第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P24

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-24-5] プルセンサー式ハンドヘルドダイナモメーターを用いた肩関節筋力測定の検者間再現性の検討

目標物を設置することによる検者間再現性の検討

渡部亮介, 松村和幸, 成田悟志, 山崎彰久, 青山誠 (手稲渓仁会病院リハビリテーション部)

キーワード:プルセンサー式HHD, 筋力測定, 肩関節

【はじめに,目的】

近年,簡便かつ客観的な筋力測定の方法として,ハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)を用いた報告が散見される。HHDには徒手固定やプルセンサーによる測定方法があり,徒手固定では固定強度の限界や固定部位のずれから再現性が低下するなどの報告がある。そこで,機器固定を確実に行えるプルセンサー式HHDを用いることで検査再現性を高められることが予測される。しかし測定肢位の違いで作用ベクトルが容易に変化するなど,測定には工夫が必要である。本研究の目的は自由度の高い肩関節の筋力測定において,目標物を設置することが検者間再現性に与える影響を明らかにすることである。

【方法】

対象は健常成人20名(男性10名女性10名 平均年齢24.6±3.78)とし,HHD(mobie MT-100W酒井医療社)にて肩関節屈曲,伸展,内旋,外旋の測定を行った。測定は3名の検者によって被験者それぞれを目標物の有無で測定し,検者間再現性の検討を行った。方法1の測定肢位は頭部まである背もたれを有する椅子に体幹・骨盤を固定した座位とし,肩屈伸は肩関節中間位,センサーは上腕骨内側と外側上顆を結んだ線上にあて,肩内外旋は,上腕下垂位,肘屈曲90°,前腕中間位とし,センサーは橈骨,尺骨茎状突起を結んだ線上にあてた。方法2は,方法1に加え,肩屈伸は天井から垂直に紐を下ろし,肩峰を通る床への垂線を作成し,肩の屈伸中間位を規定。肩内外旋では肘を通る前額面への垂線を肘下に置いたテーブルに描き,肩内外旋の中間位を規定した(以下方法2)。方法2ではビデオ撮影を同時に行い,目標物から逸脱した場合は検者判断によって再測定とした。どちらの方法も筋力測定は5秒間最大等尺性収縮を3回実施し,平均値をレバーアームで補正した値を筋力値とし,測定間隔は30秒とした。検者間再現性は,検者3名で同一被験者の測定を実施した。統計処理はSPSS Ver21を使用し筋力値再現性を分散分析・級内相関係数(2,3)(以下ICC)を用いて検討した。有意水準を5%とした。

【結果】

方法1はF値が伸展を除きP<.05であり,伸展以外に検者間の再現性は得られなかった。肩伸展ICCは0.975で,高い再現性が得られた。方法2ではF値が屈曲以外でP>.05であり,ICCは肩伸展0.975,肩外旋0.972,肩内旋0.983と高い再現性が得られた。方法2の屈曲を男女に群分けて統計処理を行った結果,女性群ではF値がP>.05であり,ICCが0.880と高い再現性を認めた。

【結論】

本結果より,目標物を設置し,HHDに加わる作用ベクトルを規定することで,検者間再現性を高めることが示唆された。自由度の高い肩関節の筋力をプルセンサー式HHDによって測定する際には,作用ベクトルが容易に変化し得る可能性があり,HHDに加わる牽引力が分散してしまう。このことからプルセンサー式HHDを使用する場合,牽引のベクトルを規定する工夫が必要である。