第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P25

Sat. May 28, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-25-4] ギプス固定による廃用性筋萎縮と再荷重のプロセスにおけるマイオカインの変動

相原正博1,2, 勝田若奈3,4, 森優樹3, 廣瀬昇1,5, 斉藤史明5, 丸山仁司2, 萩原宏毅3,5 (1.帝京科学大学医療科学部理学療法学科, 2.国際医療福祉大学大学院保健医療学理学療法学分野, 3.帝京科学大学大学院理工学研究科バイオサイエンス専攻医療科学分野, 4.国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部, 5.帝京大学神経内科)

Keywords:再荷重, ギプス固定, マイオカイン

【はじめに,目的】ギプス固定は,外傷などの骨折に対する治療法の一つである。ギプス固定期間では,固定部位が不動となるため廃用性筋萎縮を発生し,二次的にADLやQOLの低下を引き起こす要因となる。廃用性筋萎縮に対する理学療法は,介入時期や介入効果を判定する機能評価が少なく,臨床経験から理学療法の適応を判断せざる得ない現状もある。そのため,的確な介入時期や判定基準の確立が求められている。一方,実験動物を用いた筋萎縮に対する介入方法に関する研究は数多く報告されている。報告では,廃用性筋萎縮に対する他動的筋伸張刺激や,ギプス固定による下肢筋萎縮に対する回復過程や持続的伸張時間などが検討されている。その中で,近年,骨格筋から種々のホルモン様の生理活性物質が分泌されることが報告され,骨格筋由来の生理活性物質は総称してマイオカインと呼ばれる。特に,骨格筋から分泌されるマイオカインのうちIL-6やIL-15などは,筋収縮や運動によって発現するとされている。しかし,筋萎縮の病態や介入効果と連動するかは明らかにされていない。そこで,ギプス固定による廃用性筋萎縮と再荷重のプロセスにおけるIL-6,IL-15の変動について検討した。


【方法】10週齢のマウス(C57BL6)を使用し,コントロール群,ギプス固定法群,ギプス固定法後再荷重群の3群に分けた。筋萎縮誘発方法は,膝関節伸展,足関節背屈位にてギプス包帯を用いてギプス固定を実施し,固定期間は2週間とした。前肢と一側後肢を用いてケージ内を移動し,餌と水は自由に摂取できるようにした。飼育中は3群に対して,全身状態観察,体重計測を実施し,ギプス固定の緩みや浮腫が生じた際は,その都度巻き直しを行った。2週間の固定期間後,ギプス包帯を除去し,再荷重を行った。前脛骨筋,腓腹筋,ヒラメ筋を単離した後,筋湿重量計測を実施し,凍結横断切片を作成した。HE染色にて観察,筋線維径分布を測定した。また,採血後に血清を作成し,IL-6,IL-15の血中濃度を定量化した。


【結果】骨格筋重量は,コントロール群に比較してギプス固定法群では有意に低下した。再荷重群では,コントロール群までの改善は認められなかった。筋線維径分布は,コントロール群と比較してギプス固定法群,ギプス固定法後再荷重群で低値を示した。IL-6,IL-15はコントロール群に比較して,ギプス固定群で高値を示した。ギプス固定後再荷重群では,コントロール群ほどではないが低値を示した。

【結論】IL-6とIL-15の血中濃度は,筋萎縮誘発時に増加し,ギプス除去後の再荷重後ではコントロール群の近くまで減少していた。このことから,IL-6とIL-15の変化は,筋萎縮の進行や再荷重による病態変化に関連している可能性が示唆された。今後は,詳細な病態変化や理学療法的介入を行った際のIL-6とIL-15の変動についての評価も加えて,これらのマイオカインがバイオマーカーとして有用かを検討していきたい。