第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P14

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-14-4] ジャンプ着地動作時の下肢関節のkinematicsを変化させるには?

~骨盤後傾・膝関節内外反に着目して~

野田逸誓1, 工藤慎太郎1,2,3 (1.森ノ宮医療大学保健医療学部理学療法学科, 2.森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科, 3.森ノ宮医療大学卒後教育センター)

Keywords:ジャンプ動作, external focus, 運動学

【目的】運動学習において,身体の外部環境に注意を向けるexternal focusの有効性が知られている。スポーツ障害においては,膝の過度な外反や骨盤の後傾が問題になることが多い。そのため,スポーツ障害の予防における適切な動作の習得は重要になる。しかし,どのような運動課題にどのようなexternal focusを与えることで,実際の動作が変容するかは明らかでない。そこで本研究の目的はジャンプ着地動作に注目し,口頭指示によるexternal focusが着地動作時の骨盤・下肢関節に及ぼす影響を運動学的に明らかにすることとした。

【方法】対象は整形外科的疾患を有しない健常男性成人10名(平均年齢21.1±0.6歳,身長172±4.1cm,体重62.8±5.9kg)とした。運動課題は2足長分,前方に高さ20cmの台を置き,その台に飛び乗る運動とした。条件Aは「両足でジャンプして,両足で台に飛び乗って下さい」と指示し,その後,条件Bとして「台に着地する際に,可能な限り音を出さずに着地してください」という口頭指示を行い,各条件を3回計測した。計測装置は,三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製),赤外線カメラ6台(サンプリング周波数100 Hz)を用い,直径14 mmの赤外線反射マーカをPlug in gait modelの貼付箇所35点に貼付した。ジャンプ動作中の重心最高点から着地し,重心位置が最低になるまでを着地期と定義し,着地期において股関節最大屈曲時点を衝撃吸収時として,股・膝・足関節屈伸,骨盤前後傾,膝関節内外反の角度を求め,条件A・B間の違いを検討した。統計学的処理にはWilcoxonの順位和検定を用いた。【結果】股関節の屈曲角度は,条件A30.3±15.9度,条件B51.6±20.2度で,有意差を認めた(P<0.05)。膝関節の屈曲角度は,条件Aで38.2±18.0度,条件Bで77.3±26.3度となり,有意差を認めた(P<0.05)。足関節では有意差を認めなかった(P>0.05)。骨盤の前後傾角度は,条件Aで-2.9±10.1度,条件Bで-2.1±15.7度で,有意差は認めなかった(P>0.05)。膝関節の内外反角度は,条件Aで10.9±4.5度,条件Bで14.4±6.7度で,有意差を認めた(P<0.05)。

【考察】矢状面上の運動においては,股・膝関節の屈曲運動が増加し,骨盤の前後傾は有意差がなかった。股関節の屈曲には骨盤の後傾が伴うことが知られている。そのため,股関節の屈曲角度の増加に伴い,骨盤の後傾が増加すると,後方重心となるため,外相発生リスクが増加する。また膝関節の内外反角度では膝関節内反の運動範囲が広がることが明らかとなった。根地嶋らはジャンプ動作において,「膝とつま先がまっすぐに着地するように」と口頭指示を与えた結果,膝関節内外反角度を変化させることは困難であることを報告した。しかし本研究で用いた口頭指示ではスポーツ障害を惹起するとされているknee inの防止には繋がることが考えられ,スポーツ障害を予防するためのexternal focusとして有効になる可能性が示唆された。