第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P40

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-40-5] 高齢者における最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係

石田弘1, 黒住千春1, 森好光2, 末廣忠延1, 渡辺進1 (1.川崎医療福祉大学, 2.宿毛診療所)

キーワード:超音波, 呼気筋, 筋厚

【はじめに,目的】気道内の痰を移動させるためには速い呼気流速が必要で,腹部筋群(腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)が呼気流速に寄与する主要な筋群とされている。しかし,呼気流速への貢献度が高い腹部筋は明確にされていない。先行研究では,大学生を対象とし,最大呼気流速と外腹斜筋の筋厚との間に有意な相関関係が示されている(Ishida, et al., 2014)。本研究の目的は,高齢者における最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係を明らかにすることとした。

【方法】対象は某診療所の通所リハビリテーションを利用し,杖あるいは補助具なしで歩行が自立している女性24名(平均年齢81.8±6.6歳,身長149.0±7.1cm,体重49.9±8.5kg)とした。最大呼気流速はフィリップス・レスピロニクス社製のアセスピークフローメータで測定した。測定は端座位で,最大吸気位から最大限の力で急速に息を呼出させた。3回の計測を行って最大値を代表値とし(L/min),月岡ら(1996)の予測式から算出した値で正規化した(%)。腹部筋群の筋厚はメディケアー社製の白黒ロコモ計測・観察装置(JA6)の12MHzのリニア型プローブを使用し,Bモードで計測した。測定は背臥位で,腹直筋は臍の右側4cm,側腹部(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)の筋厚は右肋骨弓下端と腸骨稜上端の中間で中腋窩線の2.5cm前方で画像化を行った。撮影は各2回行い,画像処理ソフトImageJ 1.45を用いて計測した各筋の筋厚(mm)の平均値を体重で除した値(mm/kg)を解析に用いた。統計にはIBM SPSS Statistics 22.0を使い,予測値で正規化した最大呼気流速と体重で除した各筋の筋厚の相関をみるためにPearsonの相関係数を用いた(p<0.05)。

【結果】最大呼気流速と予測値で正規化した値はそれぞれ279.6±46.3L/minと97.7±17.9%であった。以下,各筋の筋厚,体重で除した筋厚,相関係数,p値を示す。腹直筋は7.3±1.4mm,0.15±0.03mm/kg,r=0.434,p=0.034,外腹斜筋は4.5±1.2mm,0.09±0.03mm/kg,r=0.323,p=0.124,内腹斜筋は7.2±1.7mm,0.15±0.05mm/kg,r=0.539,p=0.007,腹横筋は2.9±0.9mm,0.06±0.02mm/kg,r=0.470,p=0.021であった。

【結論】高齢者を対象とした本研究では,最大呼気流速と腹直筋,内腹斜筋,腹横筋の筋厚との間に有意な相関があった。一方,最大呼気流速と外腹斜筋の筋厚との間に有意な相関はなく,大学生を対象とした先行研究で示されている関係とは異なっていた。