[P-KS-13-4] 後方ステップ動作における接地直後のエネルギー吸収
Keywords:ステップ動作, エネルギー吸収, 動的バランス
【はじめに,目的】
ステップ動作の接地直後,下肢筋の遠心性収縮により身体運動が制動される。この際,遠心性収縮が生じた関節では負の仕事(エネルギー吸収)が生じる。この仕事に関する所見は筋トルクや筋パワーの情報と共に,各関節での筋の活動状況や衝撃吸収等を推測する上で貴重な知見を与えてくれる。前方ステップや側方ステップに関する報告は散見されるが,後方ステップに関する報告は見当たらない。本研究では,後方ステップ動作の接地直後のエネルギー吸収に焦点をあて,運動力学的特徴と状況の異なる場面での反応の違いによる差を検討することを目的とした。
【方法】
健常若年成人14名(年齢20.7±0.7歳)を対象とした。測定機器は三次元動作解析装置(VMS社:Plug-in Gait Full Body Model)と床反力計(Kistler社)を使用し,サンプリング周波数はそれぞれ200Hz,1000Hzとした。
課題動作は①安定性限界到達後のステップ動作(リーチ),②振り子運動により体重の10%相当の外力を身体に加えた際のステップ動作(外乱),③自発的なステップ動作(自発)の3課題とした。静止立位から接地後の安定肢位に戻るまでの期間を測定し,その中でエネルギー吸収に関与する運動力学因子(関節トルク,仕事量)は接地直後1秒間を解析対象とした。各関節の負の仕事量は負の関節パワーを積分して求め,体重で正規化した。時空間因子の影響をみるために,踏み出し脚のステップ長を求めた。
各関節での負の仕事量に関する課題間の比較は,反復測定分散分析及びFriedman検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
平均ステップ長はリーチと外乱が自発よりも有意に大きな値を示した。
踏み出し脚では,股関節の負の仕事量(J/kg)はリーチ0.15,外乱0.11,自発0.07であり,この期間は屈曲トルクが働いた。膝関節はそれぞれ0.09,0.06,0.04であり伸展トルクが働いた。足関節はそれぞれ0.23,0.23,0.07であり,底屈トルクが働いた。股関節や足関節ではリーチが自発より有意に大きな値を示し,また全ての課題では足関節が膝関節より有意に大きな値を示した。
支持脚では,股関節の負の仕事量はそれぞれ0.07,0.05,0.03であり,この期間は主に伸展トルクが働いた。膝関節の負の仕事量はそれぞれ0.03,0.04,0.01で,足関節では殆ど生じなかった。股関節や膝関節ではリーチと外乱が自発より有意に大きな値を示し,またリーチや外乱では股関節が足関節より有意に大きな値を示した。
【結論】
本研究結果より,後方ステップのエネルギー吸収は主に踏み出し脚により行われ,その中でも足関節底屈筋群と股関節屈曲筋群が担うことが推察された。支持脚によるエネルギー吸収は量的には少ないが,その中では股関節伸展筋群による吸収が大きな値を示した。またリーチで大きな値を示した理由としてステップ長の影響が考えられた。
本研究結果は,バランストレーニング等を行う際に,有用な情報として使用可能と考えられる。
ステップ動作の接地直後,下肢筋の遠心性収縮により身体運動が制動される。この際,遠心性収縮が生じた関節では負の仕事(エネルギー吸収)が生じる。この仕事に関する所見は筋トルクや筋パワーの情報と共に,各関節での筋の活動状況や衝撃吸収等を推測する上で貴重な知見を与えてくれる。前方ステップや側方ステップに関する報告は散見されるが,後方ステップに関する報告は見当たらない。本研究では,後方ステップ動作の接地直後のエネルギー吸収に焦点をあて,運動力学的特徴と状況の異なる場面での反応の違いによる差を検討することを目的とした。
【方法】
健常若年成人14名(年齢20.7±0.7歳)を対象とした。測定機器は三次元動作解析装置(VMS社:Plug-in Gait Full Body Model)と床反力計(Kistler社)を使用し,サンプリング周波数はそれぞれ200Hz,1000Hzとした。
課題動作は①安定性限界到達後のステップ動作(リーチ),②振り子運動により体重の10%相当の外力を身体に加えた際のステップ動作(外乱),③自発的なステップ動作(自発)の3課題とした。静止立位から接地後の安定肢位に戻るまでの期間を測定し,その中でエネルギー吸収に関与する運動力学因子(関節トルク,仕事量)は接地直後1秒間を解析対象とした。各関節の負の仕事量は負の関節パワーを積分して求め,体重で正規化した。時空間因子の影響をみるために,踏み出し脚のステップ長を求めた。
各関節での負の仕事量に関する課題間の比較は,反復測定分散分析及びFriedman検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
平均ステップ長はリーチと外乱が自発よりも有意に大きな値を示した。
踏み出し脚では,股関節の負の仕事量(J/kg)はリーチ0.15,外乱0.11,自発0.07であり,この期間は屈曲トルクが働いた。膝関節はそれぞれ0.09,0.06,0.04であり伸展トルクが働いた。足関節はそれぞれ0.23,0.23,0.07であり,底屈トルクが働いた。股関節や足関節ではリーチが自発より有意に大きな値を示し,また全ての課題では足関節が膝関節より有意に大きな値を示した。
支持脚では,股関節の負の仕事量はそれぞれ0.07,0.05,0.03であり,この期間は主に伸展トルクが働いた。膝関節の負の仕事量はそれぞれ0.03,0.04,0.01で,足関節では殆ど生じなかった。股関節や膝関節ではリーチと外乱が自発より有意に大きな値を示し,またリーチや外乱では股関節が足関節より有意に大きな値を示した。
【結論】
本研究結果より,後方ステップのエネルギー吸収は主に踏み出し脚により行われ,その中でも足関節底屈筋群と股関節屈曲筋群が担うことが推察された。支持脚によるエネルギー吸収は量的には少ないが,その中では股関節伸展筋群による吸収が大きな値を示した。またリーチで大きな値を示した理由としてステップ長の影響が考えられた。
本研究結果は,バランストレーニング等を行う際に,有用な情報として使用可能と考えられる。