[P-KS-20-4] タンデムスタンスにおける手指先位置の相違が姿勢制御戦略に及ぼす影響
Keywords:タンデムスタンス, 身体動揺, 姿勢制御戦略
【はじめに,目的】
タンデムスタンス(以下タンデム)における手指先のLight touch(102g以下,以下LT)は,身体の動揺を減少させることが報告されている(Rabin 1999)。また,身体動揺が減少するためには,手指先に向けられた注意が必要とされ(Vuillerme 2006),求心性感覚情報の入力が関与する(Kouzaki 2008)。そこで本研究の目的は,タンデムにおける手指先からの感覚情報および位置の相違が姿勢制御戦略に及ぼす影響について,バイオメカニクス的手法を用いて明らかにすることとした。
【方法】
一般健常男子大学生6名(年齢20.2±0.8歳)を対象とし,被験者に2台の地面反力計(AMTI社製,100Hz)上で,タンデム(左下肢前)を50秒間保持させた。その様子を光学式3次元自動動作解析装置(Motion Analysis社製,100Hz)のカメラ6台で計測した。試技は,1)LTの有無,2)手指先の位置が側方(後下肢の第2足趾先端の位置で小指から15cm外側)および前方(側方位置から15cm前方),3)視覚の開閉眼を組み合わせた8試技とした。LT有は,大転子の高さの計量器に右示指で接触させ,LT無は計量器より5cm空間上で保持させた。同時に表面筋電計(Kissei Com Tech社製,1000Hz)を用いて,左右の中殿筋,内側広筋,前脛骨筋およびヒラメ筋の筋活動を計測した。得られた足圧中心を用いて累積移動距離,面積および平均速度を求め,これらを身体動揺の指標とし,地面反力を時間積分したものを力積,被験筋の活動を時間積分したものを筋活動量とした。48試技の動揺指標,力積および筋活動量を,多元配置分散分析を用いて条件ごとに比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
LT有と無で比較した場合,動揺指標および前後方向の力積は,LT有のほうが無より有意に低値であった(p<0.01)。一方,指先位置が側方の場合,前下肢では前後方向および鉛直方向の力積は,前方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。また,後下肢では累積移動距離および前後方向の力積は,前方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。次いで,指先位置が前方の場合,前下肢では累積移動距離は,側方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。また,後下肢では鉛直方向の力積およびヒラメ筋の筋活動量は,側方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。
【結論】
LT有では,前および後下肢の動揺を減少させ姿勢を安定させることが示唆された。次いで,手指先位置が側方では後下肢を,前方では前下肢の動揺を減少させ,姿勢を安定させることが示唆された。また,後下肢のヒラメ筋の筋活動を調整することで,前および後下肢の制御戦略を変化させることが考えられた。以上のことから,注意が向けられた手指先位置の相違がタンデムにおける身体動揺を制御する筋活動に影響を及ぼし,前および後下肢の機能的役割を変化させることが示唆された。
タンデムスタンス(以下タンデム)における手指先のLight touch(102g以下,以下LT)は,身体の動揺を減少させることが報告されている(Rabin 1999)。また,身体動揺が減少するためには,手指先に向けられた注意が必要とされ(Vuillerme 2006),求心性感覚情報の入力が関与する(Kouzaki 2008)。そこで本研究の目的は,タンデムにおける手指先からの感覚情報および位置の相違が姿勢制御戦略に及ぼす影響について,バイオメカニクス的手法を用いて明らかにすることとした。
【方法】
一般健常男子大学生6名(年齢20.2±0.8歳)を対象とし,被験者に2台の地面反力計(AMTI社製,100Hz)上で,タンデム(左下肢前)を50秒間保持させた。その様子を光学式3次元自動動作解析装置(Motion Analysis社製,100Hz)のカメラ6台で計測した。試技は,1)LTの有無,2)手指先の位置が側方(後下肢の第2足趾先端の位置で小指から15cm外側)および前方(側方位置から15cm前方),3)視覚の開閉眼を組み合わせた8試技とした。LT有は,大転子の高さの計量器に右示指で接触させ,LT無は計量器より5cm空間上で保持させた。同時に表面筋電計(Kissei Com Tech社製,1000Hz)を用いて,左右の中殿筋,内側広筋,前脛骨筋およびヒラメ筋の筋活動を計測した。得られた足圧中心を用いて累積移動距離,面積および平均速度を求め,これらを身体動揺の指標とし,地面反力を時間積分したものを力積,被験筋の活動を時間積分したものを筋活動量とした。48試技の動揺指標,力積および筋活動量を,多元配置分散分析を用いて条件ごとに比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
LT有と無で比較した場合,動揺指標および前後方向の力積は,LT有のほうが無より有意に低値であった(p<0.01)。一方,指先位置が側方の場合,前下肢では前後方向および鉛直方向の力積は,前方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。また,後下肢では累積移動距離および前後方向の力積は,前方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。次いで,指先位置が前方の場合,前下肢では累積移動距離は,側方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。また,後下肢では鉛直方向の力積およびヒラメ筋の筋活動量は,側方と比較して有意に低値であった(p<0.01)。
【結論】
LT有では,前および後下肢の動揺を減少させ姿勢を安定させることが示唆された。次いで,手指先位置が側方では後下肢を,前方では前下肢の動揺を減少させ,姿勢を安定させることが示唆された。また,後下肢のヒラメ筋の筋活動を調整することで,前および後下肢の制御戦略を変化させることが考えられた。以上のことから,注意が向けられた手指先位置の相違がタンデムにおける身体動揺を制御する筋活動に影響を及ぼし,前および後下肢の機能的役割を変化させることが示唆された。