[P-KS-32-3] 回復期病棟における大腿骨近位部骨折患者の退院時歩行自立度に関連する栄養指標を含めた因子の検討
Keywords:大腿骨近位部骨折, 歩行自立, BMI
【はじめに,目的】
我々は過去の研究にて,大腿骨近位部骨折患者における回復期病棟入院時のMini Nutritional Assessment-Short Form(以下:MNA-SF)の低値が,ADL能力の改善を妨げ,退院時の歩行自立度に影響を与えることを報告した。しかしMNA-SFは歩行能力や急性疾患を含む包括的な栄養指標であり,十分な歩行の予後予測因子とはいえなかった。そこで本研究では,回復期病棟における大腿骨近位部骨折患者の退院時歩行自立度に関連する因子を,MNA-SFと血液データや他の栄養指標も含めて検討を行った。
【方法】
対象は,2013年12月~2015年9月までに当院回復期病棟を経て退院した大腿骨頚部骨折及び転子部骨折患者で,データに不備のなかった66名とした。(年齢:81.5±6.7歳,男女比17:49,術式:人工骨頭置換術32名,γ-nail27名,ハンソンピン5名,保存2名)
カルテより対象者の年齢,性別,回復期病棟入院時のBerg Balance Scale(以下:BBS),Mini-Mental State Examination(以下:MMSE),握力,Body Mass Index(以下:BMI),血清アルブミン(以下:Alb),MNA-SF,退院時の歩行自立度を調査した。歩行自立の条件は,病棟生活において45m以上連続で自立歩行が可能であることとし(杖または装具の使用は可),それに該当する者を自立群(31名),監視または介助が必要な者を介助群(35名)に分類した。
統計学的分析は,ロジスティック回帰分析(尤度比による変数減少法)を用いた。目的変数は歩行自立とし,説明変数はカルテ調査内容をT検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定の上決定した。以上の解析にはSPSS statistics20を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
2群間の差の検定ではBBS,MMSE,握力,BMI,Alb,MNA-SFにて有意差を認め(p<0.05),説明変数として投入した。
ロジスティック回帰分析の結果,歩行自立に関連する因子としてBBS,MMSE,BMIが採択された(p<0.05)。オッズ比はBBS1.14,MMSE1.22,BMI1.27を示し,判定的中率は84.8%と良好なモデルであった。
【結論】
今回の結果より,回復期病棟における大腿骨近位部骨折患者の入院時のBMIが低値であることは,バランス能力低下や認知機能低下と並んで,退院時の歩行自立度に関連する因子となることが示唆された。先行研究では,大腿骨近位部骨折患者の歩行自立に影響する栄養指標として,アルブミンが低値であることや入院中の体重減少等が報告されているが,今回は入院時のBMIが採択された。
新井らは,BMIが低値である地域高齢者であっても,運動プログラムの介入によって一定の身体機能向上が得られたと報告している。またBMIが低値である低栄養患者には,栄養と運動介入の併用が望ましいことが過去の研究によって知られている。回復期病棟においてもBMIが低値である患者には,入院時の早期より体重減少等の評価を実施した上で,積極的な栄養及び運動介入が重要であると考える。
我々は過去の研究にて,大腿骨近位部骨折患者における回復期病棟入院時のMini Nutritional Assessment-Short Form(以下:MNA-SF)の低値が,ADL能力の改善を妨げ,退院時の歩行自立度に影響を与えることを報告した。しかしMNA-SFは歩行能力や急性疾患を含む包括的な栄養指標であり,十分な歩行の予後予測因子とはいえなかった。そこで本研究では,回復期病棟における大腿骨近位部骨折患者の退院時歩行自立度に関連する因子を,MNA-SFと血液データや他の栄養指標も含めて検討を行った。
【方法】
対象は,2013年12月~2015年9月までに当院回復期病棟を経て退院した大腿骨頚部骨折及び転子部骨折患者で,データに不備のなかった66名とした。(年齢:81.5±6.7歳,男女比17:49,術式:人工骨頭置換術32名,γ-nail27名,ハンソンピン5名,保存2名)
カルテより対象者の年齢,性別,回復期病棟入院時のBerg Balance Scale(以下:BBS),Mini-Mental State Examination(以下:MMSE),握力,Body Mass Index(以下:BMI),血清アルブミン(以下:Alb),MNA-SF,退院時の歩行自立度を調査した。歩行自立の条件は,病棟生活において45m以上連続で自立歩行が可能であることとし(杖または装具の使用は可),それに該当する者を自立群(31名),監視または介助が必要な者を介助群(35名)に分類した。
統計学的分析は,ロジスティック回帰分析(尤度比による変数減少法)を用いた。目的変数は歩行自立とし,説明変数はカルテ調査内容をT検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定の上決定した。以上の解析にはSPSS statistics20を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
2群間の差の検定ではBBS,MMSE,握力,BMI,Alb,MNA-SFにて有意差を認め(p<0.05),説明変数として投入した。
ロジスティック回帰分析の結果,歩行自立に関連する因子としてBBS,MMSE,BMIが採択された(p<0.05)。オッズ比はBBS1.14,MMSE1.22,BMI1.27を示し,判定的中率は84.8%と良好なモデルであった。
【結論】
今回の結果より,回復期病棟における大腿骨近位部骨折患者の入院時のBMIが低値であることは,バランス能力低下や認知機能低下と並んで,退院時の歩行自立度に関連する因子となることが示唆された。先行研究では,大腿骨近位部骨折患者の歩行自立に影響する栄養指標として,アルブミンが低値であることや入院中の体重減少等が報告されているが,今回は入院時のBMIが採択された。
新井らは,BMIが低値である地域高齢者であっても,運動プログラムの介入によって一定の身体機能向上が得られたと報告している。またBMIが低値である低栄養患者には,栄養と運動介入の併用が望ましいことが過去の研究によって知られている。回復期病棟においてもBMIが低値である患者には,入院時の早期より体重減少等の評価を実施した上で,積極的な栄養及び運動介入が重要であると考える。