[P-KS-24-6] 救急ICUにおける敗血症患者へのMRC(Medical Research Council scoring)評価の実用性の検討
Keywords:筋力評価, ICU, 敗血症
【はじめに,目的】
敗血症患者は病態が重篤化し,全身性に筋力低下を生じ入院前ADLへの復帰が困難となる事がある。以前我々は,敗血症患者においてMRC(Medical Research Council scoring)が低値傾向を示し,筋力低下が歩行自立の可否に関連する可能性の存在を報告した。MRCは主観的な筋力評価法の一つであり,四肢筋力を簡便に検査することが可能な評価法である。しかし粗大な筋力評価法である為,MRC値単独でのADL能力等の機能レベルの予測は困難な側面がある。一方で客観的な筋力評価法の一つとして,ハンドヘルドダイナモメータによる膝関節伸展筋力/体重比(以下,筋力値)の算出がある。筋力値と動作自立度との関連の報告は多く見られ,評価の信頼性が高く下肢筋力値の測定は重要である。しかし集中治療領域では筋力測定機器の測定条件を一定に出来ず測定が困難なことも多く経験する。そこで,主観的な筋力評価であるMRCが筋力値と関連するかどうかを検討することにより,急性期における筋力評価指標としての実用性を検討することとした。
【方法】
対象は2013年4月~2015年6月に当院EICUに敗血症と診断され入院した患者21名とした(平均74.2±10.4歳,男性14例,女性7例)。筋力評価項目として,PT開始時と退院時MRC(以下SMRCおよびEMRC),PT開始時直近の筋力値(以下,初期筋力値),退院時の筋力値(以下,最終筋力値)を測定した。そのうち,MRC・筋力値の評価スケール間と,PT開始時・退院時間の経時的な筋力の相関をそれぞれみるために,SMRC,EMRC,初期筋力値,最終筋力値の各項目間にて統計処理を行なった。統計手法としてはSpearmanの順位相関係数を用い検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
各筋力評価値の平均値はSMRC49.0±10.8,EMRC56.2±5.6,初期筋力値が0.34±0.18,最終筋力比が0.40±0.16であった。各筋力評価項目間の相関のうち,同一時期に測定した各筋力評価間の関連について,初期筋力値とSMRCに有意に相関を認め(r=0.644,p<0.01),最終筋力値とEMRCにて相関を認めた(r=0.518,p<0.05)。各筋力評価の経時的な関連について,初期筋力値と最終筋力値で有意な高い相関を認め(r=0.886,p<0.001),SMRCとEMRCで有意な相関を認めた(r=0.570,p<0.01)。
【結論】
MRC・筋力値共に初期の筋力値が高いほど,最終の筋力値は高値となる。MRC・筋力値共に高値であることが入院中のADL再獲得に繋がる事から,ADL再獲得を推測する目安として,MRCの評価は実用性があると思われる。MRCは簡便に筋力評価を行なえる一方,主観を含むため単独での使用は信頼性に欠ける側面がある。しかしICU領域における評価は簡便性も重要であり,MRCを筋力値と組み合わせることでより簡便に整合性のある筋力評価が行なえる。ICUの敗血症患者におけるMRCの測定は,急性期リハビリテーションの効果判定に用いる主観的筋力評価として,実用性があることが示唆された。
敗血症患者は病態が重篤化し,全身性に筋力低下を生じ入院前ADLへの復帰が困難となる事がある。以前我々は,敗血症患者においてMRC(Medical Research Council scoring)が低値傾向を示し,筋力低下が歩行自立の可否に関連する可能性の存在を報告した。MRCは主観的な筋力評価法の一つであり,四肢筋力を簡便に検査することが可能な評価法である。しかし粗大な筋力評価法である為,MRC値単独でのADL能力等の機能レベルの予測は困難な側面がある。一方で客観的な筋力評価法の一つとして,ハンドヘルドダイナモメータによる膝関節伸展筋力/体重比(以下,筋力値)の算出がある。筋力値と動作自立度との関連の報告は多く見られ,評価の信頼性が高く下肢筋力値の測定は重要である。しかし集中治療領域では筋力測定機器の測定条件を一定に出来ず測定が困難なことも多く経験する。そこで,主観的な筋力評価であるMRCが筋力値と関連するかどうかを検討することにより,急性期における筋力評価指標としての実用性を検討することとした。
【方法】
対象は2013年4月~2015年6月に当院EICUに敗血症と診断され入院した患者21名とした(平均74.2±10.4歳,男性14例,女性7例)。筋力評価項目として,PT開始時と退院時MRC(以下SMRCおよびEMRC),PT開始時直近の筋力値(以下,初期筋力値),退院時の筋力値(以下,最終筋力値)を測定した。そのうち,MRC・筋力値の評価スケール間と,PT開始時・退院時間の経時的な筋力の相関をそれぞれみるために,SMRC,EMRC,初期筋力値,最終筋力値の各項目間にて統計処理を行なった。統計手法としてはSpearmanの順位相関係数を用い検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
各筋力評価値の平均値はSMRC49.0±10.8,EMRC56.2±5.6,初期筋力値が0.34±0.18,最終筋力比が0.40±0.16であった。各筋力評価項目間の相関のうち,同一時期に測定した各筋力評価間の関連について,初期筋力値とSMRCに有意に相関を認め(r=0.644,p<0.01),最終筋力値とEMRCにて相関を認めた(r=0.518,p<0.05)。各筋力評価の経時的な関連について,初期筋力値と最終筋力値で有意な高い相関を認め(r=0.886,p<0.001),SMRCとEMRCで有意な相関を認めた(r=0.570,p<0.01)。
【結論】
MRC・筋力値共に初期の筋力値が高いほど,最終の筋力値は高値となる。MRC・筋力値共に高値であることが入院中のADL再獲得に繋がる事から,ADL再獲得を推測する目安として,MRCの評価は実用性があると思われる。MRCは簡便に筋力評価を行なえる一方,主観を含むため単独での使用は信頼性に欠ける側面がある。しかしICU領域における評価は簡便性も重要であり,MRCを筋力値と組み合わせることでより簡便に整合性のある筋力評価が行なえる。ICUの敗血症患者におけるMRCの測定は,急性期リハビリテーションの効果判定に用いる主観的筋力評価として,実用性があることが示唆された。