(p<0.001)。FIは96.8±3.0%,90.2±4.2%で有意差を認めた(p<0.001)。
【結論】
二次的課題の付加の影響として,先行随伴性姿勢調節のひとつである逆応答現象を示すCOPの最大後方移動距離自体に変化はみられなかったが,身体の前方への回転モーメントを生み出すCOPとCOGの前後の乖離は小さくなった。前方への運動量およびfluidityの低下からも今回の二次的課題付加では前進性よりも安定性を重視していることが明らかとなった。今後は運動障害を有する患者や高齢者を対象とした検討により,評価,介入の手がかりとなると考えられる。
椅子座位姿勢からの歩行開始動作であるSit-to-Walk task(STW)は,動作の流動性(fluidity)に着目した基礎的な研究や脳卒中患者等を対象とした研究が報告されている。しかしながら,日常生活で頻繁にあるSTW時に物を持つなどmanual taskが付加される状況を想定した分析はない。そこで本研究では,STW実施時に水の入ったコップを持つというmanual taskを二次的課題として付加したときの影響を,身体重心(center of gravity;COG)と圧中心(center of pressure;COP)の関係,fluidityの観点から明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象者は健常若年男性12人(23.8±2.2歳)とした。課題動作は通常のSTW(STW-S)と,水の入ったコップを持ちながらSTWを行う(STW-D)の2条件とした。共通条件として,椅子の座面高は下腿長,動作は最大速度,目標地点は正面前方2mとした。STW-Sでは両手は胸の前で組んでおくこととした。STW-Dでは右手に上端1cmまで水の入ったコップを把持し,左手は胸に当てておくこととした。測定には三次元動作解析装置(ローカス3D MA-3000;アニマ社製),シート式下肢加重計(ウォークway MW-1000;アニマ社製)を同期させ,100Hzにて記録した。測定項目は動作開始時に逆応答現象として観察されるCOPの最大後方移動距離,動作中に乖離したCOPとCOGの最大前後距離,体幹前傾角度,体幹前傾相で生じる前方への運動量のpeak値,離殿のタイミングと同時期で,前方への運動量が下がりきったbottom値,peak値に対するbottom値の割合で,値が大きいほど高いfluidityを示すFluidity Index(FI)とした。これらについてSTW-SとSTW-D間で対応のあるt検定を行った。統計処理にはSPSS Statistics 22を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
COPの最大後方移動距離はそれぞれ13.6±5.2 cm,13.0±5.0 cm(STW-S,STW-D,以下同じ)で有意差は認められなかった。COPとCOGの最大前後距離は21.6±7.8 cm,17.3±5.8 cmで有意差を認めた(p<0.001)。体幹前傾角度は45.8±8.2度,34.9±4.2度で有意差を認めた(p<0.001)。peak値は42.7±8.0 kg・m/s,33.9±9.7 kg・m/sで有意差を認めた(p<0.001)。bottom値は40.4±7.6 kg・m/s,30.7±9.3 kg・m/sで有意差を認めた(p<0.001)。FIは96.8±3.0%,90.2±4.2%で有意差を認めた(p<0.001)。
【結論】
二次的課題の付加の影響として,先行随伴性姿勢調節のひとつである逆応答現象を示すCOPの最大後方移動距離自体に変化はみられなかったが,身体の前方への回転モーメントを生み出すCOPとCOGの前後の乖離は小さくなった。前方への運動量およびfluidityの低下からも今回の二次的課題付加では前進性よりも安定性を重視していることが明らかとなった。今後は運動障害を有する患者や高齢者を対象とした検討により,評価,介入の手がかりとなると考えられる。