第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P19

Sat. May 28, 2016 10:30 AM - 11:30 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-19-2] 5m歩行・停止テストの信頼性と妥当性,下肢筋力の影響

小関要作1, 高倉保幸1, 國澤洋介1, 國澤佳恵1, 師岡祐輔1, 一氏幸輔2, 山本満2 (1.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 2.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科)

Keywords:歩行停止, 信頼性, 妥当性

【はじめに,目的】下肢に運動麻痺を有する脊髄・脊椎疾患者では,歩行停止時に膝折れ現象を認める事も少なくなく,また在宅高齢者対象の転倒調査では「人や物との衝突」による転倒が1.3~4.6%発生したと報告されており,日常生活場面では安全に停止する能力を含めた歩行能力が重要になる。一般に歩行能力の評価は停止動作を含まない最速歩行時間や立つ・方向転換・座る等の複数の要素を含んだTimed Up and Goテスト(TUG)を用いるが,立位の状態での停止動作を含む歩行能力の臨床的評価法は定型化されていない。本研究の目的は新たに考案した5m歩行・停止テスト(歩行・停止テスト)の臨床利用のために検者内信頼性と併存的妥当性を明らかにすること,および歩行停止動作の身体機能的目標を明らかにするために本テストに与える下肢筋力の影響を明らかにすることである。


【方法】検者内信頼性の検討では脊髄・脊椎疾患者11例,併存的妥当性及び下肢筋力の影響の検討では,健常高齢者15例と脊髄・脊椎疾患者30例を対象とした。歩行・停止テストは助走路2m,検査路5mを最大努力で歩き停止線上で完全に止まるまでの時間をストップウォッチで計測した。検者内信頼性の検討では級内相関係数(ICC)を算出した。併存的妥当性の検討では歩行・停止テストと5m最速歩行時間(5m歩行),TUGとの相関係数を算出した。下肢筋力の影響の検討は米国脊髄損傷協会の下肢運動スコアにおける下位項目5筋(股関節屈筋,膝関節伸展筋,足関節背屈筋,母趾伸展筋,足関節底屈筋)の各得点を左右で合計した得点(10点満点)との関係について重回帰分析を用いて実施した。


【結果】歩行・停止テストのICC(1,1)は0.97となり,歩行・停止テストに高い信頼性があることが明らかとなった。歩行・停止テストと5m歩行,及び歩行・停止テストとTUGとの相関は,脊髄・脊椎疾患者でそれぞれr=0.97(p<.01),r=0.87(p<.01),健常高齢者でそれぞれr=0.93(p<.01),r=0.92(p<.01)であり有意で強い相関を認めた。歩行・停止テストと下肢筋力の関係は,重回帰分析により健常高齢者ではどの測定した筋力とも有意な相関を認めなかった。脊髄・脊椎疾患者では足関節底屈筋力が有意な要因として抽出され,影響力の強さを示す標準偏回帰係数は-0.64であった。


【結論】脊髄・脊椎疾患者では歩行・停止テストの検者内信頼性が高いことが明らかとなり,脊髄・脊椎疾患者と健常高齢者を対象として5m歩行及びTUGとの相関の調査から併存的妥当性が明らかとなり,歩行・停止テストが臨床で使用できる評価法であることが示された。歩行・停止テストに影響を与える下肢筋力は,脊髄・脊椎疾患者で足関節底屈筋が抽出され歩行・停止能力の向上の為の理学療法上の身体機能的目標が示された。また健常高齢者では影響を与える有意な因子は抽出されず下肢筋力以外の因子の関与が示唆された。