[P-KS-13-3] 頭部と体幹部の立ち直り角度からみた高齢者の後方ステップ反応特性
Keywords:高齢者, ステップ反応, 立ち直り反応
【はじめに,目的】
高齢者の転倒を防止する,または転倒による外傷を軽微にする重要な姿勢反応として,ステップ反応が挙げられる。外乱に反応して適切にステップを出現させるためには,ステップ反応時の頭部や体幹部の空間上の位置調整が重要と考える。本研究の目的は,外乱負荷時のステップ反応における頭部と体幹部の空間上の位置変化から,高齢者の後方ステップ反応の特性を明らかにすることである。
【方法】
対象は地域在住の健常高齢者20名,対照群として健常若年者10名を選定した。ステップ反応における頭部と体幹部の位置計測には,3次元動作解析装置を用い,反射マーカを被験者の体表に貼布し標点とした。被験者は前列2枚,後列2枚に設置された床反力計の前列上で立位姿勢を保持した。続いて,随意的に重心を後方へ移動し,寄りかかった検者の手掌を急激に離すことで外乱を加え,後方へのステップ反応を誘発した。その際,検者の手背に小型の加速度計を取り付け,外乱が加わった時期を同定した。データのサンプリング周波数はカメラ200Hz,床反力計・加速度計1kHzとし,PCへの取込み時にそれぞれのデータを同期した。加速度値およびステップ足の床反力値より,外乱負荷から足部が離地した時期を同定し,Perturbation-stepping(PS)期と定義した。加えて,後方設置の床反力値より,ステップ足が着地する直前の時期を同定し,Single-stance(SS)期と定義した。動作解析ソフトを用いて,標点データから頭部(頸椎含む)と体幹部(胸郭,腹部)のCOM位置を算出し,PS期およびSS期における矢状面上の位置変化を分析した。また,床からの垂直線に対し,頭部・体幹部COMがなす最大角度を立ち直り角度として算出し,加えて,体幹部に対する頭部の屈曲角度を算出した。統計処理は,PS・SS期における頭部・体幹部の立ち直り角度,体幹部に対する頭部の屈曲角度について,welchのt検定を用いて高齢群と若年群間で比較した。加えて,Pearsonの積率相関係数を用いて,頭部と体幹部の立ち直り角度の相関関係を分析した。
【結果】
t検定の結果,PS期における体幹部の立ち直り角度が高齢群で有意に低値を示した(p<0.05)。加えて,相関分析の結果,高齢群ではPS期とSS期において,頭部の立ち直り角度と体幹部の立ち直り角度との間に有意な正の相関関係を認めた(PS期:r=0.68,SS期:r=0.53,p<0.01)。なお,若年群では有意な相関関係は認めなかった。
【結論】
本研究の結果,若年群との比較から高齢群では,外乱負荷からステップ足が離地(ステップ出現)する期間における体幹部の立ち直り機能が低下している可能性が示された。加えて,相関分析の結果から,高齢群では体幹部と頭部の空間上の傾き角度の類似性が示され,体幹部に対する頭部の分離(立ち直り)が困難であることが示唆された。
高齢者の転倒を防止する,または転倒による外傷を軽微にする重要な姿勢反応として,ステップ反応が挙げられる。外乱に反応して適切にステップを出現させるためには,ステップ反応時の頭部や体幹部の空間上の位置調整が重要と考える。本研究の目的は,外乱負荷時のステップ反応における頭部と体幹部の空間上の位置変化から,高齢者の後方ステップ反応の特性を明らかにすることである。
【方法】
対象は地域在住の健常高齢者20名,対照群として健常若年者10名を選定した。ステップ反応における頭部と体幹部の位置計測には,3次元動作解析装置を用い,反射マーカを被験者の体表に貼布し標点とした。被験者は前列2枚,後列2枚に設置された床反力計の前列上で立位姿勢を保持した。続いて,随意的に重心を後方へ移動し,寄りかかった検者の手掌を急激に離すことで外乱を加え,後方へのステップ反応を誘発した。その際,検者の手背に小型の加速度計を取り付け,外乱が加わった時期を同定した。データのサンプリング周波数はカメラ200Hz,床反力計・加速度計1kHzとし,PCへの取込み時にそれぞれのデータを同期した。加速度値およびステップ足の床反力値より,外乱負荷から足部が離地した時期を同定し,Perturbation-stepping(PS)期と定義した。加えて,後方設置の床反力値より,ステップ足が着地する直前の時期を同定し,Single-stance(SS)期と定義した。動作解析ソフトを用いて,標点データから頭部(頸椎含む)と体幹部(胸郭,腹部)のCOM位置を算出し,PS期およびSS期における矢状面上の位置変化を分析した。また,床からの垂直線に対し,頭部・体幹部COMがなす最大角度を立ち直り角度として算出し,加えて,体幹部に対する頭部の屈曲角度を算出した。統計処理は,PS・SS期における頭部・体幹部の立ち直り角度,体幹部に対する頭部の屈曲角度について,welchのt検定を用いて高齢群と若年群間で比較した。加えて,Pearsonの積率相関係数を用いて,頭部と体幹部の立ち直り角度の相関関係を分析した。
【結果】
t検定の結果,PS期における体幹部の立ち直り角度が高齢群で有意に低値を示した(p<0.05)。加えて,相関分析の結果,高齢群ではPS期とSS期において,頭部の立ち直り角度と体幹部の立ち直り角度との間に有意な正の相関関係を認めた(PS期:r=0.68,SS期:r=0.53,p<0.01)。なお,若年群では有意な相関関係は認めなかった。
【結論】
本研究の結果,若年群との比較から高齢群では,外乱負荷からステップ足が離地(ステップ出現)する期間における体幹部の立ち直り機能が低下している可能性が示された。加えて,相関分析の結果から,高齢群では体幹部と頭部の空間上の傾き角度の類似性が示され,体幹部に対する頭部の分離(立ち直り)が困難であることが示唆された。