第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P32

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-32-1] 高齢者の外出に必要な歩行能力を評価する方法の検討

知念紗嘉1, 菅沼一男2, 金子千香2 (1.自宅会員, 2.帝京科学大学)

Keywords:高齢者, 歩行能力, 外出頻度

【はじめに,目的】

近年,健康寿命が重要であると言われている。高齢者が自立した生活を送る上で,歩行は基本的で重要な能力であり,歩行能力の低下は閉じこもり状態をもたらす可能性を指摘し,閉じこもりは意欲やソーシャル・ネットワークを著しく低下させることを報告されている。このことから,歩行能力は高齢者が社会の中で生活する上で重要な要素となる。高齢者が社会の中で生活するためには外出することが必要である。歩行能力と外出の可否についての報告は数多くなされている。しかし,歩行能力と外出頻度を示した報告は少ない。つまり「できる外出」の可否についての検討はされているが「している外出」について必要な歩行能力を評価する方法について検討されていない。本研究は「している外出」に関係のある歩行能力について検討することを目的とした。

【方法】

対象者は65歳以上の虚弱高齢者30名(男11名,女性19名)であり,年齢77.4±4.8歳,身長153.0±8.7cm,体重51.9±8.5kgであった。対象者は,日常生活自立度判定基準ランクI以上とし,外出頻度が週に1回以上外出する場合を高外出頻度群,週1回も外出しない場合を低外出頻度群とした。除外基準は中枢性疾患や認知機能低下を認めるものとした。

測定項目は3mジグザグ歩行テスト(以下,3ZWT),TUG,10m歩行テスト,転倒自己効力感(以下,MFES),自己効力感尺度(以下,SEGE)とした。各歩行能力評価の測定順は2回行い最速値を採用した。3ZWTは,増田の方法を用い,その他の評価は一般的に行われている方法とした。

統計学的解析は,低外出頻度群と高外出頻度群に対して,3ZWT,TUG,10m歩行テスト,MFSE,SEGEが影響するかを知るため,多重ロジスティック回帰分析を適用させた。変数の選択は尤度比検定による変数増加法を用いた。また,低外出頻度群と高外出頻度群の3ZWT時間の群間比較に,対応のないt検定を行った。さらに,低外出頻度群と高外出頻度群を最適分類するためにROC曲線を求め,3ZWT時間のカットオフ値を算出した。統計ソフトは,SPSS Ver.15J for Windowsを使用し有意水準は5%未満とした。

【結果】

低外出頻度群と高外出頻度群の群間比較の結果,全ての運動機能において高外出頻度群が低値を示した。外出頻度の高低に影響する変数として,3ZWTが選択された(尤度比検定でp<0.05)。3ZWTのオッズ比は0.419(95%信頼区間0.204~0.860)変数の有意性は,3ZWTがp<0.05であった。このHosmer-Lemeshow検定結果は,p=0.665で適合していることが示され,予測値と実測値の判別的中率は86.7%であった。また,3ZWT時間のカットオフ値は11.1秒であった。

【結論】

低外出頻度群と高外出頻度群の歩行能力テストを比較するとすべての評価で高外出頻度群の歩行能力が優れていたが,外出頻度の高低に影響する歩行能力評価として3ZWTが選択された。したがって,高齢者の「している外出」を評価する方法として3ZWTを用いることができると推察した。また,MFSE,SEGEは影響がないことが示唆された。