[P-MT-03-1] 仙腸関節由来の慢性腰痛症に対し,上行性運動連鎖に着目した介入が有効であった一症例
Keywords:仙腸関節, 骨盤アライメント, 上行性運動連鎖
【はじめに,目的】
非特異的腰痛に分類される慢性腰痛は,その原因や危険因子は不明瞭であり有効な対策法が確立されていないのが現状である。今回,仙腸関節痛由来の慢性腰痛により就業が困難であった症例を経験し,疼痛の発生機序を上行性運動連鎖に着目し介入した結果,無事に仕事復帰を果たすことができた為,ここに報告する。
【方法】
症例は23歳女性,仕事(営業)で荷物運搬しようとした際に腰痛出現し就業困難となった。他院にて数日間加療し復職するも,同作業で腰痛再発し休職を余儀なくされた。その後2ヶ月間安静と加療に徹するも著効なく,当院紹介受診し仕事復帰を目的に理学療法開始となった。診断は仙腸関節痛,主訴は歩行後の腰痛であった。疼痛は左上後腸骨棘(以下,PSIS)付近にNumerical Rating Scale(以下,NRS)9の圧痛があり,左仙腸関節ストレステストにて疼痛は再現できた。骨盤アライメント(以下,PA)は触診より右腸骨前傾・前方回旋位,左腸骨後傾・後方回旋位であった。左股関節について,筋力は全体的に徒手筋力検査にて2~3と低下,可動域(以下,ROM)は内旋・SLRに制限を認めた。既往歴に右膝関節痛(Q角20°,下腿過外旋位),右足関節内反捻挫(背屈ROM5°,荷重時に内側縦アーチ下降)があり,右片脚立位時はknee-in toe-out(以下,KITO)を認めた。連続歩行時間は約20分が限界で,歩行後に腰痛は増悪していた。
【結果】
理学療法開始初期は左PA修正を目的に,左股関節周囲筋群の柔軟性改善,動的な骨盤・左股関節操作の獲得を目指しアプローチを実施した。8週経過し,連続歩行時間も60分以上可能となるも,疼痛はNRS4前後で増減を繰り返しPAは維持できていなかった。そこで右KITOにも着目し,knee-inの制動,内側縦アーチが保持できるようアプローチを追加した。その結果16週目には,右片脚立位時のKITOは改善,左PSISの疼痛はNRS2まで軽減し,左PAは維持できていた。その後1週間経過しても歩行後の腰痛増悪は見られなかった為,無事に仕事復帰を遂げた。
【結論】
仙腸関節の疼痛は,左右腸骨のアライメント不良により関節包や靭帯にストレスが加わることによって発生すると言われている。本症例の左腸骨は後傾・後方回旋位であり,相対的に仙骨は起き上がりが生じる。これにより関節面間の圧迫と剪断力が上昇するため,左PSISの疼痛は関節に加わる圧縮・剪断力を軽減することで改善すると考えられる。また左PAが維持できなかった要因として,右KITOによる上行性運動連鎖により右腸骨が前傾・前方回旋位を呈し,それに伴う骨盤の捻れ運動によって相対的な左PA異常が出現してしまうためと考えられた。非特異的腰痛を治療していく上では,患部のみならず状態を多面的に捉えていく必要があり,その疼痛の発生機序を解明しアプローチしていく必要がある。
非特異的腰痛に分類される慢性腰痛は,その原因や危険因子は不明瞭であり有効な対策法が確立されていないのが現状である。今回,仙腸関節痛由来の慢性腰痛により就業が困難であった症例を経験し,疼痛の発生機序を上行性運動連鎖に着目し介入した結果,無事に仕事復帰を果たすことができた為,ここに報告する。
【方法】
症例は23歳女性,仕事(営業)で荷物運搬しようとした際に腰痛出現し就業困難となった。他院にて数日間加療し復職するも,同作業で腰痛再発し休職を余儀なくされた。その後2ヶ月間安静と加療に徹するも著効なく,当院紹介受診し仕事復帰を目的に理学療法開始となった。診断は仙腸関節痛,主訴は歩行後の腰痛であった。疼痛は左上後腸骨棘(以下,PSIS)付近にNumerical Rating Scale(以下,NRS)9の圧痛があり,左仙腸関節ストレステストにて疼痛は再現できた。骨盤アライメント(以下,PA)は触診より右腸骨前傾・前方回旋位,左腸骨後傾・後方回旋位であった。左股関節について,筋力は全体的に徒手筋力検査にて2~3と低下,可動域(以下,ROM)は内旋・SLRに制限を認めた。既往歴に右膝関節痛(Q角20°,下腿過外旋位),右足関節内反捻挫(背屈ROM5°,荷重時に内側縦アーチ下降)があり,右片脚立位時はknee-in toe-out(以下,KITO)を認めた。連続歩行時間は約20分が限界で,歩行後に腰痛は増悪していた。
【結果】
理学療法開始初期は左PA修正を目的に,左股関節周囲筋群の柔軟性改善,動的な骨盤・左股関節操作の獲得を目指しアプローチを実施した。8週経過し,連続歩行時間も60分以上可能となるも,疼痛はNRS4前後で増減を繰り返しPAは維持できていなかった。そこで右KITOにも着目し,knee-inの制動,内側縦アーチが保持できるようアプローチを追加した。その結果16週目には,右片脚立位時のKITOは改善,左PSISの疼痛はNRS2まで軽減し,左PAは維持できていた。その後1週間経過しても歩行後の腰痛増悪は見られなかった為,無事に仕事復帰を遂げた。
【結論】
仙腸関節の疼痛は,左右腸骨のアライメント不良により関節包や靭帯にストレスが加わることによって発生すると言われている。本症例の左腸骨は後傾・後方回旋位であり,相対的に仙骨は起き上がりが生じる。これにより関節面間の圧迫と剪断力が上昇するため,左PSISの疼痛は関節に加わる圧縮・剪断力を軽減することで改善すると考えられる。また左PAが維持できなかった要因として,右KITOによる上行性運動連鎖により右腸骨が前傾・前方回旋位を呈し,それに伴う骨盤の捻れ運動によって相対的な左PA異常が出現してしまうためと考えられた。非特異的腰痛を治療していく上では,患部のみならず状態を多面的に捉えていく必要があり,その疼痛の発生機序を解明しアプローチしていく必要がある。