[P-KS-32-2] 回復期病棟入院患者の転倒リスクと後方歩行速度との関連
Keywords:後方歩行, 歩行速度, 転倒リスク
【はじめに,目的】
日常生活にて数歩後方へ下がる事や方向転換時に後方歩行を行うことは多い。回復期病棟の入院患者においても,同様の場面にてふらつきを認める事や転倒する患者がいる事を経験し,後方への移動能力の評価が必要ではなかと考えた。先行研究では,5m backward walking testと転倒経験の有無に関する報告(川本ら,2010)や健常高齢者の後方歩行能力とバランス能力の関連についての報告(美和ら,2007)がされている。しかし,多くは健常高齢者や自宅で生活している高齢者を対象としている。そこで,本研究では入院患者の転倒リスクの高低を調査し,後方歩行速度との関連を明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は,2014年11月から2015年9月の間に当院回復期病棟に入院した患者で,研究に同意を得られた60人(平均年齢72.1±11.8歳,男29人,女31人)を対象とした。対象の適応基準は,歩行補助具を用いた歩行または杖なし歩行が自立している者とした。患者の内訳は,脳血管疾患20人,運動器疾患21人,廃用症候群19人であった。測定項目は,年齢,性別,Body Mass Index(BMI),改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)に加え,片脚立ち時間,最大歩行速度(前方10m,後方5m),Functional Independence Measure(FIM)の運動と認知をそれぞれ測定した。さらに,アンケート調査として転倒スコアを調査した。後方歩行の測定は川本ら(2013)の方法に従い測定した。5m後方歩行のコース設定は助走路を設けず,5mの直線歩行路を最大努力で後方に歩行し,その際の歩行速度を計測した。解析は転倒スコアの点数を元に,10点以上を転倒高リスク群,10点未満を転倒低リスク群の2群に分け,各測定項目を両群間で比較した(t検定,X2検定)。さらに単変量解析において有意であった項目を独立変数,転倒リスクの高低を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を求めた。解析には,SPSS 20.OJ Windowsを用いた。
【結果】
転倒スコアの調査により入院患者60人中,転倒高リスク群は29人,低リスク群は31人であった。両群間の比較において有意であった項目は,片脚立ち時間,10m歩行速度,5m後方歩行速度,HDS-R,FIM(運動),FIM(認知)であった。この単変量解析において有意であった項目に加え,年齢,性別を独立変数として,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,転倒リスクに関わる因子として有意であった項目は,5m後方歩行速度とFIM(認知)であった。オッズ比は5m後方歩行速度は0.046(95%信頼区間0.005-0.446),FIM(認知)は0.829(95%信頼区間0.697-0.986)であった。
【結論】
本研究の結果から転倒リスクには,5m後方歩行速度とFIM(認知)が関わる事が示された。今回の対象者は,前方への移動が自立していたことからより動作の難易度が高い後方歩行において転倒リスクとの関連が示唆された。この事から,自立度の高い対象者においては前方歩行と合わせて後方歩行速度の評価を行う事で転倒リスクをより鋭敏に予測できる可能性が示唆された。
日常生活にて数歩後方へ下がる事や方向転換時に後方歩行を行うことは多い。回復期病棟の入院患者においても,同様の場面にてふらつきを認める事や転倒する患者がいる事を経験し,後方への移動能力の評価が必要ではなかと考えた。先行研究では,5m backward walking testと転倒経験の有無に関する報告(川本ら,2010)や健常高齢者の後方歩行能力とバランス能力の関連についての報告(美和ら,2007)がされている。しかし,多くは健常高齢者や自宅で生活している高齢者を対象としている。そこで,本研究では入院患者の転倒リスクの高低を調査し,後方歩行速度との関連を明らかにする事を目的とした。
【方法】
対象は,2014年11月から2015年9月の間に当院回復期病棟に入院した患者で,研究に同意を得られた60人(平均年齢72.1±11.8歳,男29人,女31人)を対象とした。対象の適応基準は,歩行補助具を用いた歩行または杖なし歩行が自立している者とした。患者の内訳は,脳血管疾患20人,運動器疾患21人,廃用症候群19人であった。測定項目は,年齢,性別,Body Mass Index(BMI),改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)に加え,片脚立ち時間,最大歩行速度(前方10m,後方5m),Functional Independence Measure(FIM)の運動と認知をそれぞれ測定した。さらに,アンケート調査として転倒スコアを調査した。後方歩行の測定は川本ら(2013)の方法に従い測定した。5m後方歩行のコース設定は助走路を設けず,5mの直線歩行路を最大努力で後方に歩行し,その際の歩行速度を計測した。解析は転倒スコアの点数を元に,10点以上を転倒高リスク群,10点未満を転倒低リスク群の2群に分け,各測定項目を両群間で比較した(t検定,X2検定)。さらに単変量解析において有意であった項目を独立変数,転倒リスクの高低を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を求めた。解析には,SPSS 20.OJ Windowsを用いた。
【結果】
転倒スコアの調査により入院患者60人中,転倒高リスク群は29人,低リスク群は31人であった。両群間の比較において有意であった項目は,片脚立ち時間,10m歩行速度,5m後方歩行速度,HDS-R,FIM(運動),FIM(認知)であった。この単変量解析において有意であった項目に加え,年齢,性別を独立変数として,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,転倒リスクに関わる因子として有意であった項目は,5m後方歩行速度とFIM(認知)であった。オッズ比は5m後方歩行速度は0.046(95%信頼区間0.005-0.446),FIM(認知)は0.829(95%信頼区間0.697-0.986)であった。
【結論】
本研究の結果から転倒リスクには,5m後方歩行速度とFIM(認知)が関わる事が示された。今回の対象者は,前方への移動が自立していたことからより動作の難易度が高い後方歩行において転倒リスクとの関連が示唆された。この事から,自立度の高い対象者においては前方歩行と合わせて後方歩行速度の評価を行う事で転倒リスクをより鋭敏に予測できる可能性が示唆された。