第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P23

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-23-1] 脳卒中片麻痺者における上肢を用いた立ち上がり動作の運動学的特徴

高橋純平1, 西山徹2 (1.東北文化学園大学医療福祉学部, 2.日本医療大学)

Keywords:脳卒中, 立ち上がり, 運動学的分析

【はじめに,目的】

脳卒中片麻痺者において椅子からの立ち上がり動作が運動麻痺等により困難な場合,運動戦略として上肢を用いた立ち上がり動作を行う。その方法は,手すり等を押して立つ方法(Push動作)と引いて立つ動作(Pull動作)の2通りがある。上肢を用いた立ち上がり動作についての研究は,健常者を対象とした分析が多く,脳卒中片麻痺者を対象とした報告は少なく不十分である。そこで本研究の目的は,脳卒中片麻痺者における上肢を用いた立ち上がり動作の運動学的特徴に着目し,動作中の関節角度が立ち上がり方法の違いによって変わるかを明らかにすることである。

【方法】

対象は,病院に入院中の脳卒中片麻痺者21名(年齢69.2±8.5歳,男性9名,女性12名)である。除外基準として,有痛性の関節疾患を有する者,半側空間失認症状がある者,指示理解が困難な者とした。対象者は椅子からの立ち上がり動作を,難易度が低い順(Pull動作,Push動作,上肢支持なしの立ち上がり動作)で実施し,各対象者の立ち上がり可能な最大レベルの動作をビデオカメラにて撮影した。上肢支持なしでの立ち上がり動作は両腕を組みながら,Push動作は非麻痺側で座面を押しながら,Pull動作は手指の先端の位置に合わせた前方縦手すりを用いて非麻痺側上肢で引きながら動作を行った。立ち上がり動作時の椅子の高さは腓骨頭の高さに合わせ,初期足関節背屈角度を5°に統一した。測定項目は,最大体幹前傾角度ならびに最大下腿傾斜角度とし,画像解析ソフトDARTFISHを用いて算出した。測定値は,立ち上がり動作を3回行った平均値を採用した。

統計解析は,立ち上がり動作の違いにおける各角度の群間比較は一元配置分散分析を行い,事後検定としてTukeyの検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】

群分けは,上肢支持なし群は9名,Push群は5名,Pull群は7名であった。解析の結果,最大体幹前傾角度は上肢支持なし群40.5±9.6°,Push群38.4±4.3°,Pull群22.6±4.3°であった。最大下腿傾斜角度は上肢支持なし群21.0±3.3°,Push群21.4±4.1°,Pull群14.7±2.8°であった。最大体幹前傾角度,最大下腿傾斜角度ともに,上肢支持なし群とPush動作群に有意差は認められなかったが,Pull群と他の2群間では,Pull群が有意に小さかった。

【結論】

上肢支持なし群とPush群は立ち上がる際にしっかりと体幹前傾を行い,殿部離床に伴い下腿が前傾するという同様の特徴を示したが,Pull動作は手すりを引くことによって,動作初期より上体を前上方に持っていくため,関節角度が小さいという特徴がみられた。これは健常人の動作と同様であり,脳卒中片麻痺者の立ち上がり練習においても,これらのことを考慮する必要がある。