[P-MT-03-2] 脊柱後彎症患者における座位体幹伸展運動時の胸椎部傍脊柱筋の筋活動
―脊柱変形のない高齢者との筋電図学的比較―
Keywords:脊柱後彎, 体幹筋, 筋力トレーニング
【はじめに,目的】
脊柱後彎症患者は胸椎後彎角の増加による矢状面上のアライメント異常を来たすことで,体幹伸展可動域制限や体幹伸展筋力低下を生じやすく,加齢と共に増悪すると報告されている。この病態に対して,傍脊柱筋トレーニングは腰部と胸部を分けて強化する必要があるとして,小川らは,健常者を対象にSinakiらが考案した端座位における座位体幹伸展運動を筋電図学的に検討し,上部の胸椎部傍脊柱筋強化に有効であると報告している。しかし,脊柱後彎症患者に対する有効性は明らかではなく,臨床で活用するための検討が必要である。そこで本研究は,脊柱後彎症患者と脊柱変形がない健常高齢者を対象に,座位体幹伸展運動時の胸椎部傍脊柱筋の筋活動を筋電図学的に比較することを目的とした。
【方法】
対象は,会津医療センター整形外科・脊椎外科で脊柱後彎症(後彎群)と診断された患者14名(平均年齢76.2歳),脊柱変形がない高齢者(対照群)9名(平均年齢72.2歳)とした。測定肢位は,膝関節屈曲90度かつ骨盤後傾位の端坐位とした。運動課題は,肩関節外転90度,肘関節屈曲90度,前腕回内位で肩甲骨内転を伴う体幹伸展運動の最大等尺性収縮とした。
筋電図学的解析は表面筋電計を用いて,導出筋をT7およびT10高位の傍脊柱筋とした。また,体幹伸展のMMTを基準として%iEMGを算出した。統計的解析は対応のあるt検定を用い,後彎群と対照群の胸椎部傍脊柱筋の筋活動を比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
座位体幹伸展運動におけるT7高位の%iEMGは後彎群が59.7±14.8%,対照群が70.3±15.2%で有意差を認めなかった。T10高位の%iEMGは後彎群が62.2±11.8%,対照群が44.8±14.1%で,後彎群が対照群に比べて有意に高かった(p<0.05)。
【結論】
健常若年者における先行研究では,座位体幹伸展運動が上部の胸椎部傍脊柱筋の筋力増強に十分な筋活動を発揮できる運動であると報告する一方,下部の胸椎部傍脊柱筋では上部に比べて筋活動が小さいことも示されている。しかし,本研究の後彎群における下部胸椎部の傍脊柱筋活動は60%に達していることから,後彎群は脊柱変形の影響から健常者と異なった筋活動の特性を示したと考える。
後弯を含めた脊柱変形や胸椎後弯角が変化することにより,脊柱起立筋の筋収縮に必要な有効長に変化を及ぼしたことが,健常者との筋活動に違いを認めた要因である可能性が考えられる。 しかし,脊柱起立筋の有効長と筋活動の関係は現在明らかにされていないため,今後のより詳細な検討が課題である。
今後の詳細な検討が必要であるが,脊柱後彎症患者に対する座位体幹伸展運動は,骨格筋の筋力増強に必要な40~60%MVCと同等の筋活動を示しており,上下部の胸部傍脊柱筋の筋力トレーニングとして期待できる運動であることが示された。
脊柱後彎症患者は胸椎後彎角の増加による矢状面上のアライメント異常を来たすことで,体幹伸展可動域制限や体幹伸展筋力低下を生じやすく,加齢と共に増悪すると報告されている。この病態に対して,傍脊柱筋トレーニングは腰部と胸部を分けて強化する必要があるとして,小川らは,健常者を対象にSinakiらが考案した端座位における座位体幹伸展運動を筋電図学的に検討し,上部の胸椎部傍脊柱筋強化に有効であると報告している。しかし,脊柱後彎症患者に対する有効性は明らかではなく,臨床で活用するための検討が必要である。そこで本研究は,脊柱後彎症患者と脊柱変形がない健常高齢者を対象に,座位体幹伸展運動時の胸椎部傍脊柱筋の筋活動を筋電図学的に比較することを目的とした。
【方法】
対象は,会津医療センター整形外科・脊椎外科で脊柱後彎症(後彎群)と診断された患者14名(平均年齢76.2歳),脊柱変形がない高齢者(対照群)9名(平均年齢72.2歳)とした。測定肢位は,膝関節屈曲90度かつ骨盤後傾位の端坐位とした。運動課題は,肩関節外転90度,肘関節屈曲90度,前腕回内位で肩甲骨内転を伴う体幹伸展運動の最大等尺性収縮とした。
筋電図学的解析は表面筋電計を用いて,導出筋をT7およびT10高位の傍脊柱筋とした。また,体幹伸展のMMTを基準として%iEMGを算出した。統計的解析は対応のあるt検定を用い,後彎群と対照群の胸椎部傍脊柱筋の筋活動を比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
座位体幹伸展運動におけるT7高位の%iEMGは後彎群が59.7±14.8%,対照群が70.3±15.2%で有意差を認めなかった。T10高位の%iEMGは後彎群が62.2±11.8%,対照群が44.8±14.1%で,後彎群が対照群に比べて有意に高かった(p<0.05)。
【結論】
健常若年者における先行研究では,座位体幹伸展運動が上部の胸椎部傍脊柱筋の筋力増強に十分な筋活動を発揮できる運動であると報告する一方,下部の胸椎部傍脊柱筋では上部に比べて筋活動が小さいことも示されている。しかし,本研究の後彎群における下部胸椎部の傍脊柱筋活動は60%に達していることから,後彎群は脊柱変形の影響から健常者と異なった筋活動の特性を示したと考える。
後弯を含めた脊柱変形や胸椎後弯角が変化することにより,脊柱起立筋の筋収縮に必要な