第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P25

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-25-3] 廃用性筋萎縮に対するレモンマートル摂取が筋衛星細胞の活性化に与える効果

田中孝平1, 本田真一2, 前重伯壮1, 藤野英己1 (1.神戸大学大学院保健学研究科, 2.株式会社カネカメディカルデバイス開発研究所)

Keywords:廃用性筋萎縮, 萎縮予防, 栄養サポート

【はじめに,目的】

骨格筋の可塑性には骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞の働きが重要と考えられている。筋衛星細胞は運動等の刺激によって活性化され,増殖・分化の過程を経て,既存の筋線維の肥大を促進する。一方,筋衛星細胞の活性は活動量の減少に伴って低下し,廃用性筋萎縮を促すため,廃用性筋萎縮の予防には筋衛星細胞の活性を維持・改善することが重要である。また,リスク管理等により運動が制限されることもあり,筋衛星細胞を活性化する補助療法の確立が必要であると考えられる。そこで,筋衛星細胞の活性化に対して,数百種類の植物抽出素材や人工素材をスクリーニングし,高い効果が得られたハーブの一種であるレモンマートルに注目した。先行研究でレモンマートルを投与したラット骨格筋の筋衛星細胞が活性化していることを確認した。本研究ではレモンマートル摂取による筋衛星細胞の活性化を観察し,廃用性筋萎縮の予防に対する効果を検証した。


【方法】

8週齢雄性SDラット(n=24)を,通常飼育群と後肢非荷重群の2群に分け,各々の群を生理食塩水摂取群とレモンマートル摂取群に区分した(Cont,Cont+LM,HU,HU+LM群)。レモンマートルは,14日間の後肢非荷重期間中に1日2回ゾンデで経口投与(250 mg/kg)した。介入期間終了後に体重とヒラメ筋筋湿重量を計測し,相対重量比を算出した。抗Dystrophin免疫染色で筋細胞膜を標識し,筋線維横断面積を測定した。また,抗Pax7-抗Dystrophin-DAPIによる免疫染色より筋核数・筋線維比,及び筋衛星細胞数・筋線維比を算出した。さらに,筋衛星細胞の増殖の程度の指標として抗Pax7-抗MyoD-DAPI免疫染色による陽性核数を測定し,分化の程度の指標として抗MyoD-抗myogenin-DAPI免疫染色による陽性核数を測定した。得られた測定値の統計処理には二元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を使用し,有意水準は5%とした。


【結果】

14日間の後肢非荷重で体重,ヒラメ筋筋湿重量及び相対重量比が減少した。また,後肢非荷重で筋線維横断面積,筋核数・筋線維比及び筋衛星細胞数・筋線維比は有意に減少したが,Cont+LM群はCont群と比較して,HU+LM群はHU群と比較して有意に高値を示した。さらにHU群のPax7-MyoD-DAPI陽性核数は,Cont群と比較して有意に低値を示したが,MyoD-myogenin-DAPI陽性核数に有意差を認めなかった。一方,Cont+LM群とHU+LM群では,Pax7-MyoD-DAPI陽性核数とMyoD-myogenin-DAPI陽性核数に有意差を認めなかった。また,Cont+LM群はCont群と比較して,HU+LM群はHU群と比較して,各々のPax7-MyoD-DAPI陽性核数とMyoD-myogenin-DAPI陽性核数が有意に高値を示した。


【結論】

レモンマートルの摂取は筋衛星細胞を活性化することで廃用性筋萎縮を軽減することが明らかとなった。