第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P36

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-36-4] 膝窩動脈と膝窩静脈平滑筋収縮におけるL-type Ca2+ channelsの役割は相違する

大塚亮1,2, 柴山靖1,3, 梶栗潤子1, 伊藤猛雄1 (1.名古屋市立大学大学院医学研究科薬理学, 2.クロストーク株式会社訪問看護ステーションとんぼ, 3.ユマニテク医療福祉大学校)

キーワード:膝窩動脈・静脈, 血管調節機能, L-type Ca2+ channels

【はじめに,目的】

下肢血管の血流調節機構の詳細は不明である。下肢動脈平滑筋収縮において電位依存性L-typeCa2+ channels(LCCs)が重要な役割を果たしていることは明らかにされているが,下肢静脈収縮におけるLCCの役割は不明である。本研究は,ラットの膝窩動脈および膝窩静脈平滑筋の電位依存性収縮におけるLCCの役割の相違を検討した。


【方法】

8-10週齢のWistar系雄性ラットより膝窩動脈と膝窩静脈を採取後,血管を縦切開し,輪状切片標本を作成した。グアネチジン(5 μM)を含むクレブス溶液に95% O2+5% CO2を通気し,37℃に保温し,標本をセットした。電位依存性平滑筋収縮は,種々の濃度(20 mM,30 mM,50 mM,70 mM)の過剰K+を含むクレブス溶液を投与することにより獲得した。同様の反応を,LCC活性薬Bay K 8644存在下で検討した。


【結果】

ヘマトキシリン-エオジン染色した凍結血管の横断薄切標本で,血管壁の厚さを測定した。厚さは膝窩静脈に比較し膝窩動脈で約4倍程度大きかった。過剰K+溶液は膝窩動脈・静脈をともに濃度依存性に収縮させた。70 mM K+-収縮の絶対張力の大きさは,膝窩静脈に比較し膝窩動脈で約4倍大きかった(収縮の大きさの違いは血管壁の断面積の相違による可能性)。一方,過剰K+収縮の時間依存性変化は,膝窩動脈では持続型であったが,膝窩静脈では一過性であった。Bay K 8644は動脈の70 mM K+-収縮に影響を与えなかったが,膝窩静脈のそれを増大させた。


【考察】

本研究で我々は,膝窩動脈と膝窩静脈平滑筋において,電位依存性収縮に関与するLCCの役割が相違していることを明らかにした:膝窩動脈の70 mM K+-収縮は持続性で,膝窩静脈のそれは一過性であった。Bay K 8644は膝窩動脈の過剰K+-収縮に影響を与えなかったが,膝窩静脈のそれは増大した。このことより,生理的条件下の膝窩静脈平滑筋細胞では,LCCの活性が抑制されている可能性が明らかとなった。下肢動脈と下肢静脈平滑筋細胞の電位依存性収縮調節に関与しているLCCの活性の違いが,生理的条件下の下肢循環調節に重要である可能性がある。


【理学療法学研究としての意義】

リハビリテーションによる身体構造・機能の向上を考えていく上で,下肢血管トーヌスの調節機能を明らかにすることは重要であり,本研究成果はその基礎的な知見を提供するものと考えられる。